進路相談14・大学の中退率・卒業率はどこまで参考になる?
質問:大学の中退率・卒業率を見た方がいいと高校の進路の先生に言われました。どうしてですか?
その先生はなかなかの切れ者ですね。いい着眼点です。
中退率は大学を中退した学生の割合、卒業率は4年制なら4年間で卒業した学生の割合です。
中退率が高いと、教育などで何か問題があるか、学生が大学に魅力を感じていないか、などを示します。
卒業率が低いということは留年者や中退者が多いことを示します。
中退率が低く、卒業率が高い大学であればいい大学、というわけではありません。
しかし、中退率が15%を超えるようだと、大学はいったい何をやっているのか、ということになります。
いまどき、国公立大も含め中退者が多いと大学経営をぐらつかせる元になります。
引き留め工作をしているはずであり、それでもひとケタどころか、15%を超えるのは、よほど大学として魅力がないのか、と勘繰りたくもなります。
本書執筆の際、公務員に強い大学としてある私立大が掲載候補に上がりました。
しかし、強い大学という宣伝の割に公務員(警察官)の就職者が卒業者の1割程度、しかも中退率17%、卒業率77.6%。
著者・石渡としてはそれが本当に公務員就職に強いか疑問に感じ、本書掲載からは外しました。
卒業率も高ければいい、というものではありません。
たとえば、国際教養大は48.8%ときわめて低いですし、東京理科大も理工学部76.4%、理学部(一部)75.4%など高いとは言えない数値です。
しかし、国際教養大の場合、学生が留学した結果、さらに勉強を深めようということでわざと留年するケースが多いとのこと。東京理科大は伝統的に単位認定が厳しく、卒業率が上がらないのは当然です。
どちらの大学も、卒業率こそ高くはありませんが、それぞれ企業からは
「多少の留年など気にならない、それだけ勉強をしている」
「単位認定が厳しいのはそれだけ信頼がおける」
など評価されて、就職結果が悪くなっているわけではありません。
国際教養・東京理科の両大のように、社会から認められる理由があって卒業率が低いなら問題ありません。
しかし、そうではないのであれば、進学先の候補として、私は強くお勧めはできません。
この中退率・卒業率は『大学の実力2015』(中央公論新社/『2016』は2015年9月刊行予定)に詳しいので本書と合わせてお読みください。
志望校の中退率・卒業率が極端な数値であれば、オープンキャンパス等で確認してみてください。
大学がきちんと答えられないようなら見送りが賢明です。
※『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(中央公論新社)より引用