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40キロ以上の大型犬ピットブルが動物病院から逃走し捕獲。闘犬の血筋を引く犬を飼うためには?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

千葉日報によりますと、4月6日午後6時5分ごろ、千葉の市川市の動物病院から大型犬のピットブルが失踪したと警察に通報があったそうです。

7日午前8時過ぎに、このピットブルは、警察官が「お座り」と言ったらそれにおとなしく従って、暴れたりすることもなく無事に捕獲されたようで、本当によかったです。

一般的にピットブルは、どんな犬なのかを見て、凶暴な性格の犬を飼うためにどうすればいいのかを考えましょう。

なぜ、ピットブルが逃げたか?

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千葉日報は以下のように伝えています。

犬は予防接種のために飼い主と病院に訪れていた。同日午後5時20分ごろ、首輪を外した状態で病院から抜け出したとみられる。

逃げ出した犬は体長130センチぐらいで、体重が40キロ以上。短めの茶毛だという。

つまり、ピットブルは、4月なので狂犬病予防注射を動物病院に接種しに来て首輪が外れて逃走したのでしょう。

4月の動物病院では、天気がよい日などは、フィラリア症の予防薬をもらったり、狂犬病予防注射をしたりと混雑することが多いです。

普段、聞き分けのよい犬でも、犬に会うと興奮して従順ではなくなることもあります。そして、このように逃亡してしまうこともあるのです。

ピットブルとは、どんな犬か?

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『デズモンド・モリスの犬種事典』よりますと、ピットブルの正式名称は「アメリカン・ピット・ブル・テリア」になっています。アメリカ合衆国で闘犬に使うために改善されたものです。このため、人間や他の犬への攻撃性があるため、安全な管理下におくことは大切です。

ピット・ブル、ピット・ブル・テリア、アメリカン・ブル、アメリカン・ピット・ブル・ドックなどとも呼ばれています。

(体重)

・雄15.8–27.2kg

・雌13.6–22.6kg

(体高)

・雄50cm前後

・雌50cmよりこぶり

(被毛)

・短毛

(毛色)

・毛色全ての色

・単色でなくて、模様がある場合も

(その他の体の特徴)

・筋肉質

・力が強い

・身体能力は高い

このようなパワフルな動物なので、一般的に必要運動量は毎日2時間以上の運動を1~2回です。

日本国内での飼育

ピットブルは、日本国内の飼育は禁止されていません。

茨城県では、「茨城県動物の愛護及び管理に関する条例」および施行規則で特定犬を指定しています。

茨城県の特定犬は以下です。

・秋田犬

・土佐犬

・紀州犬

・シェパード、ドーベルマン

・グレートデン、セントバーナード

・アメリカン・ピット・ブル・テリア

・上記以外に体高60センチかつ体長70センチ以上の犬

茨城の特定犬は、人や他の犬への攻撃性が危惧されるため、以下のような安全な管理下におくことが必要です。

・特定犬と書かれた標識を入り口に表示

・檻の中での飼育

が定められています。飼い主には責任を持った飼育としつけが求められています。

ピットブルは、国によって所有禁止にされているところもあります。

過去のピットブルの咬傷事故

2020年5月に、千葉県銚子市で闘犬として敷地内で放し飼いをされていたピットブルが逃げ出し、近隣の民家に侵入し住人の女性とトイ・プードルに噛みつきました。女性は全治40日の重傷を負い、トイ・プードルは死亡。そのため、銚子署は県動物愛護管理条例(係留義務)違反や過失傷害などの疑いで、飼い主の男性(当時53)を書類送検しています。

ピットブルを飼うときは

きちんとしつけをしていれば、飼い主には従順かもしれません。しかし、闘犬用に作り出された犬種であることは忘れないようにしてください。

ピットブルを1回見れば、わかるのですが、たいへん筋肉質です。そして、発達した顎を持っているので、骨を粉砕できる能力もあります。

筆者が、以前診察していたピットブル(雄)は、犬がいないときに予約で来られていました。大柄でマッチョな飼い主でした。飼い主は、この犬の筋肉が好きだと言われていました。しかし、この犬の特徴を熟知されて、だれもいないときに、受診されていたのです。動物病院にかかるときは、以下の点を注意してください。

・首輪が外れないように、家を出る前に点検する

・胴輪もつけておく

・他の動物とのトラブルを避けるために、予約する

・動物病院に連れて行くのが難しい場合は、往診にする

闘犬が好きな人は、世の中にはいます。闘うのが得意な犬なので、人間や動物を襲う可能性があり、そのことを肝に銘じて飼育してください。

もう10年以上前のことですが、NYの動物愛護センターに見学に行ったことがあります。そのとき、飼い主が手に負えなくなったのか、ピットブルやそのミックス犬が多くいたことを思い出します。しつけると飼い主には従順な犬ですが、くれぐれも事故がないようにしてください。ピットブルには、罪はないので、科学的な知識を持ち、そして1日2時間以上の運動ができる人がピットブルを飼いましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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