Yahoo!ニュース

【猫の宿命 慢性腎不全】17歳のミュウちゃんが先代の子の分も生き抜いてもらうためできることは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
撮影筆者 ミュウちゃん

猫の寿命は、飛躍的に延びて、将来的には30年になるかもしれないといわれています。

T家のミュウちゃんは元捨て猫で慢性腎不全という病気がありますが、30歳を目指して治療をしています。

その理由のひとつは、先代の猫が、去年、がんで亡くなったことです。

診察台にいるミュウちゃんは、「本当は家でのんびりしたいけれど、私は愛してくれるママが連れてくるのでおとなしくしているわ」とでもいいたげにケージの中で固まっています。なぜ、ミュウちゃんは、懸命に治療に通っているのかを見ていきましょう。

やまとちゃんは、14歳でがんで亡くなった

ミュウちゃんより年下だった元捨て猫のやまとちゃんが、腎臓のリンパ腫で、去年の春に亡くなりました。

やまとちゃんの体調が優れないので、検査などをしてリンパ腫だということが、判明。治療をしましたが、3カ月程度で天国にいきました。

Tさんは、「懸命に治療をしたけれど、治すことができなかったので、猫についてもっと勉強しなければ」と思われたようです。

猫の平均寿命は約15歳なので、決して、やまとちゃんが、短命というわけではありません。しかし、Tさんは、もっと元気で長生きしてほしいと願っています。

ミュウちゃんには、まずは20歳までは生きてほしい

撮影筆者 ミュウちゃん
撮影筆者 ミュウちゃん

「やまとがあっという間に逝ってしまいました。ミュウにはできることは、なんでもしますので」とTさんは、やまとちゃんより2歳上のミュウちゃんを連れてきました。

ミュウちゃんは、15歳を過ぎているので、加齢による初期の「慢性腎不全」になっていました。

肝臓などの臓器は、再生能力がありますが、その一方、腎臓は再生能力がほとんどないため、一度悪くなるとよくならないことが多いです。いまのところ、猫の腎不全の薬は、対症療法しかないのが現状です(将来的には、もっと新しい治療法が出てくるかもしれませんが、2022年ではまだです)。

ミュウちゃんは、自宅では皮下点滴をするのは難しいので、Tさんが動物病院連れてきています。それだけでは終わらず、Tさんは自宅で、ミュウちゃんに内服薬、サプリメントを飲ませて、腎臓食用のフードなどをあげています。

「ミュウは、薬を飲むことを嫌がります。協力的ではないのですよ。それで、私の手は噛まれてもいいように、軍手をして薬を飲ませています」とTさんは、教えてくれました。

猫に内服させるのは、難しいことが多いです。フードに薬を入れると、もうフードを口にしなくなる子もいます。猫は、一度、フードに薬を入れると覚えていて、次からはフードを食べなくなる子もいるのです。

猫に薬を飲ませる方法として、フードとは別に薬を飲ませることが望ましいことが多いです。そんな理由から、腎不全の治療をあきらめる飼い主もいます。

診察中に、Tさんの手にミュウちゃんとの格闘の痕を見ることがあります。「今日は、ミュウに内服するが一度は、失敗しましたが、2回目は成功しました。お薬が足らなくなるので、追加をお願いします」とTさんは、にこやかに言いました。

東京の息子さんのLINEもミュウちゃんのことばかり

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

ミュウちゃんは、免疫や再生を使った医療もしているので、腎臓の検査結果は悪化していません。

数カ月に一度、血液検査をして腎臓値を見ています。

「腎臓の値が、悪くなくてよかったです。東京にいる息子からLINEが来たと思ったら、ミュウは元気なの?とミュウのことだけです」とTさんは、笑いながら教えてくれました。

今年の猛暑で、ミュウちゃんの食欲が落ちているので、Tさんは、キャットフードを買いにペットショップをめぐっています。もちろん、ミュウちゃんは、腎臓用の処方食は食べていますが、飽きているようですので。

最後に

提供:イメージマート

いまのところ、猫の寿命は15歳程度ですが、飼い主の飼い方や知識やどの程度の治療をするかで、延びる傾向があります。

もちろん、動物病院に行けば治療費がかかりますが、獣医学は進歩していますので、慢性腎不全の治療も少しずつ進んでいます。

以前、猫の寿命が30歳へ【猫の腎不全の薬】を開発した東大大学院の教授に獣医師が質問しましたという記事を書きました。この記事の猫の宿命ともいうべき腎臓病の研究をしているAIM医学研究所代表理事・所長の宮崎徹先生が、開発された治療薬AIMが、一般治療に使われるようになれば、猫の寿命はさらに延びるでしょう。

ミュウちゃんは、お盆で帰省しているTさんの息子さんとエアコンのきいた部屋でまったりしているとのことです。ご長寿の猫になるには、飼い主の愛情が必要ですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事