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音声SNS・Clubhouse初体験、これはとりあえずコロナ禍という状況ではすてきな雑談サービス

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
音声SNS・ClubhouseのRoom画面。さらっとはじめてさらっと終われる

この数日、日本で突然Clubhouseという音声SNSに注目が集まりました。

なぜ、今音声でSNSなのか?ということについては、いくつかの理由があるでしょう。仕事でビデオ会議に追われており、スマホを広げれば動画ばかり、これではネットの利点のひとつでもあるながらでなにかするということがなかなかできなくなってきています。さらに、この傾向はコロナ禍で加速していることは言うまでもありません。

また、AirPodsが火をつけたワイヤレスヘッドホンの利用が拡大していることも、音声サービスの流行を後押ししているとも考えられます。大抵のワイヤレスヘッドホンにはマイクが装備されていますし、ノイズキャンセリング機能がついているのも当たり前になってきましたから、とりあえずワイヤレスヘッドホンさえあれば、スマホでも音声を快適に楽しむ準備はできています。

さて、そのClubhouse。まずはなんで今日本で?という疑問があります。その理由というのは、簡単にいえば、つい最近やっと日本の電話番号にも招待状が送れるようになったということらしいです。某サービス提供会社界隈から広まったという噂もあります(この件、追加情報があればアップデートします)。余談ですが、Clubhouseのプロフィールはだれに招待されたのかの記録が残っているので、それをたどっていくと、どっかで日本での流行の起点を探すことができるかもしれません。

話を先に進めましょう。

このClubhouseの特徴がどこにあるのかというと、とにかく決定的に違うのが、招待もログインも最初のフレンドリストなども、すべて電話番号と電話の連絡帳をベースにしていることです。この考え方の違いが、これまでのSNSとUIやそこからの体験を違うものにしていると、とりあえず理解してもらって大丈夫です。サービス提供側も、まずは電話を普通にするような、それぐらいの親しい間柄からはじめて欲しいと考えていると言ってもいいでしょう。

で、このClubhouse。完全招待制であり、iPhoneアプリのみでの利用であり、かつその招待枠が少ない上に(初期値は2枠のみ)、さらに音声のサービスですから、画面のショットだけ見てもなんのことやらわからないというサービスです。

ClubhouseのWebサイト。ほぼなにも書かれておらず、アプリのダウンロードが案内されるのみ。現在、アプリをダウンロードしても招待状がなければ、ID取得以外のことはできない。
ClubhouseのWebサイト。ほぼなにも書かれておらず、アプリのダウンロードが案内されるのみ。現在、アプリをダウンロードしても招待状がなければ、ID取得以外のことはできない。

https://www.joinclubhouse.com/

(Clubhouseアプリのダウンロードはこちら

ということで、記事でその体験を説明するのがむずかしいサービスでもあります。とはいえ、まだまだ日本で体験している人も少ないということで、少しでもその雰囲気が伝えられればと思います。

UIの感覚は、Snapchatなどに近いです。つまりサービスの体験を得るために必要なタップ数は極限と言っていいほどに減らされています。この感覚を一応説明すると、電話番号を連絡帳に登録しているほどの間柄であれば、コールがあればとりあえず電話に出ますよね?そういう感じです(これでとても伝わる感じはしませんが)。

スマホでClubhouseからくる通知をタップして、それがRoomの案内だったりすると、いきなりRoomの中で声が流れてくるというのは、これまでのSNSのUIに慣れていると戸惑う人もいるのではないかと思います。

そして、招待状を受け取るところから、Clubhouseの独特な、でもすごく気が利いているUIのチュートリアルのようなものが始まります。

ClubhouseでのWelcome画面
ClubhouseでのWelcome画面

ここでClubhouseに人を招待した人は、招待された人にClubhouseの遊び方の説明をすることができます。ここから、そのままあたらしいRoomに移行することもできます。

