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【NHL】優勝監督→年俸交渉決裂→辞任→3日後に同じディビジョンのライバルチームと契約→年俸約3倍!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
バリー・トロツはアイランダーズと契約(Courtesy:@NYDNSports)

 ワシントン キャピタルズが初めてスタンレーカップを手にして、全ての試合を終えたNHLは、一昨日(現地時間)今季の各賞の発表と表彰を行う「NHLアウォード」を開催。

 さらに続いて昨日は、来季のレギュラーシーズンの試合日程を発表しました。

▼来季は10月3日開幕

 来季の開幕は10月3日。クリスマスブレイク(12月24日~26日)と、サンノゼのSAPセンターで行われるオールスターゲーム(1月25、26日)に合わせたブレイクを挟み、4月6日まで1271試合(各チーム82試合)を戦います。

 その中には「グローバルシリーズ」と銘打って、スウェーデンフィンランドで公式戦を開催。

 またノートルダム スタジアム(アメリカ・インディアナ州)と、リンカーンフィナンシャル フィールド(アメリカ・ペンシルバニア州)でのアウトドアゲームも予定されています。

▼優勝監督がライバルチームの指揮官に!

 このようなスケジュールを目にすると、「来季の開幕が待ち遠しい!」と、ワクワク感が高まっているファンも多いでしょうが、なかでも、その気持ちが高まっていそうなのは、ニューヨーク アイランダーズのファン

 なぜなら、今季の優勝チームのヘッドコーチ(HC=日本の各スポーツでの表記に合わせると監督)が、来季から指揮を執ることになったからです。

▼ワシントンとの年俸交渉が決裂

 チーム創設44季目にして、初めてスタンレーカップ(NHLのチャンピオントロフィー)を手にしたワシントンは、4季にわたってチームを率いてきたバリー・トロツ HC(55歳)との契約が満了するのに伴い、年俸交渉を行ったものの合意に至らず決裂。 

 現地のメディアによると「契約期間中に優勝した場合は、2年間契約を延長する」との付帯項目があったそうですが、その際の年俸は「150万USドル(およそ1億6500万円)」だと報じられています。

 この金額は、大学のHCから転じてフィラデルフィア フライヤーズの指揮官になったデイブ・ハクストル(49歳/就任当時46歳)の「200万USドル」よりも低い額。NHLでのHC歴が20季(ロックアウトによるシーズンキャンセルの年も含む)にも及ぶトロツには、到底納得できる評価ではなく、年俸交渉を行ったものの決裂し辞任を申し出たのです。

▼3日後にライバルチームと契約

 しかし、優勝チームのHCを他のチームが放っておくわけがありません。

 昨季に続いて今季も、プレーオフに進めなかったニューヨーク アイランダーズが、今月6日にGMを務めていた ガース・スノーとともに解任したリック・トケットHCの後任として、トロツを招き入れたのです。

 トロツはワシントンのHCを辞任した3日後に、同じアトランティック ディビジョンのライバルチームの指揮官に就任。

 しかも、その契約は「400万USドル(およそ4億4000万円)以上の年俸で5年契約」であると、カナダのメディアが伝えています。

 さらに、明らかにはされていませんが、サインした際にボーナスが加わるケースも多いため、その額も含めれば年俸は約3倍に!

▼最高年俸HCと最低年俸HCは誰?

 景気の良い話だなぁと思われる方も、いらっしゃるでしょうが、トロツHCとアイランダーズとの契約は、決して驚くほど高額ではありません。

 参考までに紹介すると、今季のNHLで最も高い年俸の契約を結んでいたのは、トロント メイプルリーフスの マイク・バブコックHC(55歳)

トロントを率いるマイク・バブコック(Courtesy:HCmyhealthexercise.com)
トロントを率いるマイク・バブコック(Courtesy:HCmyhealthexercise.com)

 世界中を探しても、たった一人しかいない「オリンピック」、「NHL」、「世界選手権」で優勝し、国際アイスホッケー連盟が制定した「トリプルゴールドクラブ」に、HCとして名を連ねた男を、チーム再建のためにトロントが引き抜いたとあって、年俸は「625万USドル(およそ6億9000万円)」

 対して、最も低い年俸で契約しているのは、バブコックの後任としてデトロイトを率いている ジェフ・ブラシルHC(44歳)

デトロイトを率いるジェフ・ブラシルHC(Courtesy:@Sportsnet)
デトロイトを率いるジェフ・ブラシルHC(Courtesy:@Sportsnet)

 こちらは、NHLの一つ下のリーグに相当するAHLのアフィリエイトチームのHCから昇格したとあって、年俸は(明らかにされているHCの中で)最もお安い「80万USドル(およそ8800万円)」と、およそ1/8ほどです。

 ちなみに、今季のレギュラーシーズンの勝利数で、両HCの年俸を割ると、およその金額は、、、

バブコック (トロント)→ 1勝あたり「1400万円」

ブラシル(デトロイト)→1勝あたり「290万円」

というように、”コスパ”の面ではデトロイトに軍配が上がりますが、トロント、デトロイト、アイランダーズ以外のチームも含め、来季のNHLでファンを最も喜ばせるのは、どのチームのHCになるでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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