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山口周南市の野犬が問題に。地域猫ならぬ地域犬とはいかないわけとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

2018年から2019年に、山口県周南市の周南緑地公園を中心に野犬がわがもの顔で歩き回り、散歩もできないなど、テレビ番組で周南市の野犬問題が大きく取り上げられました。それから、3年経っても野犬は、見た目は減っているけれど、まだ周南緑地公園にいると、日刊新周南 電子版では伝えています。

なにが問題なのかを見ていきましょう。

狂犬病予防法に違反

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イメージ写真写真:イメージマート

日本には、狂犬病予防法という法律があります。

簡単に説明すると、犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合は、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、その犬の所在地を管轄する市町村長に犬の登録を申請しなければならないのです。

そのうえ、犬の所有者は、その犬について狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならないと決まっています。

つまり、この周南緑地公園の犬は、野犬なので所有者がいないし、年1回の狂犬病の予防注射がされていない可能性が高いので、狂犬病予防法に違反している疑いが高いのです。

行政は都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員を任命して、予防員は登録を受けず、もしくは鑑札を着けず、狂犬病の予防注射を受けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならないと法律で決まっているのです。

この記事を読むと、3年経っても野犬問題が解決していないことから、山口県は狂犬病予防法に対しての認識が甘いように思われます。

野犬を捕獲するために

山口県周南市は11日、犬の散歩中の女性が野犬に左脚をかまれて軽傷を負ったと発表したと読売新聞が伝えています。

散歩中の女性や犬は、野犬に襲われて、精神的にも恐怖を味わったことでしょう。

この記事を読むと、野犬が悪いように感じますが、もともとは飼い犬が遺棄されて、このように野犬になったのでしょう。野犬がいる環境を作らないことが大切です。

・餌をあげない

・ゴミ箱を設置しない

・防犯カメラを多数設置する

などをして、犬を遺棄したり、餌をあげたりする人が出ないことを監視して、一刻も早く野犬を捕獲することです。

野犬の問題とは?

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イメージ写真写真:イメージマート

殺処分ゼロを目指して犬の保護活動をしているのは、すばらしい取り組みです。

飼い犬の里親を見つけるのも難しいことが多いのですが、野犬はさらにハードルが高いのです。

・野良は人に懐きにくい

・野良は自然の中でのびのびと暮らしていたので、ケージに入ることを嫌う

・野良はフィラリア症の予防をしていないで、外にいたためフィラリア症になっている確立が高い

このように、新しい飼い主を見つけることは、そう簡単ではないのです。

地域猫のように、地域犬にすれば?

狂犬病予防法で所有者がない犬は、捕獲する必要があるので、地域猫のようにいきません。そして、犬の所有者を借りに行政にしても年1回、公園の中で捕獲するのは難しいです。

読売新聞が伝えているように犬は、猫と違って群れ社会の動物で、自分のテリトリーに入ってきた犬や人間を襲うこともあるからです。

犬の行動を理解して、捕獲して野犬などの望まれない命を増やさないように、犬も不妊去勢手術をして遺棄しないようにしていただきたいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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