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沖縄梅雨入りへ 前半は空梅雨、後半は豪雨も

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
小笠原諸島には前線が停滞し、断続的に強い雨が降っている(ウェザーマップ作画)

 今年の梅雨は梅雨前線の北上が遅れ、前半(6月)は空梅雨ぎみ。一方、後半(7月)になると前線が活発になり、豪雨が頻発するおそれがある。

沖縄は11日(月)に梅雨入りか

 5月と言えば、すがすがしい晴れをイメージしますが、東京から約1,000キロ南に位置する小笠原諸島は一年で最も雨が多い月です。

 昨夜(7日)から今朝(8日)にかけて、まとまった雨が降り、小笠原村には一時、大雨警報が発表されました。警報・注意報は当たり前のように思っていますが、実は小笠原村に警報・注意報が発表されるようになったのはそう古い話ではなく、今から12年前の2008年3月からです。それまでは週間予報もありませんでした。大雨のときはどうしていたのかというと、天気予報と一緒に伝えていたそうです。

 小笠原諸島は北海道と同様に、梅雨入り・明け発表の対象地域ではありません。しかし、太平洋高気圧(夏の高気圧)の北西側に位置し、沖縄に先駆けて雨が多くなることから、梅雨入りを考えるうえで意味があると考えています。最新の週間予報によれば、沖縄は来週月曜日(11日)にも梅雨入りする見通しです。

今年の梅雨の傾向は?

 今年は九州北部豪雨から3年、西日本豪雨から2年です。今年の梅雨は前半(6月)が空梅雨、後半(7月)に雨が多い予想です。

6月の降水量見通し(3か月予報、気象庁ホームページより)
6月の降水量見通し(3か月予報、気象庁ホームページより)

 

7月の降水量見通し(3か月予報、気象庁ホームページより)
7月の降水量見通し(3か月予報、気象庁ホームページより)

 それは太平洋高気圧の張り出しに原因があり、沖縄付近に強く張り出すものの、本州に向かっては弱いからです。梅雨前線は太平洋高気圧の張り出しと連動しているので、沖縄の梅雨入りが例年通りでも、本州の梅雨入りは遅れる可能性があります。

インド洋と梅雨

 そして、もうひとつ今年の梅雨を考えるうえで、鍵になるのがインド洋です。インド洋の海面水温は7月頃にかけて、基準値と比べ高い状態が続き、対流活動が活発(雲の発生が多い)となる見通しです。

 梅雨は大きくみると、西はパキスタン、東はニューギニア、北は中国、南はオーストラリアの一部を含む広大な地域の季節変化です。日本の四季が豊かなのはこのアジア・モンスーン(季節風)があるからとも言われています。

アジア・モンスーンの模式図(著者作成)
アジア・モンスーンの模式図(著者作成)

 太陽が北半球を強く照らすようになると、大陸では暖められた空気が上昇し、そこに向かってインド洋から湿潤な風が吹き込みます。梅雨が形成されるために、もうひとつ重要な役割を担っているのがヒマラヤ山脈です。インド洋からの風はこの世界の屋根に北上を遮られ、はるか日本までやってくるのです。

【参考資料】

気象庁:3か月予報(5月~7月)、2020年4月24日発表

小倉義光、2015:3.4アジア・モンスーンがあること、日本の天気-その多様性とメカニズム-東京大学出版会

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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