29か月連続で低水温 なぜ、ラニーニャ現象が長引くのか
気象庁は11日、定例のエルニーニョ監視速報(361号)を発表し、現在のラニーニャ現象はこの冬にかけて、90%の確率で続くとの見通しを示しました。
ラニーニャ 台風に影響も
ラニーニャ現象は太平洋熱帯域の海面水温が東部(ペルー沖)で基準値より低く、西部(インドネシア近海)で基準値より高くなる現象です。
海面水温の狂いが大気に伝わり、世界中で極端な天候が現れることから、その名が知られています。
日本でもこの夏~秋の暑さや日本近海で台風の発生が相次いだことなどに影響しました。
3冬連続は初
2020年夏に発生したラニーニャ現象は2021年夏にいったん途切れたものの、再び発達し、今に至っています。
途切れたといっても、エルニーニョ監視海域(ペルー沖)の海面水温は2020年5月以降、29か月連続で基準値を下回っています。これは記録が残る1949年以降では最も長いものです。
この冬もラニーニャ現象となれば、3年連続となり、これも統計史上初めてのことです。
半年前の4月の予想では春で終息する見通しでしたが、今なお強い状態が続いています。
なぜ、予想に反してラニーニャ現象が長引いているのでしょう。この答えは風にありました。
強い貿易風
ペルー沖の水温が低く保たれるためには貿易風(赤道付近で吹く東寄りの風)が強いことが必要です。先月(9月)の南方振動指数(SOI:貿易風の強さを表す)はプラス1.7で、9月としては過去4番目に強くなりました。
強い日差しで温められた海水が強い東風に押されてインドネシア近海に集まります。一方で、ペルー沖では深海から冷たい海水が湧き上がるため、太平洋熱帯域の東部で冷たく、西部で暖かい状況が生まれるのです。
ラニーニャの秋は短い
秋は階段を下るように気温が下がっていきます。来週初めの雨をきっかけにして、秋がまた一歩、深まるでしょう。東京、大阪、広島などでも、朝は10度くらいまで冷え込む予想です。
いつまでも暑いと思っていたら、急に寒くなる。ラニーニャ現象の影響で、今後は寒気の影響を受けやすくなるとみられ、快適な秋の陽気は短いかもしれません。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.361)、2022年10月11日
米海洋大気庁(NOAA Climate.gov): Data Snapshots SST - ENSO Region, Monthly Difference from Average
米海洋大気庁(NOAA Climate.gov):October 2022 La Niña update: snack size、EMILY BECKER、OCTOBER 13 2022