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世界が注目 エルニーニョ現象のいま

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
南米ペルー沖では海面水温が上昇(米海洋大気局データNOAA)

世界が注目するエルニーニョ現象

今や異常気象を引き起こす代名詞ともなったエルニーニョ現象。日本から遠く離れた太平洋熱帯域で起こる現象が、異常気象を引き起こすと言われてから久しい。でも、日本の天候にどのくらい影響するのか、未だ、はっきりと解明されたわけではありません。

それでも、この夏は冷夏の可能性があるといわれているのは、熱容量の大きい海洋がひとたび変化を起こすと、天気現象(大気)に及ぼす影響がとても大きいからです。

2014夏 大西洋のハリケーン予想(米海洋大気局NOAA)
2014夏 大西洋のハリケーン予想(米海洋大気局NOAA)

先日、米海洋気象局(NOAA)は今シーズンのハリケーン予報を発表しました。それによると、大西洋で発生する熱帯低気圧の数は、70%の確率で平年並みの8個から13個と予想され、エルニーニョ現象の動向がカギになると述べています。

エルニーニョ現象が発生すると、風の変化(wind shear)が大きくなるため、熱帯低気圧の発生数やハリケーンの発達に影響があるそうです。

エルニーニョ現象の発生は?

このように世界が注目しているエルニーニョ現象ですが、定義は世界で統一されているわけではありません。日本の場合は、海面水温と基準値との差を5か月移動平均した値が、6か月以上続けて0.5度を上回った場合をエルニーニョ現象の発生期間とします。

一方、アメリカは違う条件です。

ややこしいですが、海洋は変化がゆっくりなだけに、発生を見極めるのがとても難しいのです。現在は「エルニーニョ現象の発生に近づいた」というあいまいな表現になっています。

冷夏というには、まだ早い

テレビ、新聞、雑誌、世の中はエルニーニョ現象による冷夏予想でもちきりです。ただ、今のところ冷夏に結びつくような状況にはなっておらず、逆に、夏の高気圧(太平洋高気圧)は強まる兆しをみせています。

これまでの調査、研究では、エルニーニョ現象が日本の天候に影響する割合は3割程度とされています。いいかえれば、エルニーニョ現象以外の影響が7割もあるわけですから、そう簡単に冷夏といえないのです。

私に「灰色の脳細胞」があったなら、と思ってしまう今日この頃です。

【参考資料】

エルニーニョ監視速報(No. 261),気象庁地球環境・海洋部

NOAA predicts near-nomal or below-nomal 2014 Atlantic hurricane season,May 22 2014

石川一朗,前田修平,2013:エルニーニョ/ラニーニャ現象に代表される熱帯海洋変動とその影響,平成24年度季節予報研修テキスト「季節予報作業指針」,気象庁地球環境・海洋部,123-156.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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