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猫のサブスク「ねこホーダイ」が2週間で停止。あぶり出された3つの保護猫の問題点とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

月額380円の会費さえ払えば、提携する保護猫シェルターが保護・飼育する猫を審査やトライアルなしに譲渡してもらえるという猫のサブスク「ねこホーダイ」に対し、「猫は命あるものだ」などと批判が起きてネット上で大炎上し、開始からわずか2週間で停止に追い込まれました。

「ねこホーダイ」から見えてきた保護猫の問題点とは?

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「ねこホーダイ」という名前を見たとき、猫に対して愛情を持っているのかと疑問を感じるネーミングのセンスだと思いました。このサブスクは、猫を命あるものと扱っていなくて批判するべきところは、猫サブスク「ねこホーダイ」に断固反対。獣医師が本気で訴える5つの理由という記事に書きました。

その一方で、この「ねこホーダイ」は、そんなきれいごとを言っていられない保護猫の問題点が浮き彫りになりました。そのことを見ていきましょう。

1、行政は殺処分ゼロとうたっているが、保護団体が引き受けていることが多く保護猫シェルターどこも満杯

行政の中には、猫の殺処分ゼロとうたっているところがあります。それを言葉通りに理解するとその地域の人は、動物に対する意識が高くて、保護された野良猫がほとんどいないように思われがちです。しかし、多くの殺処分ゼロとうたっているところは、保護団体が引き受けているのです。そして、保護猫シェルターは、どこもほぼ満杯なのです。

2、猫の寿命が延びていることによる終身飼養の困難さ

動物愛護法で、猫の終身飼養が基本になっています。

猫の寿命が約15年で、医学が進むと将来的に30年になるかもしれないので、終身飼養が難しくなってきています。

猫の寿命が10年もなかった時代だと、終身飼養が比較的可能でした。いまは、そうもいかなくなってきているので、猫の一生を何代かで飼養するシステムを考える時期になっているのです。

3、経済的に裕福で時間のある高齢者が保護猫を飼いにくい

意識が高い高齢者でも、年齢のことがあり、保護猫を飼いにくくなっています。もちろん、高齢者は猫の終身飼養が難しいかもしれませんが、元気で裕福で時間のある高齢者に、里親になってもらうのもいいのではないでしょうか。

それと同時に、高齢者である飼い主が病気や施設に入居した場合は、その後の面倒をみてくれるシステム作りを考える必要があります。

全国に多くいる保護猫をどうすればいいの?

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人間の里親制度などで、「レスパイト」というものがあります。レスパイトは一時中断、息抜き、休息などを意味する英語です。

高齢者や単身者の飼い主が、病気、入院、仕事などでずっと猫を飼育できないことが起こってきます。そのときに、レスパイトのシステムがあれば、猫の命を繋ぐことができるのです。

レスパイトの意義

猫を飼うということは、24時間365日の面倒をみるということです。どんなに体力、気力のある飼い主でも疲弊することがあります。猫のためにも、飼い主は適切に休息をはさみながら、自身の心と身体を労ることが大切です。そうすることで、遺棄が少なくなります。

レスパイトの方法

猫の飼養に疲れる、病気になるなどのやむを得ない事情がある場合は、猫を一時、預かってくれるシステムがあれば、高齢者でも保護猫の面倒を見ることができます。

自治体が、保護猫の譲渡をするときに、トライアル期間を設けて厳重な審査をすることはもちろん大切ですが、いままで譲渡先になっていなかった高齢者にも、このようなレスパイトのシステムがあれば、保護猫シェルターの猫を減らせることができるのではないでしょうか。

まとめ

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人間が、猫は繁殖能力が旺盛な動物だということを理解せず、不妊去勢手術をしなかった結果、このような多数の保護猫を生みだしました。保護猫は、人間が作り出したものです。

保護猫が、外で生きていくと、温かい寝床がない、食べるものもない、そのうえ、虐待される可能性まであるという過酷な環境なのです。

猫を飼うときは、必ず不妊去勢手術をするという認識を子どもの頃から教育して、保護猫シェルターが多頭飼育崩壊しないようにする必要があります。未来は、保護猫シェルターがなくなる日本になるために、みんなで知恵を出すことは大切です。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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