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濃厚接触者でも条件付きで受験できる~2023年度共通テストの感染症対策

石渡嶺司大学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

◆コロナ禍3年目の共通テスト

コロナ禍での3度目となる大学入学共通テスト(以下「共通テスト」と略)が目前に迫りました。本年度の感染症対策についてまとめました。

共通テストも3年目となりました。

今年は今月1月14日(土曜)、15日(日曜)に実施されます。

共通テストの前身となるセンター試験は2020年まで。同年はコロナ禍の影響がありませんでした。単なる偶然ですが、共通テストは開始1年目からコロナ禍の影響を受け、感染症対策についても講じられてきました。

この感染症対策が今年は大きく変わっています。

本稿では、共通テストを運営する大学入試センターに取材、その回答を元に構成しています。以下、同センターの回答は「(大学入試センター)」と表記します。

※なお、大学入試センターが公表している「受験上の注意」や取材時の回答のうち、本稿では次の文言を以下のように表記しています。

・初期スクリーニング:自治体又は自治体から指示された医療機関が実施するPCR等の検査(行政検査)

・文科省ガイドライン:文部科学省「令和5年度大学入学者選抜に係る新型コロナウイルス感染症に対応した試験実施のガイドライン」(令和4年6月3日付け大学入学者選抜協議会決定、令和4年 12 月7日改定)

・問合せ大学:受験票に記載の「問合せ大学」

◆チェックリストで「37.5度」が「38.0度」に~主な変更点

2022年度から2023年度の主な変更点は3点あります。

1.無症状の濃厚接触者の受験要件の変更

2.チェックリストの変更

3.別室受験の整理

1点目「無症状の濃厚接触者の受験要件の変更」ですが、「自治体の判断により、濃厚接触者の特定を含む積極的疫学調査を行わない場合等は、ガイドラインの整理を踏まえ、対応することをホームページに掲載しました」(大学入試センター)。

具体的には、本稿のチャートシートにあるように、初期スクリーニングを受けていてもいなくても、条件を満たして事前連絡(1月13日・午前10時まで)をしていれば、受験可となりました。

濃厚接触者と認定され、初期スクリーニングを実施している場合の条件は下記4点を満たすことです。

ア: 行政検査(初期スクリーニング)の結果、陰性であること

イ:受験当日も無症状であること

ウ: 公共の交通機関(電車、バス、タクシー、航空機(国内線)、旅客船等)を利用せず、かつ、人が密集する場所を避けて試験場に行くこと

エ: 終日、別室で受験すること

一方、濃厚接触者と認定され、初期スクリーニングを実施していない場合の条件はイ~エの3点を満たすことです。

ただし、いずれの場合であっても、タクシーについては2023年1月5日に文部科学省が「利用車両が特定できるよう流しのタクシーは利用せず、タクシーやハイヤーの事業者に予約することを認める」と利用を認めました。

2点目「チェックリストの変更」ですが、試験当日に体調不良となった場合、「受験上の注意」で「健康状態チェックリスト」を設けています。

今年、2023年度はA欄・B欄ともに3点あります。

「A欄で1項目以上、またはB欄で2項目以上、該当する場合は受験できません」(大学入試センター)。

A欄

高熱の症状がある(38.0 度以上)

息苦しさ(呼吸困難)がある

強いだるさ(倦怠感)がある

B 欄

発熱の症状がある(37.5 度以上 38.0 度未満)

咳の症状がある

咽頭痛がある

2022年度はA欄の高熱が「37.5度以上」だったものが「38.0度以上」と変更となり、B欄は2022年度にはなかった発熱症状の記載が追加となっています。

さらに、B欄は2022年度には、味覚障害、嗅覚障害、下痢、濃厚接触者等の4項目が削除となっています。

3点目「別室受験の整理」ですが、

「2022年度はオミクロン株への感染が確定した患者等の濃厚接触者が受験する別室については他の無症状濃厚接触者とは別にすることが望ましいとされていましたが、2023年度では、無症状の濃厚接触者は株の種類を問わず、同じ別室とすることに変更しています。これはガイドラインの変更を踏まえた改正です」(大学入試センター)。

◆試験前の体調管理はどうすればいいか

それでは、試験前の体調管理はどうすればいいでしょうか。

大学入試センターは次のように回答しています。

「 日頃から、『三つの密』の回避や、『人と人との距離の確保』、『マスクの着用』、『手洗いなどの手指衛生』、『換気』をはじめとした基本的な感染症対策を徹底するとともに、バランスのとれた食事、適度な運動、休養、睡眠など、体調管理を心がけてください」

