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寒空の下で暮らす野良猫を救いたい。どこの動物愛護団に寄付すればいいかわかる5つのポイントとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

寒空の下で、過酷な日々を生きる野良猫たちを目にして、この子たちを助けたいと思う人も数多くいます。

野良猫を保護できればいいのですが、住宅事情、年齢、時間がない、もう猫を飼っているからなどの理由で、簡単に猫を飼うことができない人もいます。そのような人の中には、寄付をしたいけれど、どこの動物愛護団体などにすれば、適切に動物のために使わってもらえるかをわからないで困っている人もいます。

今日は、どこの動物愛護団体が適正な飼養環境なのかがわかる5つのポイントについて述べます。

1、猫や犬を10匹以上保護していたら、第二種動物取扱業を取得しているか?

環境省サイトより 第二種動物取扱業の規制
環境省サイトより 第二種動物取扱業の規制

猫や犬などの中型の哺乳類を10頭以上保護していたら、第二種動物取扱業が必要です。

野良猫などの保護活動をしている人のなかには、猫を保護することに懸命で「動物愛護管理法」という法律をよく理解していない人もいます。

もちろん、野良猫を保護して営利活動をしているわけではないのですが、数によって、この第二種動物取扱業が適応されます。

第二種動物取扱業は、野良猫など10頭以上飼養している施設ごとに、その所在地の都道府県知事または政令指定都市の長に届け出なければなりません。届出の対象は、人の居住部分と区分できる飼養施設において、犬や猫なら10頭以上飼養または保管する場合となります。動物愛護団体の動物シェルター、公園などでの非営利の展示などが該当します。

つまり、SNSでペットフードや寄付を募っていたり、クラウドファンディングをしたりしている人たちが、飼養または保管している犬や猫が10頭以上であれば、まず第二種動物取扱業の表示があるかを確かめましょう。

2、ケージの基準は適切か?

保護猫を入れるケージの基準が動物愛護管理法で決まっています。寝床や休息する場所が違うケージを「分離型」のケージと呼ばれています。

猫の分離型ケージの基準は以下の通りです

・タテの大きさ 体長の2倍以上(犬も同じ)

・ヨコの大きさ 体長の1.5倍以上(犬も同じ)

・高さ 体高の3倍以上(犬は、2倍以上)

東京動物愛護センターのサイトより
東京動物愛護センターのサイトより

保護猫の場合は、「一体型」のケージと呼ばれている寝床と休憩するところが同じが一般的です。上記の分離型のケージより大きな床面積が必要になります。

このケージの基準を知っておいて、投稿された画像などから適正な飼養環境か確かめましょう。

3、収容頭数とスタッフの数は適切か?

1頭でも多くの野良猫を救いたいという気持ちはわかります。

その一方で、多くの猫を保護しても適正な飼養環境でなくなってしまい、多頭飼育崩壊に陥ることもあるので、収容頭数とスタッフの数は法律で決められているのです。

新規の動物愛護団体の猫なら、スタッフ1人当たり30匹(繁殖猫は25匹)までです(犬なら1人当たり20頭で、繁殖犬なら15頭)(現在は移行期間で、下述します)。

東京動物愛護センターのサイトより
東京動物愛護センターのサイトより

この法律は、令和3年6月1日に施行されたので、以前からある動物愛護団体などはすぐに移行することができないため、いまは移行時期です。

令和5年6月1日からは、猫なら、スタッフ1人で40頭(繁殖猫なら35頭)までなのです(犬なら30頭、繫殖犬なら25頭)。

だから、いくら第二種動物取扱業を持っていても、あと半年もしないうちに、上記のような数にする必要があります。いま、たとえば、1人のスタッフで50頭の保護猫の面倒を見ていても、6月になれば40頭にしなければならないのです。

SNSの投稿で見かける数多くの保護猫を飼養しているシェルターなどに寄付しようとしている人は、この数の期限が迫っていることをシェルターが知っているのかを確かめることも大切です。

4、収支報告は公表されているか?

寄付をする場合、どのように寄付金をつかったのを明記しているところにしましょう。

支出の中には以下のような項目があるか確かめてください。

・給料、スタッフの諸経費

・旅費、通勤交通費

・動物医療費、動物の食費

・動物の輸送費

収入の中には以下のような項目があるか確かめてください。

・寄付金

・里親の譲渡費

・放棄の引き取り費

など、自分が寄付したものが、適切に動物のために使われているところなのかを確かめることは大切です。

5、近所の評判はどうか?

いまの時代はSNSを見て、動物愛護団体に寄付をしようと思っている人が多いので、近所の評判を確かめることは難しいかもしれません。

もし、その団体に行く機会があれば、近所の人に評判はどうかを確かめることも大切です。

保護猫が数多くいると、ニオイ、ゴミの問題が出てきます。適切に処理されていないとゴキブリなどが多量に発生して、衛生的な状態が保つことができず地域住民にも迷惑をかけることになるからです。

まとめ

野良猫が数多くいるので、そんなきれいごとを言っている場合ではないと、多頭の野良猫を保護したい気持ちは理解できます。

その一方で、10頭以上の犬や猫を保護している場合は、動物愛護管理法という法律が適用されることを知っておくことは大切です。

猫を適切な環境で飼養しないと、猫がふん尿まみれになったり、病気でも動物病院に連れて行ってもらえなくなったりなどネグレクト状態に陥ることになるのです。

適切な愛護団体に寄付をしないと、動物愛護管理法に違反している愛護団体を増やすことになるので、かわいそうだからという気持ちだけではなく、きちんとチェックしましょうね。

もちろん、野良猫を救うことは大切ですが、健全な団体が残って、適切な環境で猫を飼養してもらわないと、結局は猫が健全な環境で生きることは難しいのです。

将来、動物愛護団体が必要ないような社会になることを切に望みます。そのためには、飼い主が長寿になった猫を責任を持って終生飼養すれば、夢でないのです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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