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学歴フィルターで悩む学生をうざいと思う企業、その傾向と対策~学歴フィルターシリーズその3

石渡嶺司大学ジャーナリスト

5位:「就活ではどうせ難関大重視なんでしょうけど、だったらどこがターゲット校か、最初から公表してください」

企業側の見方「無理。不満なら他を受ければ?」

どの大学(あるいは偏差値グループ)をターゲットとするか、各企業とも内々では考えています。

ただ、それが、がちがちの線引き(たとえば、旧帝大・早慶以上は採用、それ以外は無条件で落とす、など)という企業もあります。

一方で、そこまでガチガチの線引きでないにしても、

「×大からは最低1人は採用しておきたい」

という程度のこともあります。

たとえば、IT業界だと、電気通信大は、かなりの高評価。

採用担当者の間では、ターゲット校とは前者(ガチガチの線引き)の意味合いで使われています。

ただ、2015年卒採用から、売り手市場となっており、今後は後者の意味合いでも使われることが増えていくでしょう。

どちらの意味合いでも、どこがターゲット校か、年によってかなり変動します。たとえば、今年の2016年卒採用だと、これまで採用実績のない大学からも採用を増やそうとする企業が増えています。

もちろん、前年度の実績から、どの企業か、どこをターゲット校か、推測することはできます。

ただ、2016年卒採用では該当しない企業が増えています。

まして、企業にとって欲しい人材であれば、どの大学からでも採用をしたい、これも本音です。

どこが、ターゲット校か、学生が企業側から聞き出そうとしても、起業からすれば、そこを気にされてもねえ、で終わりです。

学生ができる対策:藤代さんの記事にある通り、気になるなら、『就職四季報』(東洋経済新報社)で確認を。

それと、自分の大学、できれば、同じ偏差値帯の大学と、それより1ランク上の大学で学内説明会を開催する企業がどこか、チェックしてみてください。

自校だけなら、偏りもありますが、同じ偏差値帯の大学の学内説明会に来ている企業を見ていくと、大体の傾向が見えてきます。

ただし、その企業だけが入社可能、というわけではありません。

さらに1ランク上の大学に来る企業も、逆転可能です。

自分の学生生活や資質に自信があれば、もう1ランク上も。

公表がどうこう、と気にするくらいなら、まず、逆転可能と言われる学生かどうか、自己研さんをどうぞ。

同率3位:「もっと人物を評価してください」「もっと公平な選考をしてください」

企業の見方:「無理。嫌なら他を受ければ?」(2回目)

一見すると、違う内容ですが、企業の見方は同じなので、まとめていきます。

人物での評価を、となると、面接やグループディスカッションなど。当然ながら、不確定な要素が相当入ってきます。

この面接・グループディスカッションに勝てる学生は、難関大か中堅以下の大学かは無関係で、社会の不確実さを分かっている学生です。

一方、公平な選考を、となると、だったら適性検査・学力試験をガチガチにやろうか、となります。

こちらの選考だと、難関大生が有利。

ただ、中堅大でもちゃんと試験対策の勉強をしている学生はどうにかなります。

結局のところ、どちらに転んでも、文句は出るわけです。

企業としては、文句すべてに構っていられません。

学生ができる対策:特に中堅大生は適性検査対策をちゃんとしましょう。

企業側が学歴フィルターをかける気がなくても、適性検査の点数がひどすぎて落ちる、ということがよくあります。

2位:「どうせ×大には負けているので自信が持てません」

企業側の見方:そういう自信のない学生は採用したくない

日本の大学生はどういうわけか、自信のない学生が多くいます。

近隣の1ランクか2ランク上の大学と比較して負けている、と話す学生多数。

まあ、身内の会話ならまだしも、それを採用担当者に伝えてどうなるかな、と。

しかも、採用担当者が、「負けている」と話す学生の大学より偏差値が低い大学出身ということだってあり得ます。

その逆のケースであっても、聞いていて気分がいいものではありません。

学生ができる対策:「負けている」と話すことで、何か事態が改善するかどうか、考えてみてください。

そもそも、学生のあなたが、ひきこもっていたならまだしも、そうでないなら、何かしら話せるポイントはあります。

もっと自分の学生生活に自信を、とまでは言いませんが、卑下しすぎるのはやめてみてはどうでしょうか。

「迷いながら ぶつかりながら 揺れながら 過ごした日々を いとしく思う」(加藤千恵『写真短歌部 放課後』より)

1位:「うちの大学からでも内定は貰えますか?」

企業の見方:「それを聞かれても、ねえ」

5位とほぼ同じ。ただ、これを聞きたがる学生はものすごく多いです。

学生ができる対策:口をとじること。『就職四季報』や大学キャリアセンター職員に聞けばわかる話をわざわざ採用担当者などに聞いても無意味です。

学歴フィルターを気にする学生は、難関大との差を気にしやすいです。

それを気にすることで差が埋まる、と本気で信じているなら、止めはしません。

しかし、実際には全く埋まらないわけで。

学歴フィルターとは無関係に内定を貰う中堅大・地方大の学生は、学歴フィルターを気にする前に、難関大生の専売特許ではないこと(人と話す、新聞を読む、適性検査の勉強をする、企業・業界をきちんと調べる、普段の大学の勉強も手を抜かない……)をちゃんとやっています。

うだうだ愚痴っているだけの学生よりも、はるかにまし。そう思うのは、私だけではありません。

さて、中堅大・地方大で学歴フィルターを気にする学生にお伺いします。過去に就活でうまく行ったOBを見習って、しかるべきことをやるのか、それとも、過去に就活で失敗したOBを見習って、愚痴を言い続けるのと、どちらが好ましいですか?

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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