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【KHL】3連覇を狙う王者危うし! 今夜がコバルチャクのラストゲームになる!?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
イリヤ・コバルチャク(Courtesy:@RussianEmbassyC)

 ロシアをはじめ7か国から27チームが集う KHL(コンチネンタルホッケーリーグ)のプレーオフは、先月末から東西両カンファレンスの王者を決める カンファレンスファイナル(CF=3rdラウンド)が始まりました

 イースタンでは、KHL創設時から2連覇を達成し、ガガーリンカップ(=KHLの優勝トロフィー)に、最初に名前を刻んだ AKバルス カザニが、相手チームをスウィープ(4連勝)して、ファイナルへ勝ち上がった一方で、ウエスタンのCFは激しい戦いが続いています。

▼王者を決める戦い

 ウエスタンのCFで相まみえているのは、スカ サンクトペテルブルグ チェスカ モスクワの両チーム。

 KHLで最も得点力が高く(1試合平均4.1点)、「攻撃力」が強みのサンクトペテルブルグ vs 1試合あたりの平均失点がレギュラーシーズン最少(1試合平均1.6点)で、「守備力」が生命線のチェスカ(モスクワにはディナモ モスクワもあるため、以降は都市名ではなくチーム名で表記) という対戦は、「ピョンチャン(平昌)オリンピック」の金メダリストが、両チーム合わせて23人!

 どちらもスター選手が揃うとあって、事実上の「王者を決める戦い」だとの声も多く聞かれ、戦前から多くの注目が集まりました。

▼控えGKの前に今季初の完封負け

 前評判に違わず、両チームのシリーズは第4戦を終えて「2勝2敗」と、どちらも一歩も譲らず、互角の戦いを繰り広げていますが、一昨日の第5戦で、チェスカが大きな動きを見せました。

 ピョンチャンの金メダリストの一人で、メインGKとして活躍したイリヤ・ソロキン(22歳)に代わって、普段はバックアップ(メインGKの控え)の役割を担っている ラルス・ヨハンソン(30歳)を先発に起用!

 一つ前のラウンド(カンファレンス セミファイナル)でも、リードを許したあとから途中出場し、好プレーを続けて逆転勝利を呼び込んだヨハンソンは、抜擢に応えてペナルティキリング(反則者が出て氷上でプレーできる選手が相手チームより少ない状態)で、好セーブを連発(白チームのGK)。

 このビッグプレーを筆頭に好守で最後の砦を守ったヨハンソンは、サンクトペテルブルグの選手が放った29本のシュートを、全て防いでシャットアウト! 

 対戦成績を3勝2敗として、ファイナル進出に王手をかける立役者になりました。

▼今季70試合目で初めての完封負け

 対して、強みの「攻撃力」を完全に封じられたサンクトペテルブルグは、レギュラーシーズンから通じて「今季の公式戦70試合目で初めての完封負け」!

 しかも、相手チームの2番手GKにシャットアウトされてしまったとあって、大きなダメージを受けてしまいました。

 土俵際まで追い込まれて戦う今夜の第6戦も、敵地に乗り込んでの試合とあって、厳しい戦いを強いられそう。

 それだけに、主力を担う看板選手の奮起が求められますが、なかでも期待されるのは、イリヤ・コバルチャク(FW・34歳)

スカ サンクトペテルブルグのジャージ姿は今季で見納め?(Courtesy:@izvestia_sport)
スカ サンクトペテルブルグのジャージ姿は今季で見納め?(Courtesy:@izvestia_sport)

▼コバルチャクの大きな目標

 前述したとおり、このシリーズには「ピョンチャン オリンピック」の金メダリストが23人も揃っていますが、コバルチャクは金メダルだけでなく、MVPも受賞しただけに、サンクトペテルブルグのファンの期待が集まります。

 一方で当のコバルチャクは、大きな目標を抱いて戦っているようです。

 その目標とは、「トリプルゴールドクラブのメンバーに名を連ねること!」

 筆者の当サイトでも既に紹介しましたが、国際アイスホッケー連盟が制定するトリプルゴールドクラブは、「オリンピック」「世界選手権」「NHL」全て優勝した者だけが名を連ねるアイスホッケー界最高の栄誉!

 ロシアのメディアによると、ピョンチャン オリンピックで、ともに金メダルを勝ち取ったパベル・ダツック(FW・39歳/スカ サンクトペテルブルグ)がメンバー入りを果たしたことから、一際思いが強くなった模様です。

▼最後のハードルをクリアするために

 コバルチャクは、ピョンチャン オリンピックに先駆けて、2008年の世界選手権で自らの同点ゴールとサヨナラゴールで、優勝を呼び込んだ実績を誇ります。(赤#71)

 それだけに、トリプルゴールドクラブのメンバーに加わるための最後のハードルは「NHLでチャンピオンになること」

 このような経緯から、サンクトペテルブルグとの契約が今季終了後に満了するのも手伝って、来季から再びNHLへ活躍の場を移すことが濃厚

 北米のメディアの中には、今季は低迷してしまいプレーオフ進出を逃した ニューヨーク レンジャーズが契約に動くだろうと、具体的なチーム名も報じられています

▼今夜がコバルチャクのラストゲームになる!?

 午後5時(現地時間)に開始予定の今夜の試合で、サンクトペテルブルグが敗れると、コバルチャクがKHLでプレーするラストゲームになってしまうかもしれません。

 サンクトペテルブルグが3連覇に望みをつなぐのか?

 それとも、チェスカが引導を渡すのか? 

 世界のホッケーファンからの注目が集まります。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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