【最新研究】温暖化で台風は減る?

温暖化は熱帯低気圧の発生に影響するという(2017年7月、同時に4つの台風)

 1980年以降、世界の熱帯低気圧は海域によって、発生に差があることが最新の研究で明らかになった。台風が発生する北西太平洋は減少傾向であるという。さらに、今世紀末にかけて、世界的に熱帯低気圧の発生は減る可能性がある。

新型コロナと台風

 今月20日夜、超大型サイクロン・アンファン(Amphan)がインド東部に上陸しました。インドでは100万人以上が避難したと言われ、世界気象機関(WMO)は新型コロナウイルスの感染拡大が続くインドやバングラデシュはこれまでにないリスクを抱えていると強い危機感を示しました。今後、世界各地で発生する異常気象への対応は難しく、日本も他人事ではありません。

 昨年(2019年)は史上初の元日(1月1日)に台風1号が発生しました。その後しばらくは台風の発生がありませんでしたが、7月以降、台風ラッシュが続き、上陸数も平年を大幅に上回る5個でした。

 最近、台風の被害が深刻化しているように感じています。こちらは1951年から2019年までの台風の発生数と上陸数をグラフにしたものです。

【台風】発生数と上陸数の経年変化(1951年~2019年、著者作成)
【台風】発生数と上陸数の経年変化(1951年~2019年、著者作成)

 

 台風の発生数をみると、多い、少ないを長期的な幅で繰り返しているようにみえます。また、上陸数も2004年の10個があるものの、目立った増減は見られません。

熱帯低気圧の発生に明瞭な差

 近年、温暖化の影響を強く示唆する異常気象が世界各地で発生しています。これまでにも温暖化が熱帯低気圧の発生や発達に与える影響について議論が行われてきました。しかし、世界各地で発生する熱帯低気圧を網羅した長期的な観測データが乏しく、議論はあまり進んでいないようです。

 このような中で目についた記事がありました。米海洋大気庁の研究チームが発表した、気候変動が熱帯低気圧に与えた影響についての研究論文です。それによると、世界で一年間に発生する熱帯低気圧は平均で86個と1980年以降、目立った増減はありません。

 しかし、海域でみると、北大西洋や太平洋中部では熱帯低気圧の発生が多い傾向であり、一方、北西太平洋や南インド洋では減る傾向であることが明らかになりました。日本に関係の深い北西太平洋で、熱帯低気圧の発生が少なくなっている結果に驚きです。

熱帯低気圧の発生が増加した海域(暖色)と減少した海域(寒色):研究論文を基に著者が作成した
熱帯低気圧の発生が増加した海域(暖色)と減少した海域(寒色):研究論文を基に著者が作成した

 なぜ、熱帯低気圧の活動が海域によって違うのでしょう?

論文によると、大気や海洋が自然と持っている変動では原因を説明できず、温暖化、人為的なエアロゾル(空気中に漂う微粒子)、火山噴火が影響しているとしています。

台風が減る?

 さらに、最新の予測によると、今世紀末までに世界の熱帯低気圧の発生数は約2割減少し、年平均86個から69個程度になる見通しです。温暖化の進行による海面水温の上昇で、発生数は減るものの、ひとつひとつの熱帯低気圧が大型化しやすいとみられています。

【未来予測】今世紀末、台風の発生は増える?減る?(著者作成)
【未来予測】今世紀末、台風の発生は増える?減る?(著者作成)

 これはこれまでにも言われていたことですが、今回はそれを裏付けたものです。熱帯低気圧が減る一方で、発達しやすい。これがどのように私たちの将来に関わってくるのか、漠然としていて実感が湧きません。今は昨年の台風19号のような被害が起こらないことを願うばかりです。

【参考資料】

世界気象機関(WMO):Tropical cyclone Amphan hits India and Bangladesh、20 May 2020

米海洋大気庁(NOAA):Study: Climate change has been influencing where tropical cyclones rage、May 4, 2020

米国科学アカデミー紀要(PNAS):Hiroyuki Murakami、Thomas L. Delworth、William F. Cooke、Ming Zhao、Baoqiang Xiang、Pang-Chi Hsu、Detected climatic change in global distribution of tropical cyclones、May 4, 2020