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コロナ禍で在宅勤務になり「かわいい犬が欲しいね」 ちょっと待って!その落とし穴とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い外出自粛が続いています。みなさん、不要不急の外出は避けているので、犬の外耳炎の治療などは減っています。ところが、若い人が子犬を連れて来院されるケースが増えています。テレワークが続く中、やっぱり「犬がいた方がいいよ」と言って購入されているようです。ただ、「かわいいから」「癒やしになるから」という理由で飛びつく飼い主には、忘れがちな落とし穴があります。GW中、犬や猫を飼いたいと思っている人がいたら、一緒に考えましょう。

いま、本当に犬や猫を飼っても大丈夫?

自宅で仕事をしているとストレスが溜まりやすいですね。犬や猫がいるだけで、心の支えになってくれて、孤独感もずいぶんと軽減されます。集中して仕事をしていると、「ねぇねぇ」と犬や猫は遊びに来たりもしてくれます。筆者も休みの日に、自宅にいると愛犬(17歳のシニア)と一緒にいると心が落ち着きます。でも、いまの時期、犬や猫を衝動的に飼っても本当に大丈夫なのでしょうか。以下の問題点があります。

テレワークが永遠に続くのか?

新型コロナウイルスが、いつ収束するのかわからず、先の見通せない不安があります。「家にいよう」「STAY HOME」は、長いと1年以上続くのかもしれません。

SNSを見ていると、モフモフしたものが家の中にいるのは、目の保養にもなり、楽しそうに見えますね。このライフスタイルの間だとペットと一緒に暮らすことができるでしょう。確かに、いまよりテレワークを導入する会社は、増えるでしょう。

その反面、この生活が、数カ月で終わるかもしれないのです。犬や猫たちと暮らしていた空間が、テレワークが終わるとトランプでできた城だったと気づくかもしれないのです。いまの状況は、時が流れるとその骨組みが吹き飛んでしまう可能性もあります。そんなときでも、犬や猫を飼える環境なのでしょうか。その点を、考えてくださいね。

犬や猫は10年以上生きる

いまの時代、犬や猫は、ほぼ10年以上生きます。長寿の子は、20年以上、生きる場合もあるのです。その間に、自分のライフスタイルももちろん、変化します。そうなっても、犬や猫を飼うことを放棄せず、ずっと飼うことはできますか。

病気もするし、老いもある

子猫や子犬は、世の中にこんなかわいものがいるの? と思うほど文句なく愛らしいです(個人的には、シニアの子もかわいいです)。でも、生きているものの定めとして「病気」もするし「老い」もあります。食べ物が合わないと下痢をしたりもします。購入したばかりの子猫は、伝染性腹膜炎になったりもします。

そんなことも考えて、犬や猫を飼ってくださいね。

若い男女が、タイニー・プードルを連れてきた

動物病院にくる飼い主さんで、20代前半の人は少ないです。

若いカップルの田中さん(仮名)は「初診なのです」と言って子犬を連れて来ました。ふたりともおしゃれで、美男美女であまり話さない人たちでした。彼女の腕の中には、小さいプードルが眠っていました。問診書には、タイニー・プードルと書いてありました。タイニー・プードルって何なの?ってなる方もいるでしょうから、ここでプードルの説明をします。

プードルとは?

プードルは、もともとは水中回収犬、鳥獣猟犬で、いまは日本ではペットとして飼育される巻き毛の犬種です。

大きさによって(小さい順番で)「トイ」、「ミニチュア」、「ミディアム」、「スタンダード」の4種類に分類されます。一般に利口で「セラピー犬」としても活躍する人気の犬です。

日本では、よく目にするのが、トイ・プードルです。それ以外に小さなプードル「タイニー・プードル」(tinyでより小さいという意味)と「ティーカップ・プードル」がいます。歴史が浅いので、ジャパン・ケンネル・クラブ(JKC)で正式には、認められていませんが、以下のような体重です。

・トイ・プードルは、3キロ前後

・タイニー・プードルは、2~3キロ

・ティーカップ・プードルは、2.7キロ以下

簡単に説明すれば、次のような大きさになります。トイ・プードル>タイニー・プードル>ティーカップ・プードルの順番です。

タイニー・プードルやティーカップ・プードルは、トイ・プードルより、小さいのでやはり弱く、飼うには、注意が必要です。

・低血糖になりやすい。

超小型犬は、食べることに関心を持っていない子もいて、食事をあげても食べなかったり、下痢などが続くと、低血糖になるケースもあります。症状として、ふらつきや元気消失、食欲不振、全身のけいれん発作などがあり、命にかかわる病気です。

・身体が小さいため、どうしてもケガをしやすい。

ソファから降りて骨折したりするケースもあります。

田中さんの子犬は、ワクチン接種だけでした。タイニー・プ―ドルなので、上記の点をこと細かに説明しました。私があまりにも熱心に伝えるものだから、田中さんたちには、ちょっとうざいと思われたのかもしません。目の前にいるタイニー・プードルは、スタイリッシュでキュートです。でも、その前に、生き物なので、ブランド品の鞄や靴を買うのとは違うのです。この子犬は、大阪の都心にある有名なペットショップで、高価な値段で購入されていました。いまはかわいけれど、シニアになり歯が抜けて舌がだらりと出ても田中さんたちは飼ってくれるのだろうか、と心配になり、老婆心ながら忠告させてもらいました。それが、私の杞憂に終わることを祈りながら話をしました。

まとめ

「家にいよう」で、自宅で過ごす時間が長くなります。いままでより、時間があるので、犬や猫を飼ってみようと、思う人が増えることは動物好きには、嬉しいことです。

その一方で、ペットと一緒と暮らすことは、ファッションではないのです。彼らが、「老いる」ときも「病める」ときも傍らにいて、世話をすることが含まれています。いま、犬や猫を欲しい気持ちは大切なこともかもしれません。でも、1年後、5年後、10年後もそれ以上もずっと一緒にいられるかを考えてから、犬や猫と暮らしてしてくださいね。いまの時期、衝動買いではなく、じっくり考えてから行動してほしいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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