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エルニーニョ発生 日米豪の見解分かれる

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
太平洋赤道域で海面水温が上昇(2018年10月、NOAAホームページより)

 気象庁は2年ぶりにエルニーニョ現象(以下、エルニーニョと記述)が発生したと発表したが、米豪の気象機関は発生に慎重な見方を示す。海洋と大気の結びつきが不明瞭だからだ。エルニーニョは発生しても規模が小さく、短期で終わる可能性もある。

2年ぶり、エルニーニョ発生

 気象庁は9日、定例のエルニーニョ監視速報(10月の実況)を発表し、海洋と大気の状態からエルニーニョが発生したとの見方を示しました。発生の根拠として、太平洋赤道域の海面水温がエルニーニョ発生に必要な基準値を上回ったこと、そして赤道付近を吹く貿易風(東風)が平年より弱いことを挙げています。エルニーニョの発生は2016年春以来、2年ぶりのことです。

エルニーニョ現象の経過と予測(2018年10月、気象庁ホームページより)
エルニーニョ現象の経過と予測(2018年10月、気象庁ホームページより)

米豪の気象機関は慎重な見方

 一方、NOAA(米海洋大気庁)の見方は違います。10月は太平洋赤道域の広い範囲で海面水温の上昇がみられたものの、大気の状態はエルニーニョが発生したときにみられる特徴が明瞭ではないとしています。

 エルニーニョは海洋と大気がそろって、その特性を示すことが重要で、片方だけではエルニーニョとは呼べません。

 また、オーストラリア気象局も同様の見方を示し、海面水温はエルニーニョの発生を示しているが、大気はほぼ平常な状態で、海洋と大気がしっかりと連動していない点を指摘しています。このような状態が続けば、エルニーニョの自立的な発達は危ういとしています。

発生しても規模が小さく、短期で終わる可能性

 今後の見通しをみてみると、日米豪で微妙な温度差があります。日本は2019年春(5月)まで続く可能性が70%と予想しています。また、豪は少なくとも2019年3月までは続くだろうと述べています。

 一方、米はこの冬にエルニーニョが発生している確率を80%とし、来年春まで続いている可能性は55%から60%とやや低く見積もっています。エルニーニョが続かない理由として、規模が小さいことを挙げています。

2018年10月、海面水温の平年偏差図(気象庁ホームページより)
2018年10月、海面水温の平年偏差図(気象庁ホームページより)

ないとはいえないが、強くもない

 エルニーニョ発生で、この冬は暖冬と断定するような報道も見受けられます。でも、冬の天候にエルニーニョが影響する割合は3割程度で、「日本の天候とエルニーニョの関係はないとはいえないが、強くもない」という緩やかなつながりです。

 現在、太平洋赤道域のほぼ全域で海面水温が高く、典型的エルニーニョとは言い難いです。この変則的なエルニーニョが大気にどのように影響するのか。予想がつかないことのほうが大きいと思っています。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(NO.314),2018年11月9日

NOAA(米海洋大気庁):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION,8 November 2018

NOAA Climate.gov:El Nino & La Nina (El Nino-Southern Oscillation)

オーストラリア気象局:ENSO Wrap-Up,El Nino ALERT continues; positive Indian Ocean Dipole,7 November 2018

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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