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2月22日は‟猫の日”【ノラネコの行動学】どこで食べて、どれくらい眠るのか知っていますか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:イメージマート)

2月22日は猫の日です。

今日はノラネコの行動や習性を見ていきましょう。ノラネコは、もともと外で生活していたわけではなく、人間が飼育放棄したものです。寒空の下でノラネコを見ると、ネコは寒さに弱いのでなんとかしたいと思う人が増えてきました。

家では飼えないけれど、ノラネコのお世話をする地域猫活動がだんだんと活発になっています(地域猫とは、ネコに理解がある人が不妊去勢手術やエサをあげるなどして外で世話されているネコです)。

今日は【ノラネコの行動学】を理解して地域猫活動をよりよいものにしましょう。それでは、彼らの社会のルールを紐解きましょう。

『ノラネコの研究』とは?

『ノラネコの研究』 伊澤雅子 文  平出衛 絵  福音館書店 福音館書店から写真提供
『ノラネコの研究』 伊澤雅子 文 平出衛 絵 福音館書店 福音館書店から写真提供

『ぐりとぐら』で有名な福音館書店の絵本『ノラネコの研究』の中で、文を担当している伊澤雅子さんは、哺乳類生態学の研究をしている学者さんです。

伊澤さんは、特にネコ科の動物の研究をしていて、この絵本の中で、ノラネコの生態について解説されています。

どのようにしてノラネコの行動を研究されたかは、本書を読むとよくわかります。24時間ノラネコにこっそりついて行き観察している伊澤さんの学者の探求心に脱帽です。地域猫活動をしている人にはおすすめの本です。

ネコが好きの人にも、ノラネコがどのように行動するのかを科学的に知っておくとネコをより理解できるようになります。それでは、ノラネコの行動学を見ていきましょう。

ノラネコの行動学

公園や路地で会うノラネコたちの社会のルールがわかれば、面白いです(ネコは道の端を歩きます)。地域猫活動をしていない人でも、ノラネコたちのルールがあることがわかり、いままでと違った視点で彼らを見ることができます。具体的に見ていきましょう。

1、ノラネコ同士一定の距離を保つ

ノラネコは、十字路などを歩くとき、他のノラネコがいないかどうかをよく観察してから渡ります。遠目で他のノラネコがいそうなら、その子が、遠ざかるのを見守ってその場で隠れています。出会い頭で会うということをしないのが、ノラネコのルールです。

2、草むらなどにゴロゴロしてニオイをつける

ネコは、目やあごの下に分泌物を出す腺があります。そのため、ゴロゴロてし自分のテリトリーにニオイをつけておきます。そうすると安心できるのです。

3、板などで爪とぎをして目印に作る

ネコは、自分のテリトリーで爪とぎをします。それは、ここが自分の住んでいるところだという目印になるのです。

4、メスネコが子育てをする

子ネコの世話は、全てお母さんネコがします。お父さんネコは手伝いません(たまに例外はありますが)。子育て中は、お母さんネコと子ネコだけの世界です。

5、決まったゴミ箱を漁る

ネコは規則正しい生活をしています。食べる時間や場所も決まっています。不規則な時間に食べたりするということはあまりないのです。

上記に加えて「よく眠る」というものがあります。

家ネコは、よく眠るのは知られています。ノラネコは、外では安心して眠ることが難しそうです。しかし、伊澤さんの観察の結果によりますと、18時間以上も眠っていたそうです。

地域猫活動でノラネコの行動学を活用

写真:イメージマート

仕事の帰りにいつも公園を通ります。そこにはいわゆるエサやりおじさんがいて、紙皿にキャットフードを盛って地域猫に食べさせているのをよく目にします。雨の日も風の日もその時間になると地域猫たちは、その場所で待っています。上述したように、ノラネコは、決まった時間に決まった場所で食べたいのです。それで以下のように地域猫活動をすればいいのではないでしょうか。

地域猫にエサをあげるときは、雨の日も風の日も決まった時間、決まった場所でする

自分の気分で不規則に行ったり行かなかったりしない。いつも同じ時間にエサをあげる。

一人で地域猫の世話を365日するのは難しいので、複数でする

同じ時間にどうしてもエサをあげに行けないときとかあると、ノラネコはずっと待っています。そのため、複数の人で手分けすることをおすすめします。

キャットフードを食べた後に、排泄をすることが多いのでその処理をする

寝床になるようなところに爪をとげるようなものを置く

ネコは、他のネコと距離を保ちたい動物なので、寝床になる場所は距離を取る

このようなことをすれば、ノラネコも少し快適に暮らせます。

写真:イメージマート

ネコは人間のように言葉を持っていませんが、このような行動学を知っていると、ネコの気持ちを理解できます。具体的には、ネコは上から見下ろされるのは好きではないので、なるべくネコより下から観察してあげましょう。そして、大きな音にも敏感なので静かに言葉でないコミュニケーションを取って、地域猫が少しでもよりよい環境で生活できることを望んでいます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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