Yahoo!ニュース

「連れていって、飼って!」野良猫に選ばれた飼い主。ニャンコはなにで判断している?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

診察室で野良猫を飼った人に尋ねると、動物愛護団体や知人からが多いですね。その一方で、目の前に急に野良猫が現れたという飼い主も割合にいます。

そんななか「私を飼って、一緒に行くニャ~」という風に野良猫に飼い主と認定されたケースがありました。

その子猫は、足にしがみついた「つむぎちゃん」です。このときのつむぎちゃんの写真はTwitter(@tsumugi20210724)で話題になっています。6.8万件以上(8月9日現在)の“いいね”を集めたつむぎちゃんを見ていきましょう。

猫が足にしがみついたつむぎちゃんの写真からわかること

https://twitter.com/tsumugi20210724/status/1420326830997868550 より

子猫が必死で鳴いているのが、写真だけでもわかりますね。

Hint-Potによりますと、飼い主がある漁港へ夕焼けの撮影に出かけた時に、足によじ登ってきた写真だそうです。

この写真から、つむぎちゃんの状態が以下のように推測できます。

瞳孔が開き気味なので興奮気味に鳴いている

爪を出して必死にしがみついている

ひげが長いので比較的栄養状態がいい

栄養状態が悪いとひげに勢いがないので。

目ヤニや鼻水が出ていないので、いまはひどい猫風邪(猫ウイルス性鼻気管、猫カリシウイルス感染症)になっている可能性が小さい

舌の粘膜が比較的赤い(薄いピンクではない)ので極度の貧血ではない

などがわかります。

https://twitter.com/tsumugi20210724/status/1421271545633116163 より

上記のようにニャーとは鳴きませんが、絞り出すような声を出すということなので、少し前に猫風邪になっていまは治っているのかもしれませんね。

なぜ野良猫のなかに飼い主を見つける子がいるのか?

つむぎちゃんのように子猫の野良猫は、とくに体力がないです。そのうえ、外なので、満足いくようなものを食べていない可能性もあるので栄養状態がよくない子も多いです。

そのため、むやみやたらに鳴いてエネルギーを消耗すると命にかかわるので、人を見て「私を飼って、連れていって」と鳴いて近づいてくるのです。

しかし、つむぎちゃんのように足によじ登ってくるのは、珍しいですね。もう、この人しかいないとわかったつむぎちゃんは、賢い猫ですね。

猫はなぜ、飼ってくれる人がわかるのか?

人と人の間では、犬や猫ほどニオイをそれほど敏感に感じとることができません。

しかし、人はストレスを感じると自然と汗をかき、その汗はニオイになるのです。そして、なにかに危険を感じていると人は、アドレナリンが出ます。警察犬などは、捜索者の自身のニオイとこの不安なニオイがわかるので、すぐに発見できるのです(『犬から見た世界』アレクサンドラ・ホロウィッツ著 白揚社)。

つむぎちゃんは猫ですが、夕焼けを撮っている飼い主が、リラックスしているのでこの人なら飼ってくれると確信した可能性が高いですね。猫が自然とよってくる人は、猫が好きでリラックスしているのでそのニオイでわかるようです。

野良猫を保護したらどうしたらいいの?

まずは、動物病院に連れていき以下のことを診てもらいましょう。

ノミやダニの予防をしてもらう

駆虫薬をもらう

耳の中をチェックしてミミダニがいないか調べてもらう

栄養状態をみてもらう

性別をみてもらう

歯から年齢を推測してもらう

経済的余裕があれば、FIVとFeLVの血液検査をしてもらう

経済的余裕があれば、ワクチン接種をしてもらう

そして、適切な時期に不妊去勢手術をしてあげてくださいね。猫は雄と雌がいれば、1年が過ぎれば20頭の猫になることもありますので。

猫の聴覚検査は?

https://twitter.com/tsumugi20210724/status/1421270839970852864 より

真っ白い毛で青い目の猫は、生まれつき聴覚障害を持っている子もいます。つむぎちゃんは、目は青いですが毛が真っ白ではないので、聴覚障害がある可能性が低いです。

でも、人のように聴覚検査をしないと本当のところがわかりません。実際問題、「音のする方の手をあげてくださいね」と猫にいうのは難しいですね。以下のときに観察してください。

物が落ちたときなど大きな音がしたときにどうしているか?

健康的な聴力だと大きな音がすると耳を動かします。またはそちらの方を見たりします。

大きな音がしても動作に変化がないと、聴覚障害の可能性もあります。もし、そうだとしても完全室内飼いだとほとんど問題がないです。

野良猫に選ばれた飼い主でも、科学的な正しい知識を持つ終身飼育をしてあげてくださいね。つむぎちゃんの飼い主は、しっかり病院に行きノミの駆虫などもされています。つむぎちゃん、しっかりした飼い主を見つけて本当によかったです。保護していただきありがとうございます、つむぎちゃんに代わってお礼を申し上げます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事