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ハワイに日本人が“戻らない”!円安・物価高騰だけが理由なのか?

伊藤寧章ハワイ発「Made in Hawaii TV」プロデューサー
(撮影:すべて筆者)

 2020年、ロックダウン直後に書いたハワイの現状(過去記事2020/4/15参照)を読むと、あの頃の不安な気持ちを思い出すとともに、遠い過去のような気もします。なぜなら今、ハワイはアメリカ本土からのツーリストの数が増え、ワイキキは以前のような賑わいを取り戻しているからです。マスクをしている人をたまに見かけることもありますが、マスク使用の有無については話題になることもありません。

規制緩和後の予想に反する現状

 現在、日本からの渡航も規制がなくなり、ワクチン接種の有無にかかわらず以前と同じように旅行できるはずですが、日本からの渡航者数はパンデミック直前2019年の30%程度。今後徐々に増えて、今年の末には40%ほどになると予想されています。

 「日米の入国規制がなくなったら、日本からハワイへの渡航者数は元に戻るのでは」と言われていましたが、円安の影響やアメリカの物価高騰も重なって、なかなか戻っていないのが現状です。

 日本のテレビ番組では、アメリカのインフレに起因するハワイの物価高騰と、それに円安がさらに拍車をかけている様子が伝えられることも多いようですが、正直「もうその話題はお腹いっぱい」という方も多いのでは。自身もテレビ番組を制作しているので、そういった内容のほうが視聴者の興味を引くというのも十分に理解しています。

 しかし、ハワイは観光ビジネスが大きな産業。“そこ”ばかりを伝えられると複雑な気持ちになる人もたくさんいます。普段、スモールビジネスと呼ばれる個人経営のお店を撮影することも多く、皆さんの「日本の人たちに早く戻ってきてほしい」という声を聞いているだけに、余計にそう思ってしまうのかもしれません。

日本からの渡航者数が最も多かった年の為替レートって?

 実際、日本人が以前のようにハワイに戻っていない理由は、円安とハワイの高い物価のせいなのでしょうか?そもそも、いつと比べて円が安いのでしょう?

 パンデミック直前の2019年、日本からの渡航者数は約158万人で、1ドルは109円でした。現在(2023年6月22日)は141円なので32円の円安ということになります。

 日本からの渡航者数が一番多かった年は、1997年で約220万人。当時のレートは1ドル120円。一番円高だった年は2012年で1ドル79円。しかし、その年は東日本大震災の翌年ということもあったのか、渡航者数はそこまで増えず約147万人でした。

 1980年代半ばまでは、1ドルが250円近かったにもかかわらず、70〜80万人が日本からハワイへ。これは、今年予想されている渡航者数よりも多いのです。

 このように数字だけで見ると、為替レートだけではなく、自然災害や日本の景気も大きく影響していることが分かります。先日発表された電気料金の値上げや夏の台風シーズンも重なると、ハワイ渡航者が増えるという要因がなかなか見つからない気がしてきました。

円安・物価高騰の中、わざわざハワイを選ぶ日本人も

 ハワイの物価は確かに上がっていますが、島ということもあって商品に輸送代が含まれるため、物価の高さは今に始まったことではありません。とはいえ、実際徐々に上がっていると日々感じていて、どうしようもないというのが正直なところです。

 しかし、円安で物価も高く渡航者数が減っている中、わざわざハワイへ旅行する人がいるのも事実。ハワイは、高い代金を支払う価値がある場所なのでしょうか?

 ワイキキでインタビューをさせてもらうと、お答えいただいた方全員が「ハワイ滞在に満足」という回答で、100%の満足度という結果でした。パンデミック中に貯まったクレジットカードのマイルを利用したり、ホテルで自炊の回数を増やしたりと、工夫されつつも皆さんハワイを楽しまれていました。

 そして何より、ハワイで心地よい風を感じたり美しい海を見たりすることは、お金がかかりません。自身の周りでも、一度ハワイへ来た方はハワイを好きになり、何度も渡航される方が多いです。

リピーターの平均年齢は右肩上がり

 ハワイ渡航者のリピーター率は約80%(2022年)で、平均年齢は徐々に上がって50歳前後。ということは逆に、若い人で初めてハワイに行く人が減っているということでもあります。若い人たちが海外旅行をしなくなったのか、ハワイに魅力を感じないのかは分かりませんが、少し寂しい気もします。

 「ワイキキは観光地すぎる」「ワイキキは本当のハワイではない」などと言われたりしますが、日本語と英語が聞こえる賑やかな観光地ワイキキは、ハワイの自然豊かなエリアと同じくらい“本当のハワイ”の一つで、ユニークで面白い場所だと思います。またワイキキに以前のようにたくさんの日本の人達が楽しそうに行き来している様子を早く見たいと思います。

 日本から旅行で行くハワイは、非日常。お金と時間をどちらも使うことになりますが、工夫次第では行けないこともないし、それに勝る満足度や幸福度が得られるかもしれません。

 これから夏真っ盛りになるハワイ。個人的に、夏のハワイは海や空の色が一段と鮮やかな青になって大好きな季節です。日差しは強いですが、木陰に入れば風が涼しく蒸し暑いということはありません。渡航規制がなくなった今、是非ハワイの風の心地よさを感じてほしいと思います。もちろん若い人たちにも。

ハワイ発「Made in Hawaii TV」プロデューサー

東京都出身。在ハワイ26年。高校卒業後ハワイに移住し、Hawaii Pacific Universityを2003年に卒業。2005年アパレル会社を設立。2014年に広告代理店・TV制作会社「A.P.O. Entertainment Production」を設立し、日本全国のケーブルテレビ1600万世帯、ハワイ内90以上のホテルの38500客室、日本-ハワイ間のハワイアン航空機内全便で随時放送される「Made in Hawaii TV」の制作・運営を行なっている。2022には「株式会社MOA」を設立しハワイ体験プラットフォーム「ALOCO・アロコ」運営。情報&体験で日本とハワイをつなぐ。

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