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柴犬の死因2位は「神経疾患」…高齢ペットのための老犬ホームの問題点

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査(2021年)によりますと、犬の平均寿命は14.65歳、猫は15.66歳。平均寿命は犬猫ともに2010年以来、最長を記録しています。

愛犬が長生きするのはこの上ない喜びですが、手放しで喜べない一面もあります。

日獣会誌75「動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析」によりますと、一般的な犬の死因はもっとも多いのが腫瘍、その次は循環器疾患、泌尿器疾患と続きます(がん、心臓病、腎臓病です)。

しかし、柴犬の死因1位は腫瘍で他の犬と同じですが、その次は神経疾患です。つまり、柴犬は犬種的に認知症による徘徊や夜鳴きなどをしやすいのです。

日本では柴犬は人気の犬種です(柴犬系のミックスの犬も多くいます)。

SNSを見ていても散歩を嫌がる柴犬や夜に飼い主を起こす柴犬など、愛らしい投稿がたくさんあります。

そんな柴犬の死因の2位が、神経疾患だとまだまだ知らない人がいます。

14歳を過ぎて柴犬が認知症になり、徘徊して夜鳴きになどをすれば、面倒を見きれない場合もあります。

そのうえ、柴犬はチワワなどの小型犬と違って体重も10キロぐらいありますし、飼い主以外の人には懐きにくいなどの問題点もあります。

柴犬以外の犬でも認知症になりますし、他にも飼い主がずっと面倒を見られなく場合があります。そんな時代の要望から、「老犬ホーム」があります。

老犬ホームとは?

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イメージ写真写真:アフロ

老犬ホームは、老人ホームの犬版です。

飼い主の高齢化で、犬の面倒を見られなくなることもあります。他には犬の問題として、高齢になり認知症になり徘徊する、夜鳴きするなどの健康状態が悪化して世話がかかるなどがあります。

飼い主が面倒を見きれなくなった犬たちのための施設です。

これらの施設では、老犬や健康上の問題を抱えた犬に対して適切なケアを提供し、安心して生活できる環境を提供することを目的としています。

老犬ホームは、社会の変化や犬の飼育に関する考え方の変化に伴い、近年増加しています。

老犬ホームの問題点

柴犬が神経疾患になり、夜鳴きはするし徘徊するので、もう飼い主が見きれないケースが出てきます。もちろん、内服薬でおさまればいいのですが、そううまくいかない場合もあります。

飼い主は、夜に眠れないので体力的にも精神的にも参ってしまうケースがあるのです。「それでは、老犬ホームに預ければいいかな」と思っている飼い主もいるかもしれませんが、以下のような問題点があるのです。

・料金がかかる

その施設によって違いますが、ひと月に10万円かかるところが多いです。もちろん、それ以上のところもあります。

愛犬が、1年以上生きた場合は、100万円以上かかることになります。

・24時間体制でないところもある

老犬の場合は、夜中に徘徊したり鳴いたりすることが多いです。

ぐるぐると回る、狭いところに入る、起きたいのに起きられない、このような状態だと喉が渇いていても水を飲むこともできません。

老犬ホームは、24時間体制でないところもあります。夜になると無人になるところもあるので、その辺りは気をつけてください。

・いつでも会いにいけない

愛犬を老犬ホームに預けても、飼い主は愛犬に会いたいです。本当は自分がずっと面倒を見たかったけれど、いろいろな事情で世話できなかったのです。

会いたいと思っても、老犬ホームによっては、なかなか会えないところもあります。

・投与をちゃんとやってもらえないところがある

老犬なので、心臓病などの病気を持っている子は多いです。柴犬の場合は、てんかん、認知症を持っている子もいます。

内服薬を指示通りに投薬してもらうと症状が緩和できます。投薬がうまくいかないと、老犬は咳が出る、発作が起きるなどしてQOLが下がります。

よい老犬ホームの見分け方

・動物取扱業登録証を提示している

老犬ホームは犬を預かる施設なので、動物取扱業の登録が必要です。ホームページを見て、それが提示されているか確かめましょう。

・24時間体制である

夜中に人手が少なくなりがちですが、やはり24時間体制は必要です。

・いつでも愛犬の様子を教えてもらえる

電話やメールなどしたら、愛犬の様子をいつでも教えてもらえるところがいいです。そして、動画などを送ってくれる老犬ホームはよりいいですね。

犬の飼い主の心得

犬の飼い主は、平均寿命が約14歳であることを頭に置き、若いときから「老い」について考えておくことが大切です。老犬になり問題が起こったときに、慌てないですみます。

・7歳を過ぎたら、老犬ホームの見学に行ってみる

・一時預かりを利用してみる

老犬になり急に預けると愛犬も落ち着かないので、一時預かりを利用してみるといいですね。

環境が変わって、体調が変化するかもしれませんが、合わない場合は、重篤な状態になることもあります。そのような老犬ホームなら預けない方がいいです。

もし老犬ホームを考えているのでしたら、元気なうちに一時預かりを利用してみるのもいいです。

・犬のために貯金をしておく

犬は若いときに全く病気をしなくても、高齢になると病気になりやすいです。人のように健康保険がないので治療費が嵩むこともあります。犬のために貯金をしておくと安心です。

とくに柴犬は、神経疾患が他の犬より出やすいし、体重も10キロ近くあるので、高齢になり病気になると医療費がかかります。

まとめ

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イメージ写真写真:アフロ

犬の平均寿命が約14歳です。飼い主は、犬の老いの準備をしておくといいですね。

犬を飼う場合は終生飼養が基本です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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