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東京 遅い「秋雨明け」

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
北海道大学の銀杏並木(著者撮影)

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」

川端康成の代表作「雪国」に有名な一文がありますが、今日(27日)の澄んだ青空を見上げると、「秋雨の長いトンネルを抜けると本当の秋晴れであった。」と思えてきます。

東京は遅い「秋雨明け」

季節が移るときは必ずと言っていいほど、くもりや雨のぐずついた天気が多くなり、夏から秋へは秋霖(しゅうりん)と呼ばれます。試みとして、独自に今年の全国の秋雨入り、秋雨明けを調べてみました。(各地の天気、気温、降水量、日照時間等を総合的に判断しました。)

2013年 全国の秋雨入り、秋雨明け

札 幌  9月17日頃 10月18日頃

仙 台  9月30日頃 10月27日頃

東 京  9月24日頃 10月27日頃

新 潟  9月25日頃    -

名古屋 10月15日頃 10月26日頃

大 阪 10月15日頃 10月26日頃

福 岡  9月29日頃 10月26日頃

秋雨入り・明けに明確な定義はなく、梅雨ほどはっきりと現れる現象ではありませんが、今年は秋雨シーズンの入り、明けともに、例年より遅くなったようです。本来ならば、東京では10月中旬に秋雨が明け、名実ともに秋本番、秋晴れがやってきます。昭和39年の東京オリンピックは秋雨明けを予想して、開会日を決めたという逸話は有名です。

10月に真夏日、相次ぐ台風の接近に、大雨被害

今月はまるで季節がねじれてしまったかのような天気が相次ぎました。10月の天気をひとことで言うと「高温多雨」。平均気温は九州から東北地方にかけて、平年を2度以上上回り、降水量は平年の2倍、3倍の所がほとんどです。東京も例外ではなく、10月の気温は観測史上最高に、降水量は平年の2倍を超えました。

2013年10月中旬 北半球旬平均500hPa高度および平年偏差
2013年10月中旬 北半球旬平均500hPa高度および平年偏差

この季節外れの天候をもたらした要因を考えてみましょう。

上の図をご覧ください。これは上空5千メートル付近の大気の状態を表した図です。図の中央に日本列島があり、その右側に「H」のマーク、太平洋高気圧があります。そして、日本の南の水色で示された部分は台風が多く発生した場所です。(専門的な図のため、分かりにくいかもしれません。)

10月は太平洋高気圧が例年以上に強く、北に偏って張り出したため、日本列島には南から暖かく湿った空気が流れ込みました。また、台風も太平洋高気圧の縁に沿って北上し、日本に近づきました。

なぜ、太平洋高気圧が日本付近で強かったのでしょう?

それには、日本の南(水色で示された部分)で対流活動が活発になった(台風が多く発生した)ことが関係しています。強い上昇気流が日本付近では下降気流となって太平洋高気圧を強めました。(上昇気流は雲を発生させ、下降気流は高気圧を強める)

今週は北日本の一部を除いて、晴れる日が多く、朝晩は一層、冷え込みそうです。

【参考までに】

秋雨入り、明けに明確な定義はないため、ここでは9月、10月の天気、気温、降水量、日照時間、気圧配置等を総合的にみて判断しました。最近10年間を平均した秋雨明けの日は、東京で10月18日頃です。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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