リクナビ社長「学生視点の欠如」と話すも補償視点はゼロ【内定辞退率販売問題・記者会見に参加して】

記者会見で質問に答える小林大三・リクルートキャリア社長(筆者撮影)

政府・情報保護委が初の勧告

リクナビを運営するリクルートキャリアは内定辞退予測を販売した問題で個人情報保護法違反として2019年8月26日、個人情報保護委員会から勧告・指導を受けました。

個人情報保護法の改正を受け、2016年1月に内閣府の外局「特定個人情報保護委員会」を改組して発足。各省庁がばらばらに担ってきた個人情報保護法の「監視・監督役」を一手に引き受け、個人情報の不正利用を監視・監督する。勧告は法律違反が明らかとなった場合に改善を求める措置で、指導よりも重い。(朝日新聞2019年8月27日朝刊「リクナビ側の改善勧告 内定辞退予測 同意得ずに販売」)

個人情報保護委員会の2016年1月設立以来、初めての勧告となりました。

この勧告を受けて、リクルートキャリアは同日19時30分、記者会見を開きました。この問題で8月13日にYahoo!ニュース個人「リクナビに『不信任案』が直撃か~内定辞退予測に大学、学生が猛反発」で記事を書いた私のところにも案内が18時ごろに来たのです。

せっかく案内を受けた以上は、ということで私も記者会見に参加してきました。

記者会見は小林大三社長と浅野和之執行役員が対応

会場に指定された新橋の貸会議室にはテレビカメラが10台、記者は私含め約50人ほど。

各席には、回答者の座る位置を示すペーパーが置かれていました。

記者会見に対応するのは小林大三・代表取締役社長、浅野和之・執行役員。

開始5分前には記者会見資料が配布されました。

なお、同資料はリクルートキャリアのプレスリリースでも出ています。

『リクナビDMPフォロー』に係る当社に対する勧告等について(2019年8月26日)

19時30分、予定時刻となり、小林社長と浅野執行役員が入場。

まず、小林社長からこの資料(プレスリリース)を読み上げる形での謝罪と経緯説明です。

小林社長「学生の皆さま、企業、大学の関係者の皆さまなど各所にご心配、ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。今回の勧告・指導を厳粛に受け止め、今後このような事態が再発することのないよう経営、従業員一丸となって改善対応に取り組んでまいります」

ニコニコ動画でも実況中継され、アーカイブも残っているので見ていただければわかりますが、資料と会見はほぼ同じ。

記事を書く側はコピー&ペーストで楽なのですが(苦笑)、読者からお叱りを受けるので、以下、省略。

ところで、資料を読むと、「2.課題認識と今後の方針」に、

「学生視点の欠如」に関しては、具体的には、私たちに欠けていた学生の皆さまの視点が新卒事業の重要な意思決定に反映されるよう、2020年1月を目処に新卒事業の経営体制を変更することを予定しています。

とあります。

ん?

それで、その次の「3.ガバナンス強化に向けた対応策」では事象と対応策が4点、並んでいます。

事象1 研究開発的な位置づけの商品に対する複眼的なチェック体制の脆弱性

対応策1 商品・サービスのチェック体制の標準化と複眼的チェック

事象2 イレギュラー対応に関する作業手順の未整備

対応策2 プライバシーポリシー改定作業手順の整備・明文化

事象3 プライバシー観点で商品・サービスを横断的にチェックする機能の不全

対応策3 プライバシー責任者の設置

事象4 専門的知見の活用にむけたスタッフ間の連携不足

対応策4 リクルート全体でのスタッフ機能の統合と強化

いずれも社内対応の話であり、学生や企業への補償、社長を含む関係者の進退・処分などが書かれていません。

まあ、でも、質疑応答で答えるはず。

そう、この時点では思っていました。

学生へは「真摯にご相談に乗っていこう」

質疑応答のトップバッターはNHK。

※以下、質疑応答は完全な書き起こしではなく、省略している部分が相当あります

「今回この勧告を受けて経営責任、あるいは関係者への処分をどのようにお考えか、というのが一点と、情報を売られることになってしまった学生への補償をどうするかについてお聞かせください」

これに対して、小林社長の回答がこちら。

「今回のこの課題は学生の皆様への心情の配慮不足と、いわゆる経営のガバナンス(不足)にあったと思っています。したがって誰か特定個人の責任というよりもこれは組織全体の責任であり、そしてその組織全体の経営体制が機能する経営体制を作れていなかった私の責任が一番大きいと思っています。適切な同意を取れていなかった学生7983人に対する通知、さらにリクナビDMPフォローの対象になっていたかがわかる特設ページの設置というのを学生の皆様にきちんと通知。その中で学生の皆さんが相談をしたい、と不安だ、ということについて一点一点、真摯にご相談に乗っていくということに集中しております」

