コロナで売り手市場から一変 就活は長期化、インターン組と出遅れ組の格差社会へ【#コロナとどう暮らす】

オンライン面接に臨む2021年卒の就活生(写真はイメージ/写真:アフロ)

リーマンショックの影響を受けた2010年卒以来の就職氷河期の予感もある2021卒就活。コロナの影響で急激な冷え込みを見せた現在、事実上の選考と化したインターンシップなどに参加し早々に内定を得ていた学生と、コロナの影響を被り、出遅れた学生の格差社会の様相を呈している。一方で採用スケジュールの後ろ倒しも見られ、就職活動は超・長期化の予感もあり、出遅れ学生にもチャンスはまだまだある。2021年卒就活を概観する。

◆「部活を頑張っていただけなんです」と泣く国立大生

6月1日、2021年卒の就活は選考解禁を迎えました。その翌日、私は西日本の国立大生の就活相談に乗っていました。

いまだに内々定が貰えず、彼は悩んでいました。

「インターンに参加していたゼミの同期は全員、内々定を貰って、もう就活を終えています。僕だけがまだ内々定を貰っていません。それどころか、どこを受ければいいかもよくわからず、空回りしています」

そううなだれるA君。

よくよく話を聞くと、就活を始めたのは今年3月中旬とのこと。3月1日が広報解禁日ですから、それを過ぎてからようやく就活を始めたことになります。

「去年の夏からインターンシップがあることは知っていました。ただ、僕の場合、野球部に所属していて、それで忙しく、インターンシップやセミナーなどは一切参加していませんでした」

A君が不幸だったのは、今年3月に卒業した先輩、B君の話を真に受けすぎていたことでした。

「B先輩は4年生の4月になってからようやく就活を始めました。それでも野球部の活動が認められて、地元銀行に内定したのです。そのB先輩が『就活なんて楽勝。お前らもまず部活をしっかりやれ。就活なんて広報解禁の後でも間に合う』とアドバイスしてくれました。僕もそうかな、と思ってその通りにしたのですが、大間違いでした……」

2019年の合同説明会(石渡撮影)。2019年秋~2020年2月開催のインターンシップ合同説明会に参加できた学生は動きが早い分、内定を得ている
2019年の合同説明会(石渡撮影)。2019年秋~2020年2月開催のインターンシップ合同説明会に参加できた学生は動きが早い分、内定を得ている

もちろん、A君は部活をしっかりやっていて、勉強も忘れていたわけではありません。学生の本分は全うしていた、と言っていいでしょう。

ただ、A君は部活に勉強、そしてアルバイト以外の時間は、ゆっくりと過ごしていました。その間、ちょっとは就活をしておこう、と考えた学生はインターンシップやセミナーに参加しています。

A君もそうした違いで差が出たことをよくわかっていました。

しまいには悔し涙を流すA君をなだめながら、その日の就活相談を終えました。

◆就活進行中に売り手市場から一変した稀にみる年

2021年卒就活は売り手市場ムードだったものが、進行中に一変。一気に氷河期突入となった、歴史的に見ても、相当珍しいパターンです。

2000年代以降をざっくりまとめると、

2000年~2005年:氷河期

2006年~2009年:売り手市場

←リーマンショック(2008年)

2010年~2012年:氷河期

2013年~2020年:売り手市場  

※それぞれ卒業年

前回の就職氷河期の原因であるリーマンショックの影響は2008年秋ごろから出始めました。2009年卒の就活はほぼ終わっていましたが、一部の企業は内定式の前後に内定取り消しを宣告。この内定取り消し騒動が社会問題化したものの、企業側の違法性が高い行為だったため、その影響は一部に留まりました。その結果、2009年卒の就職状況はそれほど悪くなったわけではありませんでした。

一方、2010年卒は2008年10月が広報解禁日。そのため、2010年卒はリーマンショックの影響を大きく受けることになったのです。

広報解禁前に経済危機が起こり、その影響を受けた、という点では2021年卒と2010年卒は同じ、と言えるでしょう。

◆インターン組と出遅れ組の格差社会へ

違いが見えてくるのはインターンシップについてです。

2010年卒の就活事情を振り返ってみるとインターンシップの参加はそれほど多くはありませんでした。広報解禁と同時にセミナーが始まり、その参加から選考につながる就活生が多数を占めていたのです。

一方、2021年卒は、早期に就活を始める学生だと3年生夏休みか秋・冬のインターンシップに参加します。

このインターンシップに参加していたかどうかで就活生の命運は分かれました。

就職情報サイト・リクナビを運営するリクルートキャリアの調査によると、2021年卒は4月1日時点で内定を得ている率は31.3%(前年比プラス9.8ポイント)。

これはその大半がインターンシップに参加した、いわゆるインターン組です。

企業が主催するインターンシップは本来、数日期間を設けた就業体験が想定されていますが、会社説明会やセミナーとそう大差ないものが年々増えており、「名ばかりインターン」というほとんど選考の一部と考えても差し支えないものも増えています。通常の就業体験のインターンシップには参加していなくても1日タイプや就活支援型のもの、あるいはセミナーや大学等が主催する就活イベントに参加していた学生はコロナショックの影響を受けることなく、その多くがすでに内々定を得ています。

