就活の「盛る」、境界線は?

「盛る」を勧めるキャリアセンター

就活が本格化すると、必ず出てくる質問が「盛る」です。

「盛る」とは「学生時代の出来事などを少し大げさに言う」くらいの意味でご理解いただければ間違ってはいません。

この話、別のところでも書いたことがあります。

なので、私からすれば「またか」なのですが、もぐら叩きのごとく、毎年のように登場します。

このYahoo!個人1回目の記事「学生を救う答えゼロの就活本」でご紹介した『短所を言えたら内定が出る』(パブラボ)の著者で柳本周介さん(採用コンサルタント・将来塾塾長)のブログにこんな記事が出ていました。

今日、合同企業説明会にて就活よろず相談を行っていました。

ある女子学生が驚愕の事実を話してくれました。

彼女と私の会話を書きます。

「うちの大学のキャリアセンターはもう信じられないです」(女子学生)

「どうされたんですか?」(私)

「自己PRでは、話を盛れ(嘘を書け)、話を盛って、盛って、書くのがいいんですよ。とか、いうんです」(女子学生)

「それはあかんわ」(私)

「嘘を書いていたらそのうちその嘘が事実に思えてくるから大丈夫。って言うんです。自分もそうしてきたらあなたも大丈夫よ。って、もうほんとに情けなく・・・」(女子学生)

「最悪の教えやね。キャリアカウンセラーとしても人間としても

失格でしょう。そんな人」(私)

「もう、大学のキャリアセンターに行くのはやめます。なんで、あんなに情けない人たちがキャリアカウンセラーとかしてていいんでしょうかね・・・」(女子学生)

本当に残念な話です。(2013年12月23日記事

あ、痛い。

痛いな~、このキャリアセンター職員(大学全体でなく個人の暴走と信じたい)。

うーん…。

と絶句していてもしょうがないので先に進めます。

就活で「盛る」対象は、大きく言えば

「所属する大学・学部」

「TOEICなどのスコア・資格」

「所属するサークルの規模・役職」

「アルバイトの経験・役職」

「旅行・留学などの期間」

「その他のエピソード」

の6点、あります。それぞれ解説していきます。

▼所属する大学・学部

さすがに、これを「盛る」学生はまずいません。

と言うか、いたら経歴詐称でしょう。

就活であれば、内定まで行って書類提出時に確実にばれますし、内定取り消しをされても100対0で学生側の負けです。

追記:公開直後は「経歴詐称でしょう。法律違反です」としていましたが、高校の先輩(現在、弁護士)から以下のご指摘をいただきましたので、お詫びして訂正します。

「たしかに所属大学を詐称した場合,採用後に詐称が発覚したときに懲戒解雇等の懲戒処分を受けるリスクはあるけど,これは<法律に違反するかどうか>の問題とは別だと思う」

