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保護された子猫の胃に石や砂がぎっしり… 野良猫の悲劇と「里親詐欺」とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ロイター/アフロ)

滋賀県内で、動物の虐待や虐殺が相次いでいます。その中で、今回は胃の中に、石や砂がぎっしり詰まった子猫が、保護されました。なぜ、このような無残なことが起きるのか、そして、里親詐欺に遭わない方法も考えましょう。

今年7月下旬、動物の虐待・虐殺などが相次いでいる滋賀県内で保護された茶トラの子猫・むうくん。背中には切り傷、下半身が動かない状態で見つかりました。むうくんを保護して動物病院に連れて行った『もよまま』さんによると、レントゲン検査の結果、胃の中には石や砂が隙間なく入っていたそうです。動物病院の獣医師からは「人為的虐待に間違いない」と、告げられたといいます。

出典:許せない!虐待され保護された子猫、胃に石や砂がぎっしり・・・里親詐欺に注意「簡単に命の譲渡をしないで」

上記の記事によりますと、むうくんは、保護された当時、胃の中に石や砂が多く詰まっていて、後ろ足は、結束バンドのようなもので縛られたために下半身も不自由だったのです。そのときは、野良猫だったにもかかわらず、耳ダニも内部寄生虫もいなく、爪もきちんと切ってあったので、譲渡された猫ではないか、と推測されています。

なぜ、こんな卑劣な虐待が起こるのでしょうか。許し難いことですが残念ながら、この世の中には子猫を虐待する人が一定数います。その前提に立って、どういう猫が虐待されやすいか、なぜ今回のような事件が起きたのかをご説明します。

この猫の場合の主な理由は、以下のふたつではないかと推測します。

1、性格や行動が人懐っこい

私たちの動物病院には、保護された猫が多く訪れます。

その中には、叩かれるなどの虐待に遭った子もいます。そのような子は、人なれしている子が多いです。母猫に、人は怖いと教えられていないので、人の近くに来るため、虐待に遭いやすいですね。猫の保護活動をしている人の中には、「外の子は、気が強い子の方がいいですよ。それだと、いたずらなどされにくいからね」と言う人もいます。人のところに寄っていくと、虐待がされやすいのか、と納得しました。それで、保護した猫を治療するとき、掻かれたり、噛まれたりしますが、これは野良猫が生きていくために仕方のないことだな、と考えるようになりました。

2、ひもじい思いをしている

(ひもじくて、トイレの砂を食べる猫 実話)

臨床をしていると、奇妙なことをする猫と出会うことがあります。

この虐待の記事を読んで、思い出したことがあります。飼い主から「トイレの砂を食べるのですが、どうしたら、いいのでしょうか」と相談を受けた子猫がいました。その猫は、野良猫で食欲旺盛でした。猫は犬と違って好き嫌いがあることが多いのですが、その子は、なんでもガツガツと食べて、そして、お皿も食べる勢いだったのです。よほど、外でひもじい思いをしたのか、なんでも食べる子でした。そして、トイレ用の砂も食べたので、びっくりして飼い主から、相談を受けたというものでした。その子は、トイレの砂も食べるので、ペットシーツなども食べる可能性があったため、新聞紙を細く切ってもらい、それをトイレの砂の代わりにしました。飼い主のしつけもあり生後1年して、やっと食べ物しか食べなくなりました。

つまり、外の子は、空腹で辛い思いをしているので、石や砂を食べる子がいるのです。

そのような場合は、胃の中に石などが入っていますが、ぎっしりとということはないです。虐待に遭った子は、ぎっしり入っていたので人為的なものなのでしょう。むうくんは、食欲旺盛で人懐っこい子猫だったので、無理やり食べさせても人を信じて飲み込んでしまったのかもしれませんね。

上記のように、人を疑うことを知らず、猫には悪いことをしないと思い、尚かつ、成長期に空腹を味わいひたすら食べてしまうという経験を持っている子が、虐待に遭いやすいのです。本当に悲しいできごとですね。生後2カ月と言うと、1キロも満たない小さな命に、食べ物でないものを無理やり与えて、足を縛ることができる人がいるのか、と思うとぞっとします。慈悲深い『もよまま』さんに保護されて、むうくんは元気で、本当によかったです。

保護猫を譲渡するときの里親詐欺に遭わないために

猫の里親詐欺というものがあります。里親詐欺とは、猫を命あるものとして飼わないのに、それを偽って善人を装い里親になることです。以下のような理由で里親詐欺をします。

・虐待目的

・アニマルホーダー(動物を異常に集める人)

・実験動物として売りに行く。

・三味線の皮として売りに行く。

などです。

譲渡するときの注意点

・自分で飼うのではなく、友だちが飼うという人は避けましょう。

命あるものを内緒であげるとトラブルのもとです。本当の飼い主に会わせてもらいましょう。

・多頭飼育をしているのに、まだ、ほしがる場合は避けましょう。

猫を飼うことは、やはり手間もお金もかかります。いま、すでに複数の猫がいるのに、ほしがるのは、アニマルホーダーの疑いもありますので、注意しましょう。

・自宅の様子がわからない場合に、間取りなどを聞いても教えてくれない場合は、よく考えましょう。

やはり、どんなところで飼うか、一度は見に行った方がいいですね。ペット禁止のマンションだと譲渡は、やめておいた方がいいです。

・連絡先がコロコロと変わる人は避けましょう。

譲渡された猫の様子を尋ねようとしたら、連絡先に繋がらないなどは、猫が虐待に遭っている可能性があります。

・猫の譲渡を急いでいる人は避けましょう。

猫は命あるものです。ちゃんと飼ってもらえるかどうか、しっかり見極めましょう。急いでいる人は譲渡を避けた方が無難ですね。

・里親と契約書を交わしましょう。

不安なときは、トライアル期間(お試し期間)を設けて、ちゃんと飼ってもらえるか見極めましょう。

・コミュニケーションに違和感があるなどの第六感で、嫌な予感がすれば見送りましょう。

長年、保護猫活動をしている人は、経験値が上がりこの人はちゃんと猫を飼ってくれるか、どうかわかってくると言っています。

まとめ

猫を保護して、信頼できる里親を見つけるのはなかなか難しいことですね。

猫を飼いたい人に、簡単に譲渡すると、このような虐待される猫がでてくるのです。里親になりたい人は、善良な仮面をつけて現れる人もいます。この人なら、絶対に大丈夫というのは、主観的な部分も大きいです。でも里親に応募してくる人の中には、適切な飼い主でない人もいることを頭においてくださいね。そして、このような不幸な猫が1匹でもいなくなりますように。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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