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【NHL】カナダの首相の願いを叶えられるのは、ナンバーワンのカナダ人でなく、2番目のアメリカ人!?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
モントリオール カナディアンズの大ファンで知られるカナダのトルドー首相(写真:ロイター/アフロ)

先月12日(現地時間)に始まった「NHLのプレーオフ」は、2つのラウンドを戦い終え、先週末にカンファレンス ファイナル(3rdラウンド)が始まりました。

16チームの中から勝ち上がってきた4強による戦いは、

【イースタン】ピッツバーグ ペンギンズvsオタワ セネターズ

【ウエスタン】アナハイム ダックスvsナッシュビル プレデターズ

の顔合わせですが、東西両カンファレンスとも、過去に優勝経験のあるチーム(上記で先に名前を記したチーム)と初優勝を狙うチームが激突し、初戦から激しい攻防が繰り広げられています。

そんな戦いの行方を注目し続けているのが、カナダのジャスティン・トルドー首相です。

▼カナダの首相はモントリオールの大ファン!

アイスホッケー大国の首相とあって、中国の李克強首相が訪れた際にも、外交ツールにアイスホッケーを取り入れたトルドー首相。

まだ自由党の党首だった頃から、何度もアリーナを訪れて、試合を観戦している姿が見られましたが、なかでもお気に入りなのは、モントリオール カナディアンズ

トルドー首相自身も公言するほどの大ファンで、チームのジャージを着て、家族と一緒にモントリオールを応援する姿が、何度も見られます。

▼首相の声援に応えられずに敗退

このような熱い想いを受けていたにもかかわらず、モントリオールは、最初のラウンドで顔を合わせたニューヨーク レンジャーズの前に敗れ去り(2勝4敗)、トルドー首相の声援に応えられませんでした。

モントリオールのみならず、カナダをフランチャイズとする7チームが、全てレギュラーシーズンで敗退を喫した昨季から転じて、今季のプレーオフには5チームも勝ち上がったと言うのに、トロント メイプルリーフス、カルガリー フレイムス、エドモントン オイラーズと、既に4チームが敗退。

カナダのチームが、24季ぶりにスタンレーカップ(優勝チームに渡されるトロフィー)を手にする可能性を残しているのは、オタワ セネターズだけとなってしまいました。

▼新たな所信表明

大ファンのモントリオールをはじめ、カナダのチームが次々に敗れてしまったあと、トルドー首相はカンファレンス ファイナルが始まる日に公務でトロントへ。

同行したメディアからの取材に応じたトルドー首相の口からは、このような発言が飛び出しました!

「カナダの全ての人たちが、カナダのチームがスタンレーカップを勝ち取ることを望んでいると思う。これから(NHLのプレーオフが終わるまでの)数週間、私はモントリオールファンであることを忘れて、(唯一勝ち残っている)オタワを応援する」

日本での出来事を挙げると「皇太子殿下と小和田雅子さんのご結婚の儀」が執り行われた1993年6月9日に、モントリオールが優勝したのを最後に、カナダのチームは優勝から遠ざかっています。

それだけに「今季こそスタンレーカップを勝ち取って欲しい」と切望し、アイスホッケー大国の首相ならではの ”所信” を表明したのです。

▼オタワが先勝

レギュラーシーズンの成績が劣るため、ピッツバーグ ペンギンズのホームアリーナに乗り込んで、第1戦に挑んだオタワは、ペナルティキリング(ペナルティをしてプレーヤーの数が少なくなった状態)が5回もありながら、癌を患う最愛の妻のために! と意気込むGKのクレイグ・アンダーソン中心にピンチを切り抜け、オーバータイムに及んだ試合を 2-1 のスコアで制して、サヨナラ勝ちを納めました !!

27本のシュートを阻んで、ファーストスターに輝いたGKのアンダーソンも称えられますが、それにも増して活躍が際立っていたのが、接戦に終止符を打つゴールを決めたFWのボビー・ライアン

▼トルドー首相の願いを叶えるのは、2番目のアメリカ人!?

ニューヨーク レンジャーズとの2ndラウンドでは、6試合無得点ながら、大事な初戦で名誉挽回の決勝点を上げたライアンは、対戦相手のピッツバーグのキャプテンを務めるシドニー・クロスビーと同じ1987年生まれで、ドラフト指名されたのも同じ2005年。

しかも、カナダ出身のクロスビーが全体1位指名(中央)。

続く2番目の指名を受けたのがアメリカ生まれのライアン(左)という二人。

昨秋のワールドカップでMVPに輝いたり、オリンピックでカナダ代表のキャプテンを担い世界一に輝いたクロスビーの目の前で、アメリカ生まれのライアンが活躍してオタワが勝利。

この結果を知って、ひょっとしたらトルドー首相は、少し複雑だったかも!?

しかしライアンも、バンクーバーオリンピックの代表や、オールスターゲームのメンバーに選ばれるなど、誰もが一目を置くオフェンス力を持つFW。

アナハイムが初優勝した10季前は、NHLにデビューする前年だったため、スタンレーカップ獲得へのモチベーションは高いのは明らか。

トレードされて3季前からプレーしているオタワを初めての頂点に導こうと、意欲満々の様子です。

こうして見ていくと、ドラフトでナンバーワンの指名を受けたクロスビーよりも、2番目に指名されたアメリカ生まれのライアンのほうが、トルドー首相の願いを叶えられる立場に。

しかも、クロスビーには、「ワールドカップのMVPは、その後のキャリアで一度も優勝できずに引退していった」という、ありがたくない前例がつきまといます・・・。

どうやらカナダのトルドー首相の願いは、ドラフトでナンバーワンに評価されたカナダ人でなく、2番目のアメリカ人に託したほうが良さそうです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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