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この冬の寒さ予想 世界はどう見てる?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
2021年2月中旬、米中部を襲った寒波では大規模な停電や断水が発生した(写真:ロイター/アフロ)

台風が去って、寒気が流れ込む 

 10月になった途端に汗ばむ陽気が一転、冬を思わせる天気に。7日の東京の日最高気温は13.3度と10月上旬としては1934年10月7日(12.1度)以来、88年ぶりの寒さとなりました。

 急に寒くなった原因としては、少し前から北極周辺を流れるジェット気流の蛇行が大きくなっていて、ユーラシア大陸中部にあった寒気が日本付近に流れ込んだこと。さらに、台風の発生が収まったことで、これまで強かったチベット高気圧が後退した影響があると思います。

上空1,500メートル付近の気温の様子。寒色は平年より気温が低いことを示す(ウェザーマップ作画)
上空1,500メートル付近の気温の様子。寒色は平年より気温が低いことを示す(ウェザーマップ作画)

ラニーニャ継続80%

 この冬の日本はラニーニャ現象の影響で、全国的に気温が低くなる予想ですが、世界はどう見ているのでしょう?

 米海洋大気庁(NOAA)はラニーニャ現象が年明け(1月)まで続く可能性が80%として、影響を注視しています。

 ラニーニャ現象時はジェット気流が北太平洋の北側を流れるため、北西部は気温が低く、南部は気温が高くなる傾向があります。

ラニーニャ現象が北米の冬の天候に与える影響(NOAA Climate.gov)
ラニーニャ現象が北米の冬の天候に与える影響(NOAA Climate.gov)

成層圏の突然昇温で寒波も

 ウクライナ危機に端を発したエネルギー問題に揺れる欧州はどうでしょう。

 英気象庁(Met Office)は年末にかけて、極端な寒さというよりも、比較的穏やかな天候が見込まれるとしています。    

 しかし、成層圏の突然昇温により極渦が分裂した場合は強烈な寒波に襲われる可能性がある。また、ラニーニャ現象など世界的な気象パターンにも左右されるため、厳しい天候がいつ発生するか、特定できないが気をつける必要があるとしています。

ヨーロッパ中期予報センターによるこの冬の気温予想図(ヨーロッパ中期予報センターホームページより)
ヨーロッパ中期予報センターによるこの冬の気温予想図(ヨーロッパ中期予報センターホームページより)

 長期的な見通しは通常の天気予報とは異なり、気象学の最先端の分野です。天候が交通、エネルギー、健康など社会に与える影響が年々、強まっていることから、欧米の気象機関が特に力を入れています。日本でも今年2月から、新しい大気海洋結合モデルの運用が始まりました。先のことは分からないから分かるへ、季節予報はおもしろい分野だと思います。

【参考資料】

米海洋大気庁(NOAA):September 2022 La Niña update: it’s Q & A time、SEPTEMBER 8, 2022

英気象庁(Met Office):What can we say about the weather this Winter? 6 October, 2022

ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF):Forecast charts and data

気象庁:新しい大気海洋結合モデルを利用した季節予報の精度向上、2022年2月9日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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