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海の温暖化 台風の発達域が北へ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
フィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号(ハイエン)

米海洋大気局の研究チームは今月14日、熱帯低気圧(台風)の勢力が最大となる場所(緯度)が北へ移動していると発表しました。台風の勢力が最も強くなる場所が北へずれると、その分、あまり衰えずに日本へ近づくことになります。台風の被害は年によってばらつきがあり、必ずしも、昔より今の方が被害が甚大であるとは言えませんが、気になる分析結果です。

海の温暖化 台風の発達域が北へ移動

米研究チームは最近30年間の熱帯低気圧(台風)データを分析、台風の勢力が最大となる場所(緯度)が10年間に35マイル(約56キロ)北へ移動していることを突き止めました。その背景には温暖化の進行に伴って、熱帯化した海がこれまでよりも北へ広がっていることを挙げています。

でも、10年間で約50キロから60キロ程度では、はたして移動といえるのか疑問を持ちました。自然が持っているゆらぎの範囲内とも言えるのではないでしょうか。

米研究チームは台風の勢力が最大となる場所が北へ移動したことで、熱帯地方の国では逆に台風の影響を受けにくくなって、水不足に陥る懸念があるとしています。ゆくゆくはそうなる可能性があるかもしれませんが、今は台風による災害を軽減することが一番でしょう。

猛烈な強さの台風は増えるか?

猛烈な強さの台風と台風の発生数
猛烈な強さの台風と台風の発生数

昨年11月、フィリピン・レイテ島を巨大な台風30号(ハイエン)が襲いました。まるで大津波かと錯覚するような高潮が街を襲い、死者は6千人以上と伝えられています。

悲劇の最大の要因は、台風の勢力が最も強い(中心気圧895hPa、中心付近の最大風速65メートル)ときと上陸が重なったことでしょう。これまで日本に上陸した台風で最も強かったのは、1961年(昭和36年)台風18号(第2室戸台風)の925hPaであることを考えると、フィリピンの被害は決して他人事ではないと思います。

昨年(2013年)は台風30号(ハイエン)を含めて、5個の台風が猛烈な強さ(最大風速が54メートル以上)まで発達しました。猛烈な強さまで発達する台風は平均すると、一年間に1.7個ですが、年代別でみると、1980年代は多く、1990年代は少なく、2000年代は多くと、波を打っているようにも見えます。

今回の分析結果から、すぐに強い台風ばかりが日本に近づくとは思いません。でも、大気と違って熱を蓄える力が大きい海の温暖化は、ゆっくり、かつ確実に影響が出てくるのではないかと思っています。

【参考資料】

NOAA(米海洋大気局)

NOAA-led study: Tropical cyclone 'maximum intensity' is shifting toward poles

【台風の記録】

台風のデータ、記録は1951年以降としました。

上陸時の気圧が低い台風としては、参考記録として、1934年室戸台風(911.6hPa)、1945年枕崎台風(916.1hPa)があります。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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