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負の北極振動 来週は厳しい寒さと大雪に

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
日本時間の午前9時、大陸はまだ夜が明けていない(ウェザーマップ作成)

 負の北極振動となり、来週14日~17日にかけて、日本列島はこの冬一番の強い寒気に覆われる。西日本の平地でも雪が舞い、日本海の水温が高いため、山沿いでは大雪となるおそれがある。強い寒気はクリスマスまで続く可能性がある。

イルクーツクでマイナス24度

 冬至まであと十日。表紙の画像は11日(金)午前9時(日本時間)、気象衛星ひまわり8号が捉えた北半球です。大陸はまだ夜が明けておらず、バイカル湖の南西にある工業都市イルクーツクの気温はマイナス24度です。凍てつく大地の凄みをたたえた静寂さが伝わってきます。

負の北極振動

 今週は全国的に気温の高い日が目立ち、11日(金)も高知市で19.3度、東京都心で14.4度まで上がりました。この暖かさもあと少し、来週は年の瀬を実感する寒さとなりそうです。

 というのも、北極から強い寒気が日本列島に南下するからです。こちらは北極を中心にした北半球天気図です。気圧が500hPaとなる高度を示した図で、暖色は平年と比べ高度が高いことを、寒色は平年と比べ高度が低いことを表しています。そして、図の中央下に日本、図の右上に北米大陸、図の左上に欧州が位置しています。

500hPaの高度および平年偏差の予想図:2020年12月14日~18日の5日間平均図(ウェザーマップ作成)
500hPaの高度および平年偏差の予想図:2020年12月14日~18日の5日間平均図(ウェザーマップ作成)

 注目したのは図の中央=北極です。暖色で示され、平年と比べ高度が高いことがわかります。一方、日本付近はどうでしょう。寒色=高度が低く、オホーツク海には寒冷渦があります。これは負の北極振動と呼ばれる形で、北極の寒気が日本列島に流れ込むことを表しています。

寒さの底は16日(水)

 いつから寒くなるのでしょう。13日(日)に、低気圧が日本海を通過したあと、14日(月)から冬型の気圧配置が強まる予想です。初めのうちは雨の所でも、次第に雪が混じり始めるでしょう。高松地方気象台は14日から16日にかけて、四国の山地で積雪となる見通しを示し、雪への備えを呼びかけています。

12月16日(水)の全国の天気予報(気象庁:ウェザーマップ作成)
12月16日(水)の全国の天気予報(気象庁:ウェザーマップ作成)

 寒さの底は16日(水)頃とみられ、西日本を含む、日本海側の広い範囲で本格的な雪が降るでしょう。晴れる太平洋側でも気温が低く、東京の朝の気温は2度の予想です。乾燥も一段と進みます。

暖かい日本海で大雪も

 この時期に気をつけなければいけないのが日本海の海面水温(以下、水温と表記)です。先月は全国的に気温が高くなったため、日本海の水温は平年と比べ2度から3度高くなっています。

日本海の海面水温の平年差を表した図、2020年12月10日(気象庁ホームページより)
日本海の海面水温の平年差を表した図、2020年12月10日(気象庁ホームページより)

 水温が高いと日本海を吹き渡る風に大量の水蒸気が補給されて、雪雲が発達します。気温が下がりやすい山沿いほど雪の量が多くなりやすく、市街地でも積雪となる所がありそうです。

 この週末は冬用タイヤへの取り換え、除雪道具の点検、冬物コートや手袋・マフラー、そしてブーツなどの防寒靴の準備、さらに寒さに弱い鉢植え植物を室内にしまうなど、冬支度を済ませたい。

 この寒さは18日(金)頃にいったん緩みそうですが、その後再び、強い寒気が流れ込み、クリスマスにかけて厳しい寒さが続く可能性があります。

【参考資料】

高松地方気象台:雪に関する四国地方気象情報(第1号)、2020年12月11日

気象庁:2週間気温予報 解説資料、2020年12月11日

中村尚、2002:新用語解説(49)北極振動、天気、49、687-689. 

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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