スーパーエリートの盲導犬が【入店拒否が日常】そんな冷たいわが国でいいのか?

(写真:PantherMedia/イメージマート)

日本は先進国で世界から見ると豊かな国です。

しかし、動物の福祉から見れば、どうもそうでもないのです。 

World Animal Protection という団体が、2018年に発表したものによりますと最も動物福祉が進んでいる国は1位オーストリア、2位ニュージーランド、3位スイスで、日本は50カ国中で23位でした。

視覚障害者の女性がSNSで投稿した盲導犬が彼女の足元に寄り添う1枚の写真に、反響が広がっています。彼女が盲導犬を連れての入店拒否は、日常的なことだと伝えています。それで、盲導犬の役割、賢さを知ってほしくて、写真を投稿したとのことです。

このSNSを見て、筆者は胸が絞め付けられる思いでした。視覚障害者に寄り添って仕事をしている盲導犬にそんな冷たい態度をしていいのでしょうか。そこれで今日は、スーパーエリートの盲導犬について解説します。

盲導犬はペットではない

まずは、盲導犬を知ることが大切ですね。

盲導犬は、ペットではありません。視覚障害者を安全に快適に誘導する犬です。そして、盲導犬ユーザーが手を伸ばせば温かなぬくもりも与えてくれます。盲導犬ユーザーにとって大切なパートナーであり、家族の一員なのです。

盲導犬はどんなことをするか?

『人と盲導犬が笑顔で歩く社会へ』【教育用】盲導犬の基礎知識と私たちにできること

こちらの動画を見れば、視覚障害者が快適に街を歩けるようにしてくれる犬だということは、理解していただいたと思います。

Siriに「Hey Siri 元気が出る音楽をかけて」というように、盲導犬に「コンビニに連れて行って」と言えばいいと思っていませんか。そうではないのです。視覚障害者の頭の中には、地図が入っています。しかし、視覚障害がひとりで目的地に行くまで危険があるので、盲導犬がそれを手助けしてくれます。盲導犬は以下の方法で安全に目的地まで誘導をしてくれるのです。

□角を教える

盲導犬が角にくれば、角に沿わせるように止まります。盲導犬ユーザーに角だということを教えます。

□障害物を教える

途中に放置自転車などの障害物があれば、盲導犬ユーザーがぶつからないように、避けて歩きます。

□段差を教える

上り階段では、一段目の端、5センチ以内で前脚をかけて止まります。交差点の小さな段差でも、止まって盲導犬ユーザーに教えます。

盲導犬は、選ばれしエリート中のエリート

写真:CarteBlanche/イメージマート

盲導犬は、以前はジャーマン・シェパードもいましたが、いまは、ほぼラブラドール・レトリーバーです。この犬は、性質は温和、社交的、従順です。しかしどのラブラドール・レトリーバーでも盲導犬になれるわけではないです。その中で以下のこともチェックされます。

□股関節の疾患がない

□眼底検査で異常がない

□遺伝的疾患がない

□盲導犬に向いている知性がある

□盲導犬に向いている落ち着いた性格である

そんな子犬が、生後2カ月まで母犬や兄弟たちと一緒に過ごし、犬社会の掟を学びます。それからパピーウォーカーのところで、約10カ月過ごします。

パピーウォーカーのところでなにをするの?

写真:アフロ

パピーウォーカーと呼ばれるボランティアの家庭で愛情に包まれながら暮らします。その中で、子犬たちは、人間社会を学びます。以下のような重要なポイントです。

□電車や車の音に慣れる

高架下でわざと大きな音を聞かせることもします。

□雨や雪に慣れる

雨の日にレインコートを着て散歩に行ったりもします。

□人混みに慣れる

人が多いときも連れていき、人の声などにびっくりしないようにします。

このようなことを体験しながら、人間社会でさまざまな経験をするために、いろいろな場所に人と一緒にでかけます。そして、人と生活する喜びを経験して豊かな犬に育てあげます。

あんなに小さかった子犬が立派な成犬になり、生後1年になると、パピーウォーカーの役割は終わります。立派な盲導犬になるように送りだすわけです。

立派に育った喜びとつらいお別れという矛盾がありますが、盲導犬になるためには、大切なことなのです。

注意:パピーウォーカー制度のないところもあります。それは、各訓練所の方針によって変わります。

訓練すれば、どの犬でも盲導犬になれるわけではない

このような選ばれし犬ですが、その中でもどんな犬でも盲導犬になれるわけではありません。1歳を過ぎれば、訓練センターに戻されます。まずは、人と一緒に歩くこと、生活することなどの楽しさを盲導犬に教えます。

盲導犬ユーザーのために、仕事をするという感覚ではなく、一緒に歩くこと、案内することを楽しめるように訓練するわけです。それをしながら、安全に道を歩けるように、教えます。

性格的に臆病であったり、訓練をしても盲導犬に向いていないとわかったりすると、一般の家庭犬になります。

次に、盲導犬として働けるかどうかの試験を受けて合格すれば、視覚障害者の元で、一緒に道を歩く訓練をして社会に出るのです。

街で目にする盲導犬はこのように教育を受けているのです。スーパーエリートなのです。それなのに、入店拒否が日常的だということは、どういうことなのでしょうか。

盲導犬は、基本的には入店拒否ができない

身体障害者補助犬法(以下「補助犬法」)という法律があります(筆者は法律の専門家ではないので、この辺りは省きます)。

つまり、お店や病院など不特定多数の人が利用する施設で障害のある人のパートナーである盲導犬、介助犬、聴導犬(総称して、「身体障害者補助犬」)の同伴受け入れを義務づける法律です。

基本的には、施設や店などは、入店拒否は、そもそもできないのです。補助犬法では、施設や他の利用者に「著しい損害が発生」する恐れがある場合や「やむを得ない理由がある」場合だけとなっています。

盲導犬クイールの一生

『盲導犬クイールの一生』(石黒謙吾・文藝春秋)の表紙、筆写撮影
『盲導犬クイールの一生』(石黒謙吾・文藝春秋)の表紙、筆写撮影

『盲導犬クイールの一生』という本があります。

NHKのテレビドラマや映画にもなりました。映画は、2004年崔洋一監督が作りました。映画でパピーウォーカーである仁井家のパパ役を香川照之さん、ママ役を寺島しのぶさんが演じました。訓練士の多和田悟を椎名桔平さんが演じました。盲導犬のクイールの優しさや優秀さがわかり涙した映画でした。

DVDやアマゾンなどで、見ることができますので、犬が好きな方、そして盲導犬を理解したい方におすすめです。

最後に、盲導犬は賢くてスーパーエリートなので、街で会ったとき声をかけたくなりますね。それは控えてください。そのときは、盲導犬ユーザーの安全を考えて誘導しているときなのです。