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なぜ、西日本は梅雨入りしないのか?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
夏の高気圧を挟むように、北に梅雨前線、南に熱帯低気圧がある(著者作成)

 記録的に遅れている西日本の梅雨入り。原因は上空を流れる強い西風が日本の南を流れ、梅雨前線が西日本に停滞しないため。来週の水曜日(26日)頃から雨の日が多くなりそうだ。

梅雨は西日本を飛び越えて東北へ

 今年の梅雨はいつもと違う。先週の土曜日(15日)は東北北部が梅雨入りし、残ったのは西日本(九州北部、四国、中国、近畿)だけです。平年と比べて2週間遅れています。

 記録が残る1951年以降で最も遅い梅雨入りは下記のとおり。

九州北部地方(山口県を含む)1967年6月22日

四国 1967年6月21日

中国 1968年6月24日

近畿 1958年6月25日

 向こう一週間の天気予報をみると、来週の水曜日(26日)頃から雨の日が続く予想です。

向こう一週間の天気予報(ウェザーマップ作画)
向こう一週間の天気予報(ウェザーマップ作画)

 

 これまで梅雨入り発表のタイミングがなかったのかというと、そうでもありません。

 6月7日は大雨警戒レベル導入後、初の大雨が広島県や山口県でありました。また、15日も四国で強い雨が降り、徳島県の一部に土砂災害警戒情報が出されました。くもりや雨の日は徐々に増えるので、梅雨入りを見定めるのが難しく、今年はタイミングを逃してしまったのかもしれません。

なぜ、西日本だけ梅雨入りしない?

 梅雨前線の北上には上空を流れる強い西風(亜熱帯ジェット)が関係しています。強い西風は北と南で温度差が大きいところを流れます。春と夏の境目と考えてもいいでしょう。梅雨入りは梅雨前線に注目しがちですが、本来はこの強い西風の動向が鍵を握ります。

 こちらは上空の風の流れをみた図です。見にくいですが、赤道を中心とした世界地図で、日本列島は赤い矢印で示しました。梅雨前線に関係する強い西風(黄矢印)は中東から日本列島に向かって波を打つように流れています。

7日平均200hPa流線関数平年偏差(等値線)および風平年偏差ベクトル(気象庁ホームページより、著者加工)
7日平均200hPa流線関数平年偏差(等値線)および風平年偏差ベクトル(気象庁ホームページより、著者加工)

 さらに、日本付近に注目すると、強い西風は中国大陸で北に盛り上がり、その後は日本の南を流れています。強い西風=梅雨前線と考えれば、梅雨前線が西日本から離れてしまい、梅雨入り発表ができない状況であったことがわかります。

 来週の水曜日(26日)以降は梅雨前線が西日本に近づく予想です。雨が強く降るおそれがあるので、今後の気象情報にご注意ください。

【参考資料】

気象庁:昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値)

気象庁:大気の循環・雪氷・海況図表類

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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