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梅雨入りとインド洋ダイポールモード現象

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
梅雨前線が北上し、雨雲が九州に近づく(5月30日9時の地上天気図)ウェザーマップ

 30日(土)、九州南部が梅雨入りし、今年も大雨シーズンが近づく。東京の梅雨入りは来月上旬か。インド洋ダイポールモード現象が発生する兆しがあり、異常気象への不安が増す。

東京の梅雨入りはいつ?

 きょう(30日)午前、鹿児島地方気象台は九州南部の梅雨入りを発表しました。平年と比べ一日早い梅雨入りです。判断の決め手は上空を流れる偏西風と太平洋高気圧です。偏西風が日本の北を流れ(北偏する)、日本の南海上で太平洋高気圧が強まっているため、梅雨前線は今後、本州付近に停滞しやすい見通しです。

 こちらは向こう一週間の週間天気予報です。梅雨入りしても毎日、雨が降るわけではなく、鹿児島も梅雨入りの三日後には晴れ間がありそうです。

5月30日11時発表の週間天気予報(気象庁予想)
5月30日11時発表の週間天気予報(気象庁予想)

 一方、東京はどうでしょう。6月の始まりは雨で、このままぐずついた天気が続くのでしょうか。参考として、梅雨入りが発表になった日の週間天気予報を表にしてみました。

梅雨入り発表当日の東京地方の週間天気予報(2013年~2019年)
梅雨入り発表当日の東京地方の週間天気予報(2013年~2019年)

 発表当日と翌日が雨であることは容易にわかりますが、その後は晴れの日もちらほら見受けられます。梅雨入りの判断に毎日、くもりや雨になる必要はなく、どちらかというと、梅雨入りの平年日(6月8日)前後で、数日間、ぐずついた天気が予想されるときに発表されることが多いように感じています。

雨が多い6月

 今年は九州北部豪雨から3年です。その年の秋に福岡県久留米市付近を流れる筑後川を訪れました。川幅がとても広く、雄大な流れに九州の豊かさを感じた一方で、増水し、濁流となったときを想像すると怖くなりました。

 向こう一か月間の降水量予想によると、西日本では降水量が多くなる可能性が高くなっています。

向こう一か月間の降水量予想(5月30日~6月29日)
向こう一か月間の降水量予想(5月30日~6月29日)

インド洋ダイポールモード現象が発生?

 さらに、気になる予測があります。豪気象局は26日、早ければこの夏にも負のインド洋ダイポールモード現象が発生する可能性があると発表しました。

 インド洋ダイポールモード現象とはインド洋の海面水温が西部で平年と比べ高く、東部で低くなる現象のことで、2019年秋のオーストラリア森林火災や2020年冬の記録的な暖冬を引き起こしたことで、一躍その名を知られるようになりました。

 実は、インド洋ダイポールモード現象にはポジティブ(正)とネガティブ(負)の二つがあり、前回はポジティブ(正)で、この夏にも発生する可能性があるのはネガティブ(負)です。この辺はエルニーニョ/ラニーニャ現象に似ています。

ネガティブ(負)のインド洋ダイポールモード現象。海面水温が西部で低く、東部で高い。(模式図、著者作成)
ネガティブ(負)のインド洋ダイポールモード現象。海面水温が西部で低く、東部で高い。(模式図、著者作成)

負のインド洋ダイポールモード現象が発生した場合、日本の天候にどのような影響があるのでしょうか?

 気象庁ははっきりしたことは言えないとしています。そこで、6月と7月の雨に限って、調べてみました。

【負のインド洋ダイポールモード現象/エルニーニョ・ラニーニャ現象が発生していないとき】西・東日本における6月と7月の降水量平年比(著者作成)
【負のインド洋ダイポールモード現象/エルニーニョ・ラニーニャ現象が発生していないとき】西・東日本における6月と7月の降水量平年比(著者作成)

 やはり、はっきりとした傾向は見出せません。強いて言えば、6月に西日本で雨が多い(2016年や1996年)、7月は西・東日本ともに雨が少ないことでしょうか。

 豪気象局はインド洋ダイポールモード現象の監視・予測情報を定期的に発表している、世界唯一の気象機関で、春の予測は不確実性が高いとしています。ただ、豪気象局のほかにも、負のインド洋ダイポールモード現象の発生を予測している気象機関が多いです。

【参考資料】

気象庁:1か月予報(5月30日~6月29日)、2020年5月28日発表

気象庁:インド洋ダイポールモード現象の発生期間と指数

気象庁:インド洋ダイポールモード現象発生時の日本の天候の統計的な特徴

豪気象局:ENSO Wrap-Up Current state of the Pacific and Indian oceans、26 May 2020

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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