▼TOEICなどのスコア・資格

所属大学・学部を「盛る」チャレンジャーはそうそういませんが、この辺から怪しくなってきます。

柳本さんのブログによるとこういう指導をしているキャリアセンターもあるそうです。

先日、とても残念な話を学生さんからお聞きしました。

その大学では資格の欄に嘘を書いてでもポイントを稼げと、指導していると。

2013年12月20日記事

これまた一部の職員の暴走と信じたいところ。

柳本さんのブログには続けてこう書かれています。

これは完全に虚偽報告ですから内定が出てもバレた時点で、内定も取り消されるでしょう。

もちろん、取り消されても文句も言えません。

資格に関して言うと

「その取得証明としてコピーをもってきてください」

と言われる場合もあります。

2013年12月20日記事

まさにこの通りです。

某大学キャリアセンター職員が言うところの

「ポイントを稼ぐ」

どころか、死亡フラグ決定の罠。

なお、法律面から専門的に解説した記事が弁護士ドットコムの

「「Javaができる」と能力を誇張して解雇された!履歴書にウソを書いてはいけない」

にもありました。判決なども出ているので参考になります。

補足すると、内定まで行かなくても、面接のどこかのタイミングでほぼバレます。

●TOEICなど英語→英語で話しかける、英字紙などを示して訳させるなど

●マイナー言語→わかる社員を引っ張ってきて、その言語で話しかける。わからない社員でも簡単な会話を持ち掛ける、その言語での自己紹介をさせるなど

●その他の資格→関連の専門用語や時事トピックスなどを質問する

私が以前、ある大学の模擬面接会で面接官役をやったときのことです。

「イタリア語が得意」

とアピールする学生がいましたので

「イタリア語で自己紹介して、簡単でいいから」

と話すとフリーズしてしまいました。

これ、模擬面接だからまだよかったですけど、実際の面接ならとんでもない大惨事です。当然、次の選考に進めるわけもなく。

模擬面接でよかったね、というところなんですが、この学生はその後、顔面蒼白になったままでした。

そのとき限りでしたが、その後の就活がどうなったか、気になります。

▼所属するサークルの規模・役職

語学・資格以上に「盛る」学生はこのネタだと格段に増えてきます。

ですが、結論から言えば、ムダな努力にすぎません。

「ムダ」と言って悪ければ「クダラナイ」と言っておきましょう。

えとですね、どの企業もサークルの部長だから採用して、ヒラなら不採用、なんてバカな話はまずありません。

規模も同じです。

50人規模のサークル(のヒラ部員)→500人規模のサークル(の副部長)

と言いたいなら止めはしません。が、これで心を動かす採用担当者が何人いるか、はなはだ疑問です。

小規模な大学であれば、小規模な大学に大人数のサークルなどあり得ない、とすぐバレるでしょう。

中・大規模の大学であれば、大人数のサークルは確かに存在します。

が、今度は、同じ大学、同じサークルの学生が受けていてそこからバレる、というリスクが出てきます。

他大学の類似サークルの学生からバレる、ということも。

以下、採用担当者に聞いた話。

「同じサークルの学生が受けていたが、サークルの規模が30人、50人、100人、200人とそれぞれ違っていた」

「某大学はどうもサークルの規模・役職を水増しするよう指導しているのか、大規模サークルの副部長が勢ぞろいする。計算していくとその大学は1人2~3サークル、掛け持ちしていることになる」

「ある学生のサークル活動の話がどうも疑わしいので、他大学の同じサークルの学生にそれとなく聞いたところ、話が全てウソであることが判明」

「サークルのホームページやフェイスブック、ツイッターをとどっていくと大体はわかる」

というわけでよい子の就活生は決してサークルの役職・規模など盛ることなく…

ん?

「だったらインカレサークルにしておこう」?

「サークルのホームページなどは削除しておく」?

止めはしませんけどねえ…。

もっと他のことに情熱使ったら、と思うわけです。

▼アルバイトの経験・役職

これもサークルと同じ。しかもサークルと決定的に違うのは、勤務先を明らかにしている点です。

仮に最終選考まで残って、どちらかの学生を落とす、ということになった場合、企業によってはそのアルバイト先に行って話を聞く、まだ働いているようならその働きぶりを見るくらいはします。

あまりにも盛っていて学生の話と違いすぎるようなら、それは落とす理由となるわけです。

サークルにしろ、アルバイトにしろ

「ナビサイトの個人登録でリーダー経験の有無の項目があった。だから、リーダー経験ありと『盛った』方がいいのか?」

と学生からよく聞かれます。

あれは、ナビサイト運営の就職情報会社が項目を増やしただけです。

あの機能を大真面目に使っている企業がどれくらいあるのか、怪しいものです。

もし、あればよっぽど人を見る目がない企業でしょう。

▼旅行・留学などの期間

旅行については、旅行業界志望でよくアピールする学生がいます。

かつてエイチ・アイ・エスは「30か国以上の渡航経験」を採用条件にしていました。

この話が「旅行会社は渡航先が多いほど就活に有利」などと就活生の中で変化することもあります。

実際には、エイチ・アイ・エスですら1999年時点で

「僕たちの世代には、その話は、もはや昔話みたいなものだ」(『実録!旅行業界のヒミツ』99ページ)

