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東京は師走の雨 なぜ急激に寒く? 来週は暖かさ戻る

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
10月22日午前9時の地上天気図(ウェザーマップ作画)

 22日(金)正午の気温は東京で10.7度、12月中旬の寒さだ。今月(10月)初めは夏を思わせる暑さが続いたというのに、なぜ急激に寒くなったのか。その答えは偏西風の流れ方にある。来週は暖かさが戻るというが。

東京は雪が降っていたかもしれない

 タイトル表紙はきょう(22日)午前9時の地上天気図です。低気圧が紀伊半島沖を進んでいて、雨雲が関東地方にかかっています。そして、大陸には高気圧があり、冷たい空気が日本列島に流れ込んでいる様子がわかります。

 この天気図、どこかで見覚えがあります。冬に時折見られる南岸低気圧です。この天気図が現れると、関東地方は一段と気温が下がり、冷たい雨が降ります。もしも、きょうが2月だったら、東京は雪が降っていたかもしれません。

夏と冬が同じ月に

 今月初めは10月とは思えない暑さが続き、東京都心でも30度以上の真夏日になりました。それから二週間もしないうちに気温が下がり、きょうは冬を感じさせる雨で、正午の気温は10.7度です。これは12月中旬の気温に相当します。

 春と秋は気温の上がり下がりが大きくなるとは言え、今月は予想以上に寒暖差が大きい印象です。

なぜ急に寒くなったのでしょう?

 答えは上空の天気図にあります。こちらは上空5キロ付近を表した天気図です。ここは対流圏の真ん中に位置し、大気の状態を知るのに最適な場所です。

上空5キロ付近(500hPa)の高度場を示した5日間平均図。上図は今月初め、下図は今週(筆者作成)
上空5キロ付近(500hPa)の高度場を示した5日間平均図。上図は今月初め、下図は今週(筆者作成)

 上図は今月(10月)初め、下図は今週の天気図です。図の中央に日本列島があり、緑破線で囲みました。ひとめで色合いの違いがわかります。

 今月初め、日本列島全体が非常に暖かい空気に覆われていました。夏の高気圧が強かった要因の一つに相次いで発生した台風の影響があります。

 その後、夏の高気圧は後退し、偏西風が大きく南下しました。5,700メートルの等高度線が北海道付近から九州付近まで移動しています。偏西風の南下に伴い、北極から冷たい空気が日本列島に流れ込みました。

 このように中緯度に位置する日本列島は偏西風の流れ方ひとつで、気温が大きく変化するため、これから冬に向かって、ますます偏西風の流れに目が離せなくなります。

来週は暖かさ戻る?

 このまま寒くなってしまうのでしょうか。この先の天気図をみてみると、再び、日本列島は暖かい空気に覆われるようです。

来週(10/25~29)の5日間平均図(予想)、筆者作成
来週(10/25~29)の5日間平均図(予想)、筆者作成

 元鹿児島地方気象台長で、NHK気象キャスターの故倉嶋厚さんは著書のなかで「北極寒気団があまりに早く南下すると、次に寒気が溜まるまで時間がかかるため、晩秋、初冬に、意外に暖かい小春日和が続くことがある」と述べています。

 冬の出足が早いからといって、このまま寒くなるとは限らない。倉嶋さんの言葉に教えられました。

【参考資料】

倉嶋厚、1999:季節の終末、ちょっと使える「お天気知識」、小学館文庫

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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