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今年は、子年 ネズミに「チュー目」 ネコの時間ネズミの時間 ネズミの「ちょこまか」とは

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(提供:アフロ)

新年、あけましておめでとうございます。

今年は、干支でいうと、子・ネズミ年ですね。ネズミのキャラクターは、生活の中にたくさんいます。お馴染みなのは、ディズニーのミッキーマウスですね。ネコとネズミの話『トムとジェリー』も好きでよく見ていました。映画『レミーのおいしいレストラン』でネズミのレミーが南フランスの野菜煮込み料理、ありふれた家庭料理「ラタトゥイユ」を教えるシーンなどもあります。ネズミは、比較的身近な存在です。筆者は、ハムスターを診察しているのですが、動きが機敏です。この「ちょこまか」の観点から、ネズミについて考えましょう。

トムとジェリー公式twitterより@TomAndJerry_JP
トムとジェリー公式twitterより@TomAndJerry_JP

ヒトの時間 ネコの時間 ネズミの時間

動物病院では、ネズミであるハムスターも診察します。呼吸停止を起こしたときに、人工マッサージをしますが、出来る限り早く指を動かします。それは、心拍数がとてつもなく早いからです。

心拍数

「心拍数」・ heart rateとは、一定の時間内に心臓が拍動する回数をいいます。通常は1分間の拍動の数。この心拍数が、動物によって違うのです。獣医師は、ヒト以外の動物を診察しているので「種」によって違いがあることを知っています。以下に各動物の心拍数です。

各動物の心拍数

ヒト、    60回から70回

ハツカネズミ 600回から700回

ネコ     200回

ウマ     30回

ゾウ     20回

つまり簡単にいうと、体の大きな動物は、心拍数も呼吸も筋肉の動きなどもゆっくりになっていくということです。ネズミの動