九州地方の国立大生、Cさんは3年生の秋ごろから就活を開始。3年生の12月頃までにインターンシップやセミナー、あるいは学生有志が企画した模擬就活イベントにも参加していました。

「他大学の学生とも色々話していたこともあり、年が明けた1月以降は、面接やグループディスカッションで一喜一憂することはありませんでした。志望企業に落ちたら? うーん、それはもうご縁がなかった、と割り切って次の選考を受けていましたね」

そう話すCさんは、3月時点で内々定が2社。その後、6月上旬までに6社から内々定を得て、第二志望のメーカーに内定承諾書を送っています。

一方、冒頭のA君のように、就活開始時期の遅くなった、いわゆる出遅れ組は文字通り、出遅れてしまいました。

◆就活生が気づいていない選考中断と超・長期化

「いや、内々定率は前年より落ちているはず」と指摘する方もいるでしょう。

その指摘は正しく、同じリクルートキャリアの内々定調査によると、6月1日時点での内々定率は56.9%。これは前年比13.4ポイント、落ちています。

実はこれは就職氷河期になったから、というだけではありません。就職情報サイト・マイナビの担当者が6月17日日刊建設工業新聞記事(「21年卒学生の就活実態/内々定率、6月1日時点で51・4%/マイナビ調べ」)では、次のように回答しています。

例年は、6月1日の選考解禁を待って内々定の通知を行う傾向があったが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、採用活動の遅れや延期するケースが増えているという。同社は、「緊急事態宣言の解除を受け、企業の採用活動は今後徐々に再開していくと見られる」と指摘している。 

※記事より引用/「同社」はマイナビを指す

甲南大学と北星学園大学などでキャリア講義を担当するキャリアコンサルタントの本田勝裕さんは2021年卒就活で選考意欲のある企業でも、選考スケジュールが後ろ倒し傾向にある、と指摘します。

3月1日の選考解禁に合わせて準備をしていた企業は選考過程に入れず、急激な経営悪化になった企業は状況判断を慎重に見極め、緊急事態宣言が出た4月上旬から5月中旬ごろまで、選考そのものを止める企業も多数ありました。多くの学生は選考途上で長期にわたる「待った」をかけられてやきもきしていました。このスケジュール差は企業の規模や知名度には相関しません。知名度のある大手企業で、今もなお採用活動をしている企業が見受けられます。あるメーカーの採用担当役員からは「7月に入ってから選考を再開する」という声も聞いています。

zoomによる就活相談会を主宰する本田勝裕さん(上段・中央)。参加学生は中段の3人。相談会では様々な相談が学生から出て社会人と議論する
zoomによる就活相談会を主宰する本田勝裕さん(上段・中央)。参加学生は中段の3人。相談会では様々な相談が学生から出て社会人と議論する

◆長期化が分かればまだ間に合う

2021年卒就活では、出遅れ組の就活生は今後、どうすればいいでしょうか。

キャリアコンサルタントの本田さんは主体的な行動力が必要、とアドバイスしてくれました。

志望業界を絞って失敗したのであれば、広げましょう。これまで志望していた業界と取引する業界や企業などにも目を向けてください。

リクナビやマイナビなど就職情報サイトにはまだまだ採用意欲のある企業が掲載しています。しかし、それだけでなく、就職四季報など客観的なメディアや、自分の身近な社会人に、仕事の醍醐味と苦しみをとことん取材してはどうでしょう。そこに現実があり、ワクワクする理想が見つかるまで。もちろん学校のキャリアセンターに寄せられる卒業生の声も聞いてみるのも一手です。

それから、電話という手段も使ってみてください。

企業の人事部に電話したことはありますか?6月から7月いっぱいにかけて人事採用担当者は社内にいることが多いようです。しかし学生は電話をかける習慣があまりない。だから誰もかけてこない。「面接していただけませんか?」と交渉してみるのはどうでしょうか。

就職氷河期化が進んだとは言え、採用意欲のある企業がまだ多くあるのも事実です。出遅れた2021年卒就活生はまだチャンスを失ったわけではありません。梅雨、あるいは初夏でも踏ん張ることができるかどうか、就活生の覚悟が問われることになります。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

追記(2020年7月7日8時45分)

・記事中のズーム相談会の写真について「学生がいるのか」とのご指摘をいただきました。中段の3人が参加学生です。

ご指摘を受けて、写真キャプションについて、加筆しました。ご指摘いただいた、なかむらさん様、ありがとうございました。

・記事がYahoo!トピックスに入ったことにより様々なご感想をいただきました。リクエストとして「21卒についてもう少し詳しい対策を出して欲しい」「3年生(22卒)のインターンはどうすればいいのか」などをいただきました。このリクエストを受けて、現在、関連記事を作成中です。

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は肩書によるものか、バイキング、ひるおびなどテレビ出演が急増。ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。主な著書に『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊・55万部。

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