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【NHL】現役最長830試合連続出場!2007年のデビューから一度も休まなかった男が欠場する理由は?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アンドリュー・コグリアーノ(Courtesy:@AnaDucksHistory)

 アイスホッケーの醍醐味は、目まぐるしく攻守が入れ替わるスピード感とともに、「氷上の格闘技」と称されるほどの激しいコンタクトプレーが挙げられます。

 それだけに、選手にとって小さな怪我は日常茶飯事。

 リンクの周りをボードとオーバーフェンス(透明なボード部分)で囲まれていることも手伝って、ボード際でのプレーやボディチェックで、長期離脱を強いられるほどの大きな怪我に遭う選手も少なくありません。

▼バイウィークが選手を助けた

 半年以上にわたって、4つのタイムゾーン(各チームのホームアリーナがある都市)に及ぶ北米各地を巡りながら、レギュラーシーズンだけで82試合を戦うとあって、「全試合出場」は評価に値します。

 それだけに、ゴール数やポイント数(ゴールとアシストの合計)などの成績とともに、出場試合数もボーナスの項目に含まれている選手も少なくありません。

 昨季のレギュラーシーズンを振り返ると、30チーム(ベガスゴールデンナイツ加盟前)合わせて「888人」が試合に出場しましたが、そのうち全試合出場した選手は「99人」を数え、出場全選手のうち「11%」がフル出場しました。

 もっともこれは、NHLと選手会との労使交渉によって選手会側が主張した「バイウィーク(くわしくは昨年3月10日に配信した当サイトの記事を参照)=レギュラーシーズン中の連続5日以上の休養日」が設けられた影響が、少なからずあったようで、数字で比較してみると、バイウィーク導入前の一昨季は、

試合に出場した選手数「898人」 → うち全試合出場「85人/9.5%」

 その前年(3季前)を見ても、

試合に出場した選手数「882人」 → うち全試合出場「85人/9.6%」

 このように、半年余りに及ぶレギュラーシーズンに設けられたバイウィークは、選手たちを助けたのは明らかです。

▼氷上の鉄人

 しかし、バイウィークが導入されるよりも、はるか前に大記録を打ち立てた選手がいます。

 それは、ダグ・ジャービス(62歳・現バンクーバーカナックス アシスタントコーチ)です。

ダグ・ジャービス(Courtesy:@ballecourbe)
ダグ・ジャービス(Courtesy:@ballecourbe)

 1975年のドラフトでトロントメイプルリーフスから2巡目(全体24位)指名されたものの、NHLデビューを飾る前にモントリオールカナディアンズへトレードされたジャービス。

 新天地に移り、1975年10月8日に行われたロサンゼルスキングスとの開幕戦に出場したのを皮切りに、ワシントンキャピタルズ、ハートフォードホエラーズ(現カロライナハリケーンズ)と3チームのユニフォームに袖を通し、足掛け13季にわたって「964試合連続出場」を達成しました。

 それまでの記録(915試合)を41試合上回るNHL記録を樹立したのに加え、モントリオール在籍時には、ディフェンシブな役割にも長けたCF(センターフォワード)として、4連覇に貢献。

 1987年10月10日のニューヨークレンジャーズとの試合後に、マイナーリーグ(AHL)降格を言い渡され、この年をもって現役を退きましたが、積み重ねた「964試合連続出場」は、未だに破られていないNHLの金字塔。

 まさしく「氷上の鉄人」と呼ぶべきレジェンドです。

▼現代の氷上の鉄人は?

 ジャービスが引退してから30年が経ち、選手のコンディション管理やトレーニング方法。さらにはロードゲームへの移動時間など、大きな改善が見られるにもかかわらず、未だにジャービスの金字塔は塗り替えられずにいました。

 ところが、ここへ来て新たな金字塔を打ち立てる期待がかかる選手が出現!

 アンドリュー・コグリアーノ(アナハイムダックスFW・30歳)です。

アンドリュー・コグリアーノ(Courtesy:@prohockeyrumors)
アンドリュー・コグリアーノ(Courtesy:@prohockeyrumors)

 ドラフト1巡目(全体25位)指名を受けたエドモントンオイラーズで、4季にわたってプレーしたあと、トレードによってアナハイムダックスへ移籍したコグリアーノは、一昨日のロサンゼルスキングス戦まで、1試合たりとも休むことなく、デビュー以来「830試合連続出場」!

 現時点で「歴代4位」となる連続出場記録を続けているコグリアーノは、歴代3位のスティーブ・ラーマ―(元ニューヨークレンジャーズFW)と肩を並べるまで「あと54試合」

 ジャービスが打ち立てた金字塔にも「あと134試合」と迫り、再来季の序盤にはコグリアーノの記録更新の期待が集まっていました。

▼コグリアーノが欠場!その理由は?

 ところがコグリアーノは、今日デンバーで行われるコロラドアバランチ戦に欠場することになりました。

 「ケガをしてしまったの?」

 「それとも大きなアクシデント?」

 こんな声が聞こえてきそうですが、コグリアーノ(白#7)が欠場するに至ったのは、このプレーが理由なのです。

 相手選手の頭部へのヒットによって、NHLから「2試合出場停止」の決定が下され、連続試合出場が「830試合」でストップ。

 身から出た錆びと言えばそれまでですが、アナハイムのファンにとっては残念な知らせとなってしまいました・・・。

▼記録更新は2021年秋に

 尚、これで連続試合出場記録保持者は、フロリダパンサーズのキース・ヤンデル(DF・31歳)の「676試合」となりますが、今後も全試合出場を続けたとしても、記録更新は(現行の試合数のままであれば)2021年秋の見込み。

 あらためてジャービスの金字塔が、いかに偉大なのかを痛感させられます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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