どう使う?この夏、進化する大雨の気象情報

気象庁が目指す防災気象情報の方向性について示した概念図。

気象庁が発表する警報・注意報をはじめとした「防災気象情報」が、2017年夏にかけてさらに高度化・詳細化します。大雨や台風のシーズンを前に、新しく発表される情報の意味や私たちの利用法について解説します。

■ 大雨による災害

気象庁からは、重大な災害が発生するおそれがある場合に各種の警報が発表されます。なかでも「大雨警報」や「洪水警報」は耳にする機会も多く、広く一般に知られた情報と言えるでしょう。正確には、大雨警報は起こり得る災害によって「大雨警報(土砂災害)」と「大雨警報(浸水害)」に分けられていて、大雨による災害は大まかにいえば、

土砂災害

低地の浸水

河川の増水・氾濫(洪水)

の3つに分けることができます。

雨による災害の概念図。それぞれに「指数」を計算し、警報発表に活用する。
雨による災害の概念図。それぞれに「指数」を計算し、警報発表に活用する。

こうした災害の発生する危険性は降った雨の量に大きく関わってきますが、災害が起こるかどうかはその土地の状況にも大きく依存します。もともと雨の多い地域であれは、ちょっとやそっとの雨では土砂災害は発生しにくい一方、雨の少ない地域ではある程度の雨が降れば危険性が高まります。都市部ではアスファルトに覆われた所が多いため、雨水が地中に浸み込みにくく、浸水の危険性はほかの地域より高まりやすいはずです。また、川の場合は上流部でどれだけの雨が降ったかも大切で、頭上で大雨になっていなくても、増水の危険性が高まることがあり得ます。

■ 「雨量」から「指数」へ

警報等に用いる指標の変遷。今夏からは「雨量」がなくなり「指数」のみになる。
警報等に用いる指標の変遷。今夏からは「雨量」がなくなり「指数」のみになる。

今回、気象庁では、大雨警報や洪水警報を発表する際の基準にこれまでの「雨量」そのものではなく、それぞれの災害の危険度を示した「指数」を用いることを決めました。すでに土砂災害については土の中の水分量をリアルタイムで推定した「土壌雨量指数」を使って、それぞれの地域での災害の起こりやすさ(基準)と比べることで大雨警報(土砂災害)を発表していましたが、2017年7月上旬からは、大雨警報(浸水害)は「表面雨量指数」、洪水警報は「流域雨量指数」を用いて各地の災害危険度を判定し、発表することになります。

気象庁では、これまで長い間「雨量」そのものの予想を用いた警報の発表をしていましたが、この夏には完全に「指数」の利用へと大きく転換することになります。従来よりも、いっそう災害の発生危険度そのものにリンクした警報の発表となるため、より精度の良い情報になることが期待されています。

■ 私たちの使い方は?

大雨警報・洪水警報は、今後も基本的には「市町村ごと」に発表されます。ただ、その市町村が広すぎて、自分が住んでいる地域ではどのくらい危険な状況になっているのか分かりにくい、という声も耳にします。また、自治体の防災担当者からは、町内のどの地域に避難情報を出すべきか、全域を対象とした警報だけでは判断が困難という声もあります。

浸水の危険度分布の例。非常に危険性が高まっている地域を絞り込める。
浸水の危険度分布の例。非常に危険性が高まっている地域を絞り込める。

そこで、警報と合わせて、地図上にリアルタイムで示される、災害の「危険度分布」を利用するのが賢明です。

これまでも土砂災害は、土壌雨量指数と地域ごとの災害の起こりやすさをもとに「土砂災害警戒判定メッシュ情報」という名の危険度分布が配信されていましたが、この夏からは、浸水・洪水についても同様に危険度分布図が発表されるようになります。

浸水は1km格子で、洪水は河川ごと(中小河川も含む)に、5段階のレベルで危険度を表示し、市町村単位よりももっと細かく、どの地域・どの川がどの程度の危険度なのかを表示することになります。

警報・注意報により、「どの市町村が危険なレベルに達する心配があるのか」を把握し、

3種類の危険度分布図で、「特に危険な地域はどのあたりか」をより詳細に知ることができる

ということになります。気象庁のホームページでも公開されるとのことですので、パソコンのほか、タブレット端末やスマートフォンのユーザーはGPSの位置情報も活用しながら、災害を回避する行動をとる助けになると思います。

