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東北をアジアの食材供給基地にしよう!

岩佐大輝起業家/サーファー

■被災地に立ち込める暗雲の正体

震災から3年がたち、東北、特に被災地ではボランティアツアーなどが一段落し、震災直後のようなソワソワ感がなくなりつつある。その代り、ダンプや重機が所狭しと走りまわる少し乾燥した風景。震災の教訓は決して忘れてはならないが、出来事自体の風化はもちろん避けられない。大量の復興マネーがかろうじて経済を支えているように見えるが、それもあと数年。善悪の問題ではなく、カネの切れ目が縁の切れ目になる場合も多いだろう。そんな中、自走自立の強いビジネス、そして経済がなくては、東北の未来はちょっと残念なことになるだろう。

■総花的でだらだらとした投資を今すぐやめよう!

批判ではなく提案を!ということで、一点突破主義で産業を光り輝かせるために私たちは何をしたらいいかを考えてみる。まず、東北が輝き続けるためには総花的でだらだらとした投資を今すぐにやめて、戦略的につまり究極的な産業の選択と集中を行う必要がある。これにはひどい痛みが伴うが、致し方ない。

その理由は明確だ。プレイヤーが圧倒的に不足しているからだ。国や自治体から委託を受けた研究機関が机上でプランニングした東北の未来プランに、殆ど現実味を見出せないのは、多くの紙にその産業を担うプレイヤーの顔が見えてこないからだ。例えば、人口が震災後から20パーセントも流出している町で、「観光で街づくりをしよう!」なんてことが平気で書かれている。考えても見てほしい。

自分の町の住民すら、つなぎとめておけない町に、なんでよそから人を呼んでこれるんだろう。

■結局、強い産業基盤に支えられた雇用が伴わなくては町からは誰もいなくなる

金をどれだけばらまいても、町にそわそわ感が戻ってこないのは、とんがった産業が育っていないからだ。定常的な雇用も育たない。復興需要で働き手は集まっても、その家族がついてこないのはどういうことか。働き手もそこを定常的な生活の場所として選んでいないからだ。緊急的な雇用が一過性であることは誰にでもわかる。

厳しいようだが、私たち東北人はあの大震災をも、そろそろ外部環境の一つとして冷徹に捉え、産業を作っていくことに舵を切らなければ、次の3年後は絶望的な衰退が待っている。

99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る
99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る

昨日、『99%の絶望の中に1%のチャンスは実る』(ダイヤモンド社)を上梓した。この本にはどうやって下り坂にある町づくりを再び盛り上げられるか、一点突破の戦略構築方法を書いた。これはすべて私自身の経験に基づいた真実のストーリーだ。これから地域活性化に取り組む都会のビジネスパーソン、既に地方で取り組んでいるプレーヤーの皆さんに是非読んでもらいたい。何らかのヒントになるかもしれない。

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■東北をアジアの食材供給基地にしよう

さて、そんな中でいくつかの希望が発掘されたとすれば、しかも震災前よりも注目度が高まったものは何かといえば、それは間違いなく農業・漁業などいわゆる一次産業だ。しかも特徴は超ニッチだけど、つぶ揃い。個々はすごい競争力をもったものが勃興してきている。三陸の漁業、宮城南部の大規模イチゴ団地から出たラグジュアリーイチゴなどはその典型例だ。ただし、ここでも一部で残念な現象が起きている。オランダ型の大規模施設園芸をただまねればいいという発想だ。大規模集約化だけに答えがあるような論調さえある。これは間違っている。

次回以降、東北そして日本が目指すべき農業の姿を書いていく。

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起業家/サーファー

1977年、宮城県山元町生まれ。2002年、大学在学中にIT起業。2011年の東日本大震災後は、壊滅的な被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。アグリテックを軸とした「地方の再創造」をライフワークとするようになる。農業ビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。 著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)などがある。人生のテーマは「旅するように暮らそう」。趣味はサーフィンとキックボクシング。

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