色々、ツッコミどころのある回答ですが、それは後にして、続いて、ニコニコ動画。

「説明資料の2ページ、事象1について。単独プロジェクトとありますが、開発コストはかかるわけで、幹部の方は確認しなかったのでしょうか。たとえば、小林社長、浅野さんはこのリクナビDMPフォローをどの時点で知ったのか、ということを教えていただきたい。さらに、知った時点で学生の反発や法的なリスクが多大にあるとお二方、お考えにならなかったのでしょうか」

小林社長

「この商品は研究開発的な位置づけであるがゆえに、投資額も限られたものでした。したがってサービスが生まれる過程において通常、商品が本当は経るべきサービスレビューをかなり省いて事業部の中で決めることができた、というのが現状でございます。私や浅野がこのサービスを知ったのはリリースした後ではあるのですが、これは学生の皆様から見てどうなのか、これは学生の皆様から不信を抱かれるものではないのか、という観点を我々ももつことができませんでした。通常、本当のサービス開発のときには学生の目線から見てどうなのか、ということを代表するような機能組織がレビューで入るのですけど、そこが全く不在のまま。しかも私もその観点に気づかなかった、と反省しております」

続いて朝日新聞。NHKに続いて補償問題について質問します。

「まず最初の質問は社長はどのようにされるのか?あと学生への補償はサイトを作るのはわかったのですがその先はどのようにしていくのでしょうか?それからリクナビをどのように変えていくのでしょうか」

これに対する小林社長の返答。

「まず、私自身のこれは進退に関するご質問ですが、本件を通じて、新卒事業は本当に存続の危機にある、と自分は感じています。今回、非常にご迷惑をおかけした学生の皆様の信頼をゼロから取り戻していくには一体何が必要なのか、個人情報保護委員会から受けた指摘を踏まえてこの組織をどう変えていくか、私自身はこの問題に集中したい、と考えています。

それから、学生の皆様への補償ですが、今は学生の皆様にとにかく通知を届ける、そしてどんな状態にあったかということをチェックしていただき、そしてその学生の皆様がどのような不安なのか、学生の相談に乗っていくということを優先したい、と思っています。

リクナビはどうなるか、というご質問ですが、これは今、まだ検討段階ではあるのですが、色々な商品設計をする時のポリシーを変えないといけないと思っていまして、この学生の皆様の支持が得られる、あるいは学生の皆様にとって明示的に選択できる、どういうポリシーを掲げながらそこを考え、それを経営の意思決定のときに必ずそこを盛り込む体制、経営システムを作ることがメインだと思っていまして。その経営システムと経営ポリシーの中でリクナビの中の商品を一つ一つ変えていくということをやっていきたいと思っています」

進退については、「まずは集中したい」。補償については「通知を届ける」、リクナビをどう変えるかは「検討段階」。

と一言で済む話を修辞が多すぎて何が言いたいのか、わかりません。実は今回の記者会見、全部、この調子でした。

日経クロステック、技術面で痛いところを突く

以降、小林社長・浅野執行役員が謝罪しつつも具体策は示さない、利用企業名等は出さない、利用企業は利用合否判定には使っていない、というスタンスで押し通します。

かなり痛いところを突いたのは日経クロステックと日本経済新聞。

日経クロステックです。リクナビDNPフォローのサービス提供スキームの方ですね、2019年2月以前ですが、こちらは個人情報を預からず企業側で突合していた、とあります。リクルートキャリア側はいわゆるユーザーさんの情報、氏名・住所を含めて、全く持っていないにもかかわらず、(学生個々の)idのスコアを算出していた、という理解でよろしいのでしょうか?

浅野

個人情報、今、おっしゃられたような氏名ですとか、メールアドレスですとか、そういった情報ではなくて。cookieの情報というものと、それと企業さんの方で管理している応募者の管理idがそれぞれあります。その2つだけをいただいている、という状況です。

日経クロステック

ではなく、リクナビ自体、またはリクルートキャリアが学生の個人情報、特にcookieデータとひもづいた学生の個人データを持っていなかった、ということですか?

技術的にかなり痛いところを突かれたのか、それまで自信たっぷりに回答していた浅野執行役員も聞き直します。

浅野

企業さんが…

日経クロステック

いや、リクナビまたはリクルートキャリアが、です。

浅野

それはですね、cookieの方の情報を突合しておりますので、そこの時点で我々は情報をもっています。リクナビの、です。

日経クロステック

学生の、氏名、住所等の個人情報をもっている、ということですね。

浅野

そうですね。

日経クロステック

とすると、容易に照合可能な状態でcookie情報を突合、おそらくcookieシンクのことを言っていると思うのですが(浅野「はい」)、その状態でスコアを算出したのであれば、一般には提供元に個人情報が存在するので、個人情報の第三者提供になると思うのですが、そういった理解でよろしいでしょうか?