と出ています。

1999年刊行の本で「昔話」であれば、2014年現在なら「骨董品」「消えた村」くらいのもの。

それを持ち出して就活が有利になる、と信じたいならどうぞ。日本は思想・信仰が自由の国なので。

留学については、まず、大学の呼称が問題です。

数か月、大学によっては数週間でも留学または短期留学と言い張っていますが、それ、留学じゃあありません。

留学期間は専門家や企業側にもよりますが、最低半年と主張する専門家・企業、最低1年と主張する専門家・企業が多いようです。

数か月、数週間程度ならそれは留学ではありません。

そして、期間をごまかしたとしても、これも問い合わせればすぐわかる話。

留学についても、下手に盛らない方が私は学生にとっては幸せだと思います。

▼その他のエピソード

1回目記事で紹介した本『凡人面接戦略』で著者の武野さんは「盛る」(同書では「嘘」)について、こう書いています。

周到な準備をして、絶対にバレナイという自信があるなら使え

ウソが採用の決定打となった場合、解雇理由にもなりうる、としながらも武野さんは

「ここに来るまでに感動したことあった?」

と聞かれた時の例を挙げています。

武野さんは忘れた財布を後輩が届けてくれた話をします。もちろん、ウソ。

私はこれくらいならまあありかなと思います、もちろん話せる人なら、という条件付きで。

他のネタであればちょっと調べればわかる話だったり、内定取り消しの理由になりかねるものだったりします。

ですが「ここに来るまでに感動したこと」はどうでしょうか?

調べてもわからない話ですし、そもそも採用の決定打になる話でもありません。

だったら聞くなよ、という話ですが、場をつなぐために何かを話す必要があるわけです。それなら、盛るのもありか、と。

もちろん、場をつなぐためですから上記の回答が万全という訳ではありません。しどろもどろになりながらウソを言おうとするくらいならやめた方がいいです。

ウソを言えないなら、「場をつなぐ」という意味では、似たようなことを話すのも手。

「感動したことは?」

なら、

「感動するほどではないけど、心を動かされた(いいなと思った)」

話をするのはどうでしょうか?

私なら

「ここまで来る途中で感動することは特にありませんでした。ですが、見ていていいなと思ったことはあります。その話をしてもよろしいでしょうか?」

と聞いて、相手がOKならその話(何かはあるはず)をします。仮に相手が

「ふだん、そんなに感動することがないの?」

と聞いてきたら、

「ふだん、感動することはもちろんあります。ただ、今日は面接を前にした大一番でその余裕がありませんでした」

と返します。それで落ちるようならその社とは縁がなかったとあきらめます。

そこまでツッコむ企業はそうそうないと思いますけどね。

「盛る」を実践する職業は

ところで、冒頭の柳本さんのブログに登場した某大学キャリアセンター職員の、

嘘を書いていたらそのうちその嘘が事実に思えてくるから大丈夫。って言うんです。自分もそうしてきたらあなたも大丈夫よ。

これを実践している職業がこの社会には存在します。

それは詐欺師です。

詐欺師のノウハウ、就活生に教えていいんでしょうかね?

余談ですが、私は本物の詐欺師と10年以上前、ちょっと話をしたことがあります。

どういう経緯かは長くなるので省略します。

この方、服役経験あり、だまし取った金額は推定で億単位。

木○○苗とか目じゃないレベル。

それで、この詐欺師が、自分のウソをそのまま信じ込んでいるんですね。

ちょっと冷静に考えればウソと分かるのですが、そう思わせない勢いがありました。そういえば小道具の使い方も絶妙だったな。

付言しますと、私はこの詐欺師とはその後、縁なく、平和な生活を送っている毎日です。

話を戻すと、就活生がウソをウソでないと信じ込むのは相当至難な技です。

仮にウソをウソでないと思い込むようになると、就活がうまく行ったとしても、社会人として信用されるか、という問題が出てきます。

法的な問題だけでなく、社会人として成長できるかどうかを考えると、「盛る」はリスクが高すぎる割に得るものはほとんどありません。

そんな暇があるなら、もっと別のことに気を使った方がいいでしょう。

以上、「盛る」について、「大盛り」でお届けしました。あ、「大盛り」は「内容が多い」という意味で、ウソだらけという意味ではありませんので念のため。

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は肩書によるものか、バイキング、ひるおびなどテレビ出演が急増。ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。主な著書に『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊・55万部。

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