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稲妻が起こるしくみ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
稲妻が起こる条件は雲内部の気温にある(写真:アフロ)

 稲妻が起こる条件は2つ。雲が気温マイナス20度の層まで発達していること、そしてあられと過冷却水滴が混在すること。実際の雷雨で確認することができた。

雨雲はどれも同じに見えるけれど

 梅雨の晴れ間が広がった関東地方。気象衛星ひまわりの雲画像でも、本州付近がぼんやりと見えます。梅雨に入っても、しばらく梅雨前線は行ったり来たりするため、晴れる日も多いです。むしろ、梅雨の晴れ間の蒸し暑さに本格的な夏が近いことを感じます。

気象衛星ひまわりから見た日本列島(6月8日午後、ウェザーマップ)
気象衛星ひまわりから見た日本列島(6月8日午後、ウェザーマップ)

一方、梅雨真っただ中の沖縄は雨雲に隠れてよく見えません(赤丸)。

雲を縦に切る

 沖縄本島南部の南城市に設置されている気象レーダーをみてみましょう。

気象レーダーの反射強度を図にしたもの(沖縄レーダー、6月8日午後1時半、ウェザーマップ作画)
気象レーダーの反射強度を図にしたもの(沖縄レーダー、6月8日午後1時半、ウェザーマップ作画)

 図で赤く示された部分はレーダーの反射が強い所です。雲の中にある雨粒が大きければ大きいほどレーダーの反射が強いことを利用して、雨の強さを間接的に知るのです。でも、これだけでは雷が鳴っているのか、わかりません。

 雨雲を縦に切ったら、何が見えるのでしょう。

 沖縄本島の北にある雲を東西に縦に切った図がこちらです。

左:レーダー反射強度とLIDEN 右:レーダー断面図に気温を重ねたもの(著者作成)
左:レーダー反射強度とLIDEN 右:レーダー断面図に気温を重ねたもの(著者作成)

 赤点線で囲った部分と青点線で囲った部分の違いがわかりますか?

左側(赤点線)はレーダー反射の強い部分が高さ14キロくらいまであります。一方、右側は(青点線)は高さ6キロ程度です。

稲妻が起こるための条件は2つ

 ひとつは雲が気温マイナス20度になる層まで発達していること。ふたつめはマイナス10度からマイナス20度の層が夏の場合、高さ7キロ付近にあること。この層ができると、あられと過冷却水滴が混在するため氷粒や水滴が接触したり、衝突したりすることで雲の中で帯電が起こります。これが稲妻になるのです。

 図はとても見にくいですが、赤点線で囲った部分はこれらの条件に当てはまり、雷が観測されています。実際の雲に条件を当てはめてみると、なるほど!と思えて、興味深いです。

【参考資料】

入田央、2009:第2章雷が起こるしくみ、トコトンやさしい気象の本、日刊工業新聞社

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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