そして、現在Clubhouseで作れるRoomは3種類あります。OpenとSocialとClosedです。

Clubhouseで作れるRoomは3種類
Clubhouseで作れるRoomは3種類
  • Open、だれでも聞ける
  • Social、モデレーターがフォローしている人たちは聞ける
  • Closed、選ばれた参加者のみ聞ける

そして、これらのRoomをいきなり開始することもできますが、自分がモデレーターになり、カレンダーからイベントを設定することもできます。これはイベント予告をできるので、Roomの内容次第ではイベントにした方がいいものもあるでしょう。その場でGoogleカレンダーなどの自分のカレンダーに予定が追加できるようになってもいます。これは親切。

Clubhouseのイベント設定画面
Clubhouseのイベント設定画面

ちょうど、とあるメーカーの新製品プレミア発表会がYouTubeで開催されたので、そのウォッチパーティーも勝手にやってみました。なお、イベントを立てるとURLが発行されて、外部に貼ることができます(とはいえアカウントを持っていないと何も見えませんが)。

Clubhouseのイベント画面
Clubhouseのイベント画面

ウォッチパーティーイベントを実際にやってみてわかったのは、動画を見ながらのウォッチパーティーって、それなりに面倒ではあるのですが、Clubhouseだとそれがホントに簡単にできるということです。お客さんはほとんどいませんでしたが(笑)。

そして、自分のフォロワーのClubhouseの動きは、イベント情報だけではなく、ほぼ全部通知で見ることもできます。これがけっこうな落とし穴といえば、落とし穴になっています。

Clubhouseではほぼ1タップでやりたいことができるようになっていますし、さきほども説明したように、これは通知でも同じです。

だって、親しい人が何人か入っているRoomがあれば、いきなり話を聞き始めることになっても問題ないでしょ?というのが、Clubhouseの考え方なのです。

これは、良く言えば「偶然の出会い」、悪く言えば「ソーシャル事故」が発生します(笑)。

すでに私は1回体験していますし、コロナ禍ということもあり、ここ何か月も話ができなかった人とも、そのおかげでおしゃべりをすることができました。そして、その雑談の時間がひどく楽しかったのです。

長くSNSをやっていると、なんか見たことあるアイコンの人なんだけど、直接話をしたことがない人なんてたくさんいます。そういう人とも、共通の友人がいるRoomなら、意外と話ができてしまうものです。これがZoom飲み会だと、いきなり顔が目の前に出てきてしまいますから、お互いにどうしても構えてしまいます。

でも、ClubhouseのRoomでは、目に見えるのは基本アイコンだけ。だれかが話をしていれば、そのアイコンが軽く波動のようにアニメーションするのが見えるだけなのです。この雑談のためのほどよい画面はよく練り上げられているなあと、実に感心しました。

実際、とあるRoomで話をしていたら、私は画面を見ずに話をしていたので、気づけばモデレーターだった友人はいなくなっていて、Clubhouseではじめて話をした人と2人で話をしていました(笑)

ただ、自分の界隈以外のイベントとか動きは逆にあんまり見えないようにも設計されており、簡単に全体が見えないようにもなっています。そう、ツイッターのようにいきなりソーシャルの大海原に出されてしまう危険性が少ないのです。

まだ2日ほどのClubhouse体験ですが、コロナ禍でこの1年ほとんどすることがなかった目的のさほどない雑談をゆるゆるとできたというだけでも、私にとってはClubhouseはありがたいサービスです。

さらっとはじめてさらっと終われるClubhouse。ここでは、他のSNSでこれまで見てきたようなフォロワー数で優劣を判断するようなことではなく、ユーザー同士の関係性の方に焦点が変化していく気配があります。

言ってみれば、PV数よりもハイコンバージョンに注目が集まる世界。ここにも、ClubhouseがこれまでのSNSとは違う期待を集め始めている理由があると言っていいでしょう。

※Clubhouse画面はいずれも筆者によるキャプチャー

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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