これは、すみません、文系出身の私は何を指すのか、全く理解できませんでした。

ついでに言うと、翌日の新聞各紙でもこのやり取りはほぼ皆無。

ただ、相当痛いところを突いたのか、それまで順調に質問に答えていた小林・浅野両氏も顔を見合わせます。

小林

すみません、今の技術的なお話は、もし、今回のこの場でのご説明で足りないようであれば、ちょっとまた別に(機会を)設けさせていただきたいのですけど。今の理解では、企業が個人ごとの企業独自の応募者IDでアンケートを取ります。そこで得られるcookieにリクルート側も同じタグを埋め込んでおいて、リクルート側の方でこのcookieとブラウザを特定できる、という状態なんですが、この特定できたブラウザの人が一体何者かはわからない、という状態で企業の方にはお返しする。そうすると、企業の方はそれがどういう人なのか、はそのデータベースは企業にしかないので、企業側の方で突合する、という仕組みだと思っております。

日経クロステック

つまり、リクナビ側では、いわゆるリクナビ2019に会員登録された学生の方も、同じくcookieデータが追跡できていると思うのですけど、そのcookieデータを対象の学生会員の方は今回のスコアを提供した対象の方には一人も含まれない、という理解でよろしいですか?

浅野

あの、すみません。今のお話をもう少し、お話しますと、リクナビというものはリクルートキャリアが運営しております。今回、DNPフォロー提供スキームを実施するにあたって、弊社のグループの中にあるリクルートコミュニケーションズ、という会社がございます。そちらがですね、基本的に今回の突合等のスコア抽出というのを行っております。そのため、リクナビからcookie情報をリクルートコミュニケーションズに個人特定できない形で得るだけですので、組織の壁もございますし、会社の中において、リクルートキャリアでは個人情報を持っておりますが、リクルートコミュニケーションズは持っていない、という状態です。

日経クロステック

それがいわゆるサードデータパーティで、リクルートコミュニケーションズを経由することによって個人情報でなくなった、という判断された、ということですね?

浅野

我々が、ですか。

日経クロステック

はい。

浅野

今回、判断された、ということも含めて、全部、個人情報保護委員会さんの方にもご説明しております。

日経クロステック

2019年3月以降の業務委託契約ですね、こういった形に変更された理由を教えてください。どのような議論があったか、も含めてお願いできますか。

浅野

いくつかあるかと思いますが、まず、2019年2月以前のスキームで申し上げると、基本的には、突合できる数自体が非常に少なくなってしまう、というところがございます。当然、cookie情報ですので、ブラウザが違えば、スマホであったりPCであったり、ブラウザが違えば突合がしにくくなってくる。当然、出てくるスコアの精度が大きく変化してきます。そういった中において、個人情報のものを企業様の方からお預かりして、その数を含めてデータ量を確保していく、という風なやりかたであったり、精度も含めてスキームを変更させてもらった、という形です。

(次の質問に移る前に)

すみません、私、誤回答していました。当時の認識で言えば、個人情報保護委員会さんにもお話しましたが、個人情報をお預かりして、情報をハッシュ化します。ハッシュ化同士の情報を突き合わせる、という形でやっておりますので、生データ、個人そのままの情報を突き合わせるのではなくて、ハッシュ化して、それを突き合わせる、ということをやっておりました。ですので、正確に申し上げますと、その時点で我々は個人情報ではない、という認識の元にやっていた、というところでございます。

日本経済新聞「選考の順番に使っている企業がある」

続いて、日本経済新聞。合否判定ではなく、選考の順番に使っている企業がある、とこれも痛い所を突きました。

日本経済新聞です。学生の目線が欠けていた、ということで、今、学生に特設サイトで開示していると思うのですが。(学生の関心は)対象になっているか否か、というところではなくて。学生自身が知りたいのはどこの企業にどういったスコアでどのタイミングで提供されていたのか、ということを知りたいと思います。こちら、今後、調査して開示される予定があるのでしょうか。それと、これは個人情報なので学生個人が個人情報の開示請求をしたときには当然、開示の対象になると思うのですけど、学生が開示請求をすれば出てくる種のものなのか、二点お願いします。

浅野

今、おっしゃっていただいた今後、情報開示をしていくのか、というところに関しては、当然、二つ目のご質問に重なるのですが、学生の方々から開示請求をいただいた場合には、法に則って、開示請求していかないといけない、と認識しております。そちらについては、ちゃんと(学生に)お伝えしていくつもりです。

日本経済新聞

スコアや利用提供企業も提出していく、ということですか。

浅野

はい。

日本経済新聞

先ほどの質問(合否判定について)で、合否判定に使っていない、ということだったのですが、合否判定に直接使わなくても、そのスコアが選考の有利不利に働くような、そういった事例というのもないということでいいのでしょうか。

浅野

有利不利に働く、というのは例えばどういう?

