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何を見て、何を考えているのか? チリ戦で光った三好康児の頭の中

神谷正明ライター/編集者
チリ戦でインテリジェンスの高さを感じさせた三好康児(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 2020年東京五輪を見据えたU−22の選手たちで主に構成されている日本代表は、現地時間17日に行われた南米選手権初戦のチリ戦で0−4の惨敗を喫した。

 先発11人中6人が代表デビューというフレッシュな陣容で臨んだ森保ジャパンは、15年・16年の南米選手権を制して連覇中のチリとの戦いで多くの課題と向き合うことになったが、その一方でプラス材料もあった。その一つが出色の出来だった三好康児の存在である。

 三好は66分に前田大然との交代でピッチに立つと、随所に存在感を示した。特に70分の場面、いわゆる「ハーフスペース」と呼ばれるレーンでフリーで前を向いてボールを受けると、ほんの少しの隙間を通すスルーパスでMFラインとDFラインの2つをぶち抜き、上田綺世の決定機を演出した。

 相手の立ち位置を瞬時に捉える目、狭いところにボールを通せる確かなキック技術、どこが狙い目なのかを見極める判断力が光ったプレーだった。ただ、三好が素晴らしかったのはそういった決定機につながったシーンだけではない。

 何度かアタッキングサードで攻撃の起点になる場面を作っていたが、そのベースとなっていたのがボールを受ける前の巧みなポジション取りである。三好は常にチリの嫌がるところ、守りにくいところに顔を出し、パスを引き出そうとしていたように見えた。

 あの時、彼が何を考え、どうプレーしようとしていたのか。ウルグアイ戦に向けた19日の練習後、三好に直撃したところ、実に興味深い答えが返ってきた。三好の思考を紐解いていくにはQ&A方式の形の方がよりわかりやすいかと思うので、以下に展開していく。そのインテリジェンスの高さが窺い知れるのではないだろうか。

☆  ☆  ☆

Q チリが4−3−3で戦う中、三好選手はアンカーの脇、あるいはセンターバックとサイドバックの間のポジションを狙っていたように見えたが、それはベンチで意識して見ていた部分か?

その部分が空くというのは外から見ていても思っていたところですし、中に入ってみて、実際サイドバックがそこまでインサイドしてくるわけじゃなかったので、自分がタイミング良く入れば受けられるというのはイメージできていた部分なので。ただ、そこで受けるのが役割じゃなくて、受けて何をするかというか、そこからゴールにつなげるのが役割なので。受けられるのは自分の得意としている部分ですし、そこは味方と合わせられれば次の試合も受けられると思うので、そこから先、ゴールに近づけていくのが自分の仕事だと思っています。

Q 元々そういった素養は高いと思うが、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督、横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督といった監督の元でさらにアップデートされた部分はある?

いろんな形のなかで、システムとかやり方とかある中で、自分がどこで受ければ、どういうプレーが出せるのかというのは、少しずつ整理できるようになってきてますし、それを公式戦の中でやるのはまだ違うものがありますが、あとはどんな相手だとしても、どこが空いてくるのかというのは常に見ながらやれるようになってきているなと思います。

Q そういう意味で次のウルグアイ戦、どういうイメージを持ってポジションを取る?

ウルグアイはもう少し守備の構築がしっかりしていると思いますが、サイドバックはけっこう高い位置を取ってくると思うので、その分、自分たちがボールを奪った時には前のところが空いてくると思うし、そこはやりながらでないとわからない部分がどうしてもあるので、現段階でどこが絶対に空くとかは思わないですけど、インサイドする部分と、サイドで張りながらの部分と、そこをうまく使い分けられれば、ボールはうまく引き出せるかなと思うので、そこはどちらでも受けられる準備はしておくべきかなと思います。

Q ウルグアイの4−4−2に対する、自分の立ち位置の整理はできている?

そこは映像も見て、整理できていますし、もう少しこれから相手の試合を分析してみようと思っていますけど、ただ頭で考えるよりも、やっていくなかで、状況状況に応じてポジションを取ることが大事だと思っていますし、もちろん入る前にイメージは作っていますけど、試合に入ると、考えて動いてばかりではいられないので、そこはフィーリングというか、味方とも合わせていかないといけない部分ですし、試合の中でやってければと思います。

Q プレーしながら味方の配置、敵の配置によって動くというタイプだと思うが、ピッチが俯瞰で見えるタイプか?

もちろん俯瞰で見たいですけど(笑)。そこはある程度、周りの味方と、相手の位置を見た上で、どこにポジションを取ったらどこが空いてくるというのは、今までサッカーしてきた経験の中でもある程度イメージできる部分と、試合の中で見ながら判断していく部分と織り交ぜながらやっている感じです。

Q それは守備でも同じか? チリ戦で言えば、中島選手が攻め残ることで杉岡選手が常に1対2を強いられ、その展開からボランチのスライド、DFラインのスライドなどで日本は対処しようとしたが、チリがその流れを意図的に作り出して玉突き事故的に崩された。三好選手は守備面でもそういったことを意識して、守備も行っていたように見えたが?

そこは最低限必要な部分と、あとはボールの状況にもよるので、何が何でも下がらないといけないわけでもないですし、逆に言ったら、前に残り続けることがいいわけでもないですし、その時の状況次第なので。その判断は個人としてやらないといけない部分だと思いますし、残っていてもそれがチャンスになるのであれば、してもいいプレーだと思うので、嗅ぎ分けというか、そこはすごく大事な部分かなと思います。あとは大前提としてやらないといけないことがあるので、そこは守りつつ、あとは個人個人が自分の色を出していく上では考えてやっていってもいいのかなと思います。

Q 中間ポジションを取ってボールを受けてから、というのはどんなシステムであれ狙っていくプレーだと思うが、人に強い守備のウルグアイのどこを狙い、どう相手のDFラインにアタックしていくのか?

個人で仕掛けていく部分もイメージとしてはありますけど、どちらかと言えば、三人目の動きだったり、ワンツーだったり、南米の選手はボールにはっきりとくる分、そういうところで外しやすいと思いますし、そこはチャンスになるかなと思うので、個人の部分でも受ける時に相手を外すようなボールのタッチの仕方だったり、向かっていくというよりは外していくようなイメージを持つことができれば、おのずとゴールに向かっていけるかなと思います。

Q クラブと代表では練習に費やせる時間が違うので、連携という意味では味方と細かくイメージを合わせるのが難しいのではないか?

でも、そこは同じような感覚を持った選手はいると思いますし、そういう選手が集まってきて代表になっていると思っているので、少しの部分を合わせることができれば、ゴールに向かっていけると思うし、前回の試合もチャンスは作れているので、そこは悲観するところではないと思っています。連携がまったくできなかったわけじゃないので、そこはチャンスができるかなと思っています。

Q チリはけっこうスペースを与えてくれた一方、ウルグアイの守備はより強固という違いがあると思うが?

そこはたしかにそうかもしれないですけど、それでも合わせることができれば、最後のほんの少しの部分を合わせることができれば、必ずチャンスはできると思います。そこはやってみないとわからない部分はありますけど、得点チャンスは必ずできると思います。

ライター/編集者

大学卒業後、フリーライターとして活動しながらIT会社でスポーツメディアに関わり、2006年にワールドカップに行くため完全フリーランスに。浦和レッズ、日本代表を中心にサッカーを取材。2016年に知人と会社設立。現在は大手スポーツページの編集業務も担い、野球、テニスなどさまざまなスポーツへの関与が増えている。

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