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【NHL】ハーバード大学出身の21歳のルーキーは、ボストンブルーインズの救世主になれるか!?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
平昌オリンピックのアメリカ代表で最多得点を記録したライアン・ドナト(写真:ロイター/アフロ)

 1917年のNHL創設時に加盟した「オリジナル6」と呼ばれる名門で、7季前に6度目のチャンピオンに輝いたチームと言えば、 ボストン ブルーインズ

 スタンレーカップを勝ち取った翌々年(2013-14シーズン)にもファイナルまで勝ち上がったものの、ここ3季は一度しかプレーオフに進めずにいます。

 しかし、今季は一転して好調に転じ、イースタンカンファレンスでは、首位を快走するタンパベイ ライトニングに続いて、2チーム目のプレーオフ進出決定も間近です。

▼金メダリストよりも大きな声援

 そのボストンが、昨夜(現地時間)行われたTDガーデンでのホームゲームに、ピョンチャン(平昌)オリンピックで優勝したアメリカ女子代表メンバーのうち、ボストンを含めたニューイングランド地区在住の金メダリストをスタンドに招待しました。

 ボストン近郊のエリアは、アメリカでもホッケーの盛んな場所とあって、多くのファンが祝福していましたが、金メダリストにも増して大きな声援を浴びていたのは、ライアン・ドナト(FW・21歳)でした。

 

▼平昌オリンピックの得点源

 女子代表と違って、金メダルには手が届きませんでしたが、ドナトもピョンチャン オリンピックのアメリカ代表メンバー。

 現役選手こそいなかったものの、NHLでのプレー歴を誇るプレーヤーが揃う中で得点源として孤軍奮闘し、アメリカが記録した全11得点のうち、ドナトは「5ゴール」を記録。

 アメリカの トニー・グラナトヘッドコーチ(元コロラド アバランチ ヘッドコーチ・HC)も、高く評価していたプレーヤーです。

▼ハーバード大学のエース

 オリンピックに出場したと言っても、ドナトはプロ選手ではなく、ハーバード大学の学生。

 元NHL選手で、アルベールビル オリンピックにも出場した父親のテッド(48歳)がHCを務めている名門校のアイスホッケーチームで大黒柱の働きを見せ、巧みなスティックワークとスピードを武器に試合数を上回るポイント(ゴールとアシストの合計)をマーク(白#16)

 所属するカンファレンスのMVPを手にしただけでなく、今季のホービーベーカー(NCAAの最優秀選手)賞のファイナリスト(最終候補)に名前を連ねるほどの活躍を見せました。

▼卒業を待たずボストンと契約

 このような活躍を受けてアプローチを試みたのが、他ならぬボストンでした。

 というのも、ドナトはボストンの生まれとあって、小さい頃からブルーインズの大ファン(写真左)

キャプテンも務めたジョー・ソーントン(右・現サンノゼシャークス)とドナト(Courtesy:@mcdougal77)
キャプテンも務めたジョー・ソーントン(右・現サンノゼシャークス)とドナト(Courtesy:@mcdougal77)

 地元出身のヒーロー候補を逃すな!とばかり、高校時代にドラフト2巡目(2014年全体56番目)で指名。

 一昨日に大学卒業を待たずFA契約(2年間のエントリーレベル契約)を結ぶと、すぐさま一夜明けた昨日の試合のメンバーに、ドナトをエントリーしたのです。 

▼デビュー戦で初ゴール

 ホームアリーナのTDガーデンでのデビュー戦に臨んだドナトは、「夢のような気がして(試合前に氷上で行うウォームアップでも)身体を十分に温めることができなかった」と言いながら、自慢のスピードで相手ゴールへ攻め続け、初ゴールに加えて2つのアシストをマーク。

 

 試合はオーバータイムの末に敗れてしまいましたが、ブルース・キャシディHCから、「シュートを打つという気持ちが満ちていた。いい働きをしてくれた」との称賛を受けたほど、見事なNHLデビューを飾りました。

▼ボストンの救世主になれるか!?

 レギュラーシーズンは終盤戦に差し掛かっていますが、ボストンはNHLトップの身長を誇る(2メートル6センチ)キャプテンの ズデノ・チャラ(DF・41歳)だけでなく、先月末にトレードで獲得した リック・ナッシュ(FW・33歳)に、ディフェンシブな働きにも長ける パトリス・バージュロン(FW・32歳)など、主力FWを中心にケガ人が続出。

 ドナトは、このような苦しい台所事情を救うボストンの救世主になれるか!?

 ハーバード大出身の21歳のルーキーは、ファンの大きな期待を背にプレーをしていきます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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