日本経済新聞

取材している企業の中で、選考の順番を決めるときに、こちらのスコアを参考値として使っている企業もありまして。企業にもよるのでしょうけど、大量に選考の面接をする中で、最初の方に面接をするか、この学生を後ろの方にするのか、ある程度、選考に影響を与えると考えられる場合もあると思いますが。

浅野

我々の認識は、お伝えさせていただきますと、どちらかと言うと、今回のお出ししている情報と言うのは、(選考)離脱の可能性だと思っております。学生様と企業様の間で選考プロセスを経ていく中において、離脱をされていく、離脱というのは(選考・内定)辞退ということなんですが、その可能性というものをスコアで出しているものですし。これは確率の話でもないですし、パーセンテージで表せるものでもないです。というところの前提の中において、離脱の可能性の高い学生をたとえばですが、しっかりコミュニケーションを取っていただいて、フォローしていただく、みたいなものに使っていただく、という風な認識です。そういった形で利用されていた、と認識しております。

日本経済新聞

すみません、そうすると、選考の順番に使っていた事例はない、というようなことですか?選考の順番を決めるときに、このスコアを参考に使った企業はない、という風なことでよろしいのでしょうか?

※ふたたびここで小林・浅野両氏は顔を見合わせ、相談します。

日本経済新聞

こちらのスコアを参考に使った、という企業がある、と聞いているのですが。

浅野

すみません、そのあたりについては、いったん、今日の回答をこの場ですぐにさしていただく、ということではなく、追って別途回答させていただく、ということでよろしいでしょうか。

日経クロステックと日本経済新聞の両メディアがリクルートキャリアにとって一番、痛いところを突いている印象を持ちました。

複数業界志望の学生がスコアを落とすか聞いてみた

さて、私もせっかく、記者会見に参加したので質問してみました。まずは複数業界の志望がスコアに影響があったかどうかについて。

石渡 浅野さんは閲覧情報で業界・業種をどういうものを見ているのか、とお答えされました。これは複数の業界・業種をチェックしている学生は辞退率が高い、と算出するものだったかどうか、など具体的にお答えいただきたい。

浅野

正確性をもってですね、こういう場合はこうだ、というものが出てくるというよりも、色々な情報を、何をどういう業界を志望しているか、など色々見ている中において、スコアが出てくるものでございます。何かロジックをもって私がここでご説明できるというところが、誠に申し訳ないのですが、ちょっとできないということなんですが。

小林

補足させていただきますと、これは該当企業の方の前年度の、そのプロセスから離脱したという方の情報をいただいて、その前年度の方がリクナビ上でどういう行動をとっていたのか、行動履歴と合わせてまずアルゴリズムを作成します。したがって、該当企業ごとにどういう行動特性をもった方が、辞退をしていく可能性が高いのか、割り出すので、さっきおっしゃったように、複数の業界を見ていると自動的に辞退率が高くなる、ということが基準として決まっているわけではなく。全てはその類似の行動履歴というのでアルゴリズムを作ったもので照合していた、というのが現実です。

石渡

なぜ、これをお伺いしたかというと学生を取材していると、複数の業界を志望している、あるいはチェックしていると、あの辞退率が高くなるだろう、と。

もう今後、リクナビを使うにしても、本命の企業と同じ業界をチェックする以外に、もう使わない、という学生が出てきているものですから、そのあたり、どういうご認識かな、と思いましてお伺いしました。

小林

今、おっしゃったような感じられている学生さんがいらっしゃるのでしたら、もう本当に申し訳ないと思います。このサービス自体は廃止していますが、今回のこのサービス展開をしたことによって、今みたいな認識で、いわゆる健全な就職選びができなくなっているのだとしたら、本当にそこは申し訳ないと思います。

小林・浅野両氏の回答は前年度データと企業ごとによって違う、とのことでした。

となると、前年度データで複数業界を志望している学生の辞退率が高ければ、それが反映される、ということを意味します。

おそらく、社内の優秀な社員の特性に近い学生を採用するコンピテンシー採用の流れもあるのでしょう。

コンピテンシー採用、当たっている部分があることは否定しません。

ただ、全部が当てはまるか、と言えばそうではなく。

たとえば、優秀社員が野球好き・サッカー嫌いだったとして、それに近い学生を採用すればいい、という話ではないはず。

リクナビの行動履歴ですとか、複数業界を志望する、というのもこれに近い話であまり意味あるデータとは思えません。

それを複数業界志望は危険だから、と学生に思わせるリクルートキャリア/リクナビの罪は大きいと言わざるを得ません。

ベネッセは10日で補償準備。リクナビは?

