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【救われた命】街をさまよっていた「地域猫」に新たな飼い主が。やっぱり室内で飼ってあげたい

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
地域猫のイメージ写真(写真:イメージマート)

北海道放送は、頭部と尻尾がないネコの死骸が釧路市で発見されたと報じました。ネコは鋭利な刃物で切断された可能性があり、動物愛護法違反の疑いで警察が捜査中。世の中には、外にいる猫を捕まえて、殺す人がいるのです。

地域猫とは、不妊去勢手術をして地域の人が世話をしている猫です。このような猫は性格が温厚な子が多く、しかし、外にいるのでいつ危害を加えられるかわからないのが現実です。今日、紹介するのは、人懐っこい地域猫の話です。

先ほど飼い始めた猫です

動物病院は、何か調子が悪い動物が来院することが多いです。予防注射とか健康診断もありますが、いきなり飼い主に「先ほど、飼い始めた猫です」と言われることはあまりありません。

「いま、拾ったばかりです」と飼い主のAさんに言われたので、キャリーケースを覗き込むと、そこに大きな猫がいました。飼い主が拾ってすぐに動物病院に来られる場合は、子猫のことが多いのですが、今回は立派な成猫でした。

地域猫なので、ワクチン接種と不妊去勢手術も終わっている

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

クロちゃん(仮名)と名付けられた猫はキャリーケースの中でおとなしくしていました。しかし、外で暮らしている猫なのでどんな性格かがわかりません。「診察、嫌がりますかね」と筆者が尋ねると「みんなが世話をしているので、おとなしいとは思いますが、診察になるとどうなのかな」とAさんは答えました。

クロちゃんが、診察室に出してパニックになると困るので、洗濯ネットに入れました。前脚だけ洗濯ネットから出し、猫エイズ(FIV)と猫白血病の血液検査をしました。どちらも陰性で、目ヤニもなく、歯茎も腫れていなくて一般症状としては良好でした。

そのことをAさんに伝えると、飼い主は「家で飼うので、他のこともしてほしい」と言われました。

このような場合は、以下のことをすることが多いです。

・ワクチン注射接種

・不妊去勢手術の予約

・ノミダニの駆除 予防

クロちゃんは、不妊去勢手術もワクチン接種を済ませている地域猫でした。

筆者が治療をしている地域は、野良猫が以前に比べて減っていますが、それでも野良猫はいます。以前に比べて、地域の人の意識が上がり耳をカットされている猫が多いので、不妊去勢手術をされてきています。そのうえ、一部の猫は、ワクチン接種も受けているようになってきています。

クロちゃんは、ノミダニの予防をしていないということだったので、薬を首の付近に垂らしてキャリーケースに戻しました。

なぜ、クロちゃんを飼育することにしたのか?

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

クロちゃんを飼育しようとした動機をAさんに尋ねました。

Aさんは

「クロは、多くの人に世話してもらっています。それだから、体格もいいでしょう。外で機嫌よく暮らしているので、室内飼いにしたら、嫌かなと思ったのです。でも、ネットで猫が虐待されているニュースをよく見ます。こんな人懐っこい子、猫に危害を与える人の標的になりやすいから。それに雨がかからない環境になるし」と淡々と話しました。

Aさんは、見たところ20代後半の若い人です。最近は、若い人のなかで、ネットにある猫の残酷な記事を読んで、地域猫はやはり飼い猫にしてあげないとという意識の人が増えてきたように感じます。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

地域猫や野良猫など、外で暮らすことになった猫は、普通の人から危害を与えられず暮らしていると思っています。もちろん、排せつ物の被害にあっている人もいて、猫が嫌いな人もいます。

地域猫や野良猫は、人間が飼育崩壊した結果、外に暮らすようになった猫たちです。猫殺しや虐待の記事をネットで読むに堪えないです。しかし、外で暮らす猫は、悲惨な事件に遭うことを理解して、このように成猫を飼ってくれる人が、少しずつでも増えていることは望ましいです。

Aさんは、なんの気負いもなく、平常心で「初めて猫を飼うので、わからないことがあったら教えてください」と言われて帰っていきました。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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