「試験日の 1 週間程度前から、朝などに体温測定を行い、『受験上の注意』にある『健康観察記録』を記入の上、体調の変化の有無を確認してください」

「 試験日の 1 週間程度前から発熱・咳等の症状があるなど、体調不良の場合は、あらかじめ医療機関を受診し、適切な治療を受けてください」

◆試験当日に体調不良となった場合

「発熱・咳等の症状があるなど、体調不良の場合は、無理して受験せず、追試験の受験を申請してください」(大学入試センター)。

具体的には、上記の「健康状態チェックリスト」A欄・B欄のうち、A欄で1項目以上、またはB欄で2項目以上、該当する場合は受験不可とのこと。

◆感染または濃厚接触者となった場合

新型コロナに感染して、試験当日も療養期間となった場合は追試験申請が必要となります。

濃厚接触者となった場合、条件付き(かつ、事前連絡が必要)で受験が可能となります。条件に当てはまらない、または事前連絡がない場合は追試験申請となります。

詳しくはチャート表でご確認ください。

「追試験の申請は本人または代理人が問合せ大学に電話連絡の上で、申請受け付け期間内に受験票と医師の診断書等を持参して申請してください。なお、『医師の診断書』は治療期間が明記されたものになりますが、医療機関を受診した際の領収証や診断明細書など『医療機関を受診したことが分かる書類』についても例外的に可能としています」(大学入試センター)。

申請受け付け期間は次の通りです。

・1 月 10 日から 1 月 13 日まで 9:00~17:00

・1 日目 (1 月 14 日) 7:30~18:10

・2 日目 (1 月 15 日) 7:30~17:50

「申請受け付けの時間内に本人・代理人が行けない場合は申請受け付け時間内に問合せ大学に電話で状況を説明の上、指示を受けてください」(大学入試センター)。

◆濃厚接触者で無症状だった場合

濃厚接触者で無症状だった場合、条件付きで受験が可能となります。

初期スクリーニングを実施している場合は、その際、問合せ大学に電話連絡した上で以下の6点、志願者本人が自署した書面をメール・ファックス等で提出する必要があります。

・ 試験場コード及び受験番号

・ 氏名

・ 濃厚接触者に該当すると判断した保健所の名称(自治体のホームページ等で濃厚接触者であることを確認した場合は,「自治体名」及び「ホームページ等で確認した旨」を記載 )

・ 保健所から濃厚接触者に該当すると連絡があった日(保健所からの連絡が感染者等から間接的に伝達された場合は、その連絡があった日)

・ 保健所から健康観察期間として不要不急の外出を控えるよう指示されている期間

・ 初期スクリーニング(自治体又は自治体から指示された医療機関が実施するPCR等の検査(行政検査))の結果

※ 初期スクリーニングを実施していない場合は、「初期スクリーニングの結果」に代わって、「自治体の判断により行政検査を実施していない旨の記載(抗原定性検査キットが入手できる場合は、それにより陰性確認を行い、その旨を記載)」が必要です。

「PCR等の検査について、自治体(保健所)から指示されていない医療機関等での検査は、その結果が陰性であっても受験することはできません」(大学入試センター)。

◆無症状の濃厚接触者が追試験を希望する場合

この場合は問合せ大学にまず電話連絡した上で、以下の事項について受験者本人が自署した書面をメール・ファックス等での提出が必要となります。

・ 試験場コード及び受験番号

・ 氏名

・ 濃厚接触者に該当すると判断した保健所の名称(自治体のホームページ等で濃厚接触者であることを確認した場合は,「自治体名」及び「ホームページ等で確認した旨」を記載 )

・ 保健所から濃厚接触者に該当すると連絡があった日(保健所からの連絡が感染者等から間接的に伝達された場合は、その連絡があった日)

・ 保健所から健康観察期間として不要不急の外出を控えるよう指示されている期間

◆当日、体調悪化などで追試験申請などができない場合

試験当日に、自宅または移動中など、試験会場に到着前、体調悪化した場合はどうでしょうか。

「無理して受験せず、追試験の受験申請をお願いしています」(大学入試センター)。

特に、健康状態チェックリストのA欄1項目以上、B欄2項目以上に該当する場合は受験できません。

追試験申請は本人ではなく、代理人でも可能です。

ただし、

「追試験の受験申請に当たっては、申請受付時間経過後はいかなる理由があっても追試験の受験申請をすることはできません」(大学入試センター)

◆試験場到着後に体調不良となった場合

このケースに当てはまる受験生もいるでしょう。

「試験場に到着してから発熱・咳等の症状があるなど、体調不良になった場合は、監督者や試験場の担当者に申し出て、指示に従ってください。たとえば、試験時間中に、明らかに激しい咳を何度もしているなど、他の受験者に影響があると監督者が判断した場合には、咳をしている受験者の受験を中断して休養室等へ移動してもらい、症状等の確認後、追試験の受験を申請してもらうことがあります」(大学入試センター)。

もし、体調不良となった場合は周囲の受験生に配慮する、という点でも速やかに監督者に申し出た方がいいでしょう。

「大学入試センターでは、受験者のみなさんが安心して試験に臨めるよう、試験を実施する各大学と緊密な連携を図りながら、感染予防対策を徹底した上で、共通テストを実施します。受験者のみなさんは積み上げた努力の成果を十分に発揮できるよう、基本的な感染症対策を徹底するなど、体調管理に十分注意してください。また、今後重要な連絡事項等がある場合は、大学入試センターのホームページにおいて最新の情報を提供しますので、確認してください」(大学入試センター)。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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