学生の補償についても、あえて質問してみました。

石渡 学生視点の欠如とか、事業の存続の危機と言っている割に、ご無礼ながら言い訳に言い訳を重ねて、どう補償するか、という話が書いていない。先にお二人、この点で質問されて、「まずは学生に告知すること」と回答されている。そこでもう一度、お伺いするが、過去の個人情報流出事件の企業対応にならって、500円ですとか数千円の金券をお詫び料としてリクナビ会員に出す、ということは検討されているでしょうか?

小林 

これも先ほどの回答と一緒になってしまうのですが、学生の皆さんそれぞれによって、こういうデータを開示してほしい、とか、こういうことはなかったのか、とか、色々なご相談を受けていることに対して、今はお答えするということが重要と思っています。ですので、先ほどの中で、1人500円とか、そういう話は今は検討はしておりません。

NHK、朝日に続いて、さらに金券という具体例を出して質問しましたが小林社長は「検討していません」と言い切りました。

2014年のベネッセ個人情報流出事件では、発覚し、記者会見をしたのが7月9日。情報漏洩件数を3504万件として、お詫び料として金券500円の送付を発表したのが9月10日でした。

約2か月かかっているので、リクルートキャリアが遅い、とは言えないかもしれません。

ただし、ベネッセは記者会見の8日後、2014年7月17日には、顧客補償に200億円を用意する、と発表しています。

ベネッセ社の親会社・ベネッセホールディングスの原田泳幸(えいこう)会長兼社長らは17日、東京都内で記者会見し、「大切なお子様の『学び』に携わってきた企業として、このような事態を招いたことに深く反省する」と改めて謝罪した。今後、200億円を準備し、個人情報が流出した顧客への補償を進める考えを示した。

記者会見で「ベネッセは被害者なのか、加害者なのか」と問われた原田氏は、「今の段階では、お客様にこれだけ迷惑をかけたという意味で加害者だと思う」と語った。顧客への補償を行うことについては「(事態の)重大さを認識した私の決断」と説明。おわびの品を贈ることや受講費の割引などを検討するという。

※2014年7月18日読売新聞朝刊「顧客補償に200億円 ベネッセ原田氏」

ベネッセに比べて、リクルートキャリアは事件発覚後、3週間が経ってもなお「まずは学生の相談に乗る」という段階にとどまり、補償については明確に検討していない、と小林社長は回答しました。

率直に言って、これは遅すぎる対応、と私は考えます。

リクナビ「不信任」が現実のものに

約2時間にわたって、記者会見が行われましたが、これまでに出ている情報や対応策から踏み込んだものは特にありませんでした。

こうした対応からは、「どうせ、学生はリクナビを使わざるを得ないはず」という傲慢な思いが透けて見えます。

社長・執行役員が補償や企業名公表に動かない以上、リクルートキャリアの大学・企業担当者もまた、お詫び行脚をしても何も話せるはずがありません。

それもあってか、前記事で書いた「不信任」は現実のもの、となりつつあります。

読売新聞2019年8月28日朝刊「リクナビ 大学に謝罪 辞退率販売『学生に薦めぬ』反発」記事にはこうあります。

大学の中には、同社(リクルートキャリア)との関係を見直す動きもある。中央大は、学内の就職ガイダンスなどのイベントで、同社に就活動向を話してもらうこともあったが、今後は呼ばないことに決めた。同大の担当者は「信用がなくなった。学生に安心してリクナビを薦められる状態ではない」と話す。

都内の別の私立大は、毎年春に保護者向けガイダンスを開き、同社に講演を依頼してきた。同大の担当者は「保護者がどう受け止めるか心配だ。今後は講演を頼みにくくなる」と話す。

個人情報保護法の違反が認定され、さらに職業安定法への抵触についても今後、調査が進みます。今回の記者会見のような対応だと自ら傷口を放置するどころか、さらに広げているものでしょう。

少なくとも、学生への補償をどうするのか、そして利用企業名の公表と補償については、リクルートキャリアは早急に明らかにすべき、と私は考えます。