どうした、桜美林~パイロット養成コース「返上」報道から
今日(4月2日)の朝日新聞朝刊に、桜美林大ビジネスマネジメント学群アビエーションマネジメント学類フライト・オペレーションコース(以下、パイロット養成コース)に関する記事が掲載されました。
「養成指定を返上」「管理ずさんと指摘」という記事の見出しから、
「桜美林のパイロット養成は管理がずさんだから、養成指定を返上した。だから、これからはパイロット養成のコースは志望できなくなる(あるいは、パイロット志望だけどそんな大学には行きたくない)」
と一般読者・受験生は考えるはず。
しかし、桜美林大学のサイトを見ると、どうも違うようです。
・飛行訓練をニュージーランドからアメリカ・アリゾナに移す
・キャンパスを淵野辺から多摩に移す
としたうえで、
これらの大規模な教育施設や訓練地の改革改善に基づき、航空従事者指定養成施設の管理体制の再構築が必要との判断を踏まえ、3月24日付で指定を一旦、自主的に返上致しました。この新しい体制を構築しながら、今後は米国アリゾナ州での航空従事者指定養成施設の指定再取得を目指して全力を傾注して参ります。この変更による教育研究上の不具合はございませんが、ご質問等ございましたら下記までお問い合わせください。
これって、どうなんでしょうね?
今後もパイロット養成コースの教育・応募を続けるのかどうか、いまいち分かりづらいです。
まあ、続けるからこういう書き方なのでしょうが、だったら、「ずさん管理」の指摘はどこにいったのか、と考えるのが普通です。
ここは大学トップと大学広報のマネジメントが問われるところです。
学長・養成コース長の謝罪会見までは必要ありませんが、しばらくは大学トップページに謝罪文を載せるくらいはした方がいいでしょう。
合わせて、QAサイトを作って、ずさんと指摘されたのはどこで、どのように改善するのか、募集は続けるのかどうか、受験生が志望したとして不利になることはないのかどうか、など、マイナス点は全部出すべきです。
このままだと、
「ずさん管理」「養成指定を返上」
が独り歩きするだけです。
こういうとき、大学関係者は「マスコミの一方的な報道が悪い」「こちらも被害者」などと言い出します。
そうした面があることは否定しませんが、一番の被害者は誰でしょうか?
パイロットになることを夢見て入学した学生であり、これから受験を考える受験生のはずです。
マスコミ報道の問題点を指摘することで、パイロット養成の状況が改善されるならどんどん指摘した方がいいでしょう。
しかし、現実はそうではないはずです。
ならば、桜美林大としては、謝罪、そして、状況説明に努めるべきです。
朝日新聞の記事にはこうあります。
格安航空会社(LCC)の急増でパイロットは世界的に不足し、日本でも昨年、LCCで大量欠航が相次いだ。15年後には国内だけで2千人以上足りなくなるとの試算がある。国交省の審議会は昨年7月、私立大を日本のパイロット養成の柱の一つに位置づけた。安全運航と事故防止に向け、養成機関の質の確保が緊急の課題となりそうだ。
パイロット養成は、私立大では東海大工学部航空宇宙工学科航空操縦専攻(2006年)が最初で、現在では、他に以下の大学で関連コースが設置されています。
※他に、帝京大理工学部航空宇宙工学科ヘリパイロットコースがヘリパイロット養成。神奈川工科大機械工学科航空宇宙学専攻はパイロット養成ではないが、航空機操縦実習などがある。どちらも、卒業後にエアラインパイロットを目指すことは可能
日本のパイロット養成は、これまで航空大学校が一手に担ってきました。
かつては運輸省の附属機関であり、この1校で十分でした(現在は独立行政法人)。
しかし、LCCの普及や外国人観光客の増加などでパイロットは日本でも世界でも不足気味です。
そのためには航空大学校だけでなく、私立大でのパイロット養成も欠かせません。
桜美林大は2008年の設立であり、私立大・パイロット養成校としてはトップランナーに入ります。
今回の養成指定は残念でしたが、しかし、今までの教育が完全に否定されるものではありません。
改善すべきは改善して、日本のパイロット養成を今後も担ってほしいと思います。(石渡嶺司)