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新型コロナウイルスの影響によるハワイの現状~不安やストレスを超えてサポートローカルの高まり

伊藤寧章ハワイ発「Made in Hawaii TV」プロデューサー
普段は多くの観光客で賑わうワイキキのメインストリート、カラカウア通り(筆者撮影)

 世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスの影響で、ハワイも現在、米国の他の州同様、外出禁止令が継続されています。

あっという間に閉ざされてしまった

 3月16日にハワイ内で渡航歴のない初めてのウイルス陽性患者が報告されてから、ハワイ州への訪問を控えるようにとの要請に始まり、バーやクラブの閉鎖、レストランでの飲食の禁止、ハワイに到着する住民、旅行者全員に対して14日間の自己隔離、25日から4月30日までの外出を著しく制限する事実上の外出禁止令、ハワイ州の離島間の移動者への14日間の自己隔離など、わずか1週間でハワイはすっかり閉ざされてしまいました。

 現在はハワイと日本を結ぶ直行便も臨時運休中となっています。

  

 ハワイの感染者数は4島(オアフ島、マウイ島、ハワイ島、カウアイ島)で511人、オアフ島だけで358人になっています(ハワイ時間4月14日時点)。

 ハワイでは観光業に携わる人が多いため、島が閉鎖されてしまうと、当然のことながら大きな打撃を受けます。これまでの失業保険申請の件数は約21万件です。これはハワイの労働人口の30%以上に相当します。

 

 普段、ハワイでTV番組の撮影をしていますが、ここまで人がいない街中やビーチを見たことはありません。いつもは観光客や地元の人で賑わうワイキキのメインストリートのカラカウア通りでさえ、人の姿が消え、ひっそりと静まりかえっています。こんな光景は、9.11や3.11の後の旅行客の減ったハワイでも見ることはありませんでした。

 この映像も、メディア業務は必須労働と認められるため、ハワイ州、ホノルル市の許可のもとでガイドラインに従って撮影を行っています。

小さな島だからこそ…

 世界各国での感染拡大の様子を見て、島であるハワイはいち早くロックダウンをした方がいいと思う人も多かったかもしれません。

 もちろんそんなことをすればハワイの基幹産業への打撃は計り知れませんが、小さな島だからこそ、感染者数の増加による医療崩壊を防がねばならないという共通認識もあったと思います。当初は、「自分たちの生活はどうなるのか…」、「どんな保障を受けられるのか…」、そんなことを訴える時間もないままにハワイは閉ざされてしまった、という思いも強かったのも事実です。

 

 でも、徹底的に感染を防ぐことが一日でも早く元の生活に戻れる唯一の方法であることは、誰もが分かっていることで、徐々に、人々も、外出できないストレスの意識から、医療従事者を含むエッセンシャルワーカー(社会生活を支える仕事に従事している人たち)のおかげで家に安全にいられるという意識へと変化していきました。

 温暖な気候と美しい自然の中で生活するハワイの人たちは、おおらかで自由な性格の人が多いです。外出禁止令を課されることは、もしかすると、規律正しい日本人より、その苦痛が大きいと思います。違反する人のニュースも一部ありますが、実際には皆、本当に禁止令を遵守していると感じます。

アロハスピリットを痛感

 店内での営業ができない飲食業界では、テイクアウトやデリバリーを行っている店も少なくありません。こんな時だからこそ、サポートローカル、ハワイの地元産業の手助けをしようという意識がさらに高まっています。

 助け合いの精神はとてもハワイらしく、スーパーが高齢者専用に営業時間を設ける、ハワイの農家からデリバリーする、銀行がレストランのテイクアウト代金の半額を負担するキャンペーンを行う、ホテルが医療従事者らに休息と家族への感染を防ぐための部屋を無償提供するなど、自分たちの今後の生活が不安にもかかわらず、とにかく皆が今、助け合うことを考える姿勢には、アロハスピリットの存在をひしひしと感じます。

 

 それは、一日でも早く元のハワイを取り戻したい、という強い気持ちの表れでもあると思います。この島の観光業を復活させ、以前の活気あるハワイが戻ってくるには、まずは、島を訪れる人たちを迎え入れる自分たちが健全な状態にならなければならない、という必死の思いがそこにはあるからなんです。

デューク・カハナモク像から見るワイキキビーチにも人影はない(筆者撮影)
デューク・カハナモク像から見るワイキキビーチにも人影はない(筆者撮影)

美しさは変わらない

 今日もハワイは変わらない美しさを私たちに見せてくれています。交通量が減り、人が減ったハワイはとても穏やかです。

 元どおりの経済活動ができるのは現段階ではいつになるか分かりませんが、でもまたハワイが世界中から人を迎え入れる時が必ずやってきます。

 その時はきっとまた、一段と美しいハワイが人々を癒してくれるだろうと思います。

ハワイ発「Made in Hawaii TV」プロデューサー

東京都出身。在ハワイ26年。高校卒業後ハワイに移住し、Hawaii Pacific Universityを2003年に卒業。2005年アパレル会社を設立。2014年に広告代理店・TV制作会社「A.P.O. Entertainment Production」を設立し、日本全国のケーブルテレビ1600万世帯、ハワイ内90以上のホテルの38500客室、日本-ハワイ間のハワイアン航空機内全便で随時放送される「Made in Hawaii TV」の制作・運営を行なっている。2022には「株式会社MOA」を設立しハワイ体験プラットフォーム「ALOCO・アロコ」運営。情報&体験で日本とハワイをつなぐ。

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