■ 大雨特別警報もより精度良く絞り込んで

数十年に一度レベルの大雨が予想される場合に発表されるのが「大雨特別警報」。府県程度の広がりを持ったそうした極めて危険な状況の際に発表されることになっており、現行の運用では、50年に1度の雨量となるおそれのある地域が予め決められた広さに達した場合、その府県に発表中の大雨警報はすべて「大雨特別警報」へ引き上げられると定められています。

大雨特別警報の発表地域の改善例。危険度が最大レベルの地域に限って特別警報となる。
大雨特別警報の発表地域の改善例。危険度が最大レベルの地域に限って特別警報となる。

極端な話、とある県の西側の地域だけで記録的な大雨になった場合でも、東側の地域でも通常の警報レベルの大雨となっていたら、西側だけでなく東側の地域にも(東側では数十年に一度レベルに達しなかったとしても)、連動して大雨特別警報が出されるという状況なのです。

今夏からは、今回導入する「危険度分布」の技術を活用し、5段階のうち最も危険度が高い状況になっている地域に限って大雨特別警報を発表する運用に変更されます。もちろん、通常の警報であっても重大な災害の可能性が高まっているため油断はならないのですが、特別警報発表となると最大限の警戒が必要となり、該当地域では非常に大きな労力を費やすことになります。今回の変更で、危険度が著しく高まっている地域をより絞り込んで大雨特別警報を発表できることになります。

■ 「警報級の可能性」「危険度の色分け・時系列表示」も運用へ

危険度の色分け・時系列表示の例。警報レベルの時間帯が赤色表示で分かりやすい。
危険度の色分け・時系列表示の例。警報レベルの時間帯が赤色表示で分かりやすい。

また、警報や注意報の発表に際しては、「いつ」「どの現象が」「どのくらいの危険度で」起こる予想なのか、市町村ごとに時系列で示した表示方法が2017年5月17日から始まります。パッと見て、視覚的にも、危険な時間帯が分かりやすく表示されることになるので、ぜひ活用したいものです。

「警報級の可能性」の表示例。可能性が高い日が表示される。
「警報級の可能性」の表示例。可能性が高い日が表示される。

そして、私が強く活用をオススメしたいのが「警報級の可能性」の情報です。これまでも、災害の危険性が高くなってきた場合には事前に「警報を発表する可能性があります」とさまざまな場面で言及されてきたのですが、「今後の状況次第では、あり得る」という程度の見通しの場合には、一般にはその状況が分からなかったのです。

今回運用が始まる「警報級の可能性」では、そうした場合には可能性が[中]と示されることになっています(確度がいっそう高い場合には[高]と表示)。私たちが普段の生活をするうえでは、例えば…

・旅行の予定がある日に[中]と表示されていたら、最悪の場合荒天のおそれもあるのだと思って、今後の情報をいつも以上に注視するようにする。

・屋外を移動する仕事の予定が多い日に[中]と表示されていたら、早めに別の日に済ませるようにスケジュールを変更しておく。

などリスク回避に活用できます。一人ひとりの生活の実情に応じて使い方、使う場面が異なると思いますので、どのように使えるか、どうぞ考えてみていただければと思います。

今夏にかけて行われる防災気象情報の改善。しっかり活用して、災害に巻き込まれることのないようにしたいものです。また、私たち気象解説者もこうした情報を適宜利用しながら、引き続き防災・減災に資する情報提供・伝達に臨んでいく思いでいます。

(画像は気象庁HPに掲載の資料から引用・加工して作成しました。)

■ 関連リンク

・気象庁報道発表資料

(大雨・洪水警報の改善、危険度分布 関連)

http://www.jma.go.jp/jma/press/1704/28b/20170428riskmap.html

(警報級の可能性、危険度の色分け時系列 関連)

http://www.jma.go.jp/jma/press/1704/28a/20170428johokaizen.html

・特別警報について(筆者の過去の執筆記事)

「特別警報」まもなく導入1年 浮かび上がった課題とは?(2014年7月)

https://news.yahoo.co.jp/byline/katahiraatsushi/20140717-00037466/