Yahoo!ニュース

「セントバーナード」など合わせて約10匹が虐待死か。動物の死骸はゴミか、死体遺棄にはならない

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

20代のふたりの女性が、「セントバーナード」と「フレンチブルドッグ」を衰弱させて死なせたなどとして逮捕されました。

他にも犬と猫の死骸が8匹、そしてインコの死骸も2羽が見つかったと北海道ニュースUHBが伝えています。

今日は、ペットの死骸はゴミなのかと、愛するペットが死んだときにはどうしたらいいのか見ていきましょう。

衰弱死の動物虐待の内容

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

小樽で起きたこの事件をもう少し詳しく見ていきましょう。

ふたりの女性が、2022年12月から2023年5月まで小樽市の一軒家に住んでいて、飼育していたセントバーナードとフレンチブルドッグに対し餌や水を与えないで衰弱死させた疑いが持たれています。その2匹の死骸を放置して引っ越ししました。

他の人が、その一軒家を新しく借りようと内覧したとき、セントバーナードは床に横たわり、フレンチブルドッグはオリの中で死んでいるのを発見しました。2頭とも腐敗していたということです。

それで、元の借主の現在の自宅に行くと、先に見つかった2頭を含め約10頭の犬と猫の死骸に加えて2羽のインコの死骸も見つかりました。

これらのことより、動物の適切な世話をしなかったということでネグレクト(※)による動物虐待容疑で、動物愛護法違反で逮捕されたのです。

※ネグレクトとは、(ペットの場合でも)適切な世話をしない飼育放棄です。十分な水やフードを与えないこと。

動物虐待にはなりますが、死体遺棄罪にはならない

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

死体遺棄罪という法律は、簡単にいえば、火葬などの一般的な埋葬の方法を行わないで、人の死体(遺骨や遺髪)を捨てることです。亡くなった家族の葬儀を行わず、自宅などに死体を放置したような場合も、死体遺棄罪にあたります。

一方で、犬や猫の死骸を自宅に放置していても、それは、死体遺棄とはならないのです。法律では、動物はモノ扱いで、人と同じような死体遺棄罪には、問われないということです。

このふたりの女性は、動物を適切に飼育していなかった動物虐待の容疑なのです。

どのような経緯で、セントバーナードとフレンチブルドッグ、そして他の犬や猫やインコを衰弱死させたのかはわかりませんが、せめて犬や猫の死骸を尊厳を持って供養してほしかったです。

ペットの死骸はゴミ扱い

ペットは家族の一員と言われていますが、実際は死体遺棄罪に問われないように、死体はゴミ扱いです。

動物の死骸は「一般廃棄物」にあたります。こちらも法律上はゴミですが、実際にはゴミ扱いしないよう、工夫している自治体が多いです。

この事件が起きた小樽市も「死亡したペットの火葬について」のサイトを見れば、保健所で手続きをして、犬管理所に死亡したペットを持参すると火葬をしてくれます。料金は、大きさによって異なりますが、2000円から5000円です。

そこでは、遺骨の返還や火葬の立ち会いはできませんが、慰霊碑があるので、いつでもお参りはできるそうです。

一般に愛するペットが死んだ場合は以下の方法です。

1、飼い主が自ら処理

広い敷地なら自己所有地への埋葬。都会ではあまりしない 

2、飼い主が行政へ処理依頼

3、飼い主が民間事業者や寺院等へ依頼

この場合の火葬は、遺骨が戻ってくることが多く、墓なども作れる

最近は3のような民間の動物霊園に依頼する飼い主が増えています。

多頭飼育崩壊では、死骸が数十頭という記事

多頭飼育でも、適切に飼えないというのはあってはならないことです。犬や猫は、飼い主が世話をしないと自分で水を汲んだり、餌を買いにいったりできません。適切に世話できる人だけが、犬や猫を飼うようにしましょう。

そんなことを怠った飼い主が、死骸を行政に依頼すると虐待の罪に問われるかもしれないと考えて、死体が山積みされることもあるかもしれません。

動物愛護法が動物が死んでからのことを想定していないため、火葬・埋葬業者の同法での規制ができないのが現状であります。

動物の死骸を放置しておくことは、衛生的にもよくないです。ハエやゴキブリが発生したり、悪臭が漂ったりするので、近隣住民にも迷惑が被ります。

せめて、死体を供養するという気持ちを持ってほしいです。

愛犬や愛猫が死んだら尊厳のある供養を

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

愛犬や愛猫は、家族の一員で少しでも長生きして傍にいてほしいと思います。

家族同様に大事にされ、死んだあとも丁寧に弔われるペットがいます。その一方で、今回のように、人間に愛されなかった動物のことも考えていく必要があるでしょう。

死骸を置いていても死体遺棄罪には問われませんが、動物の尊厳のある供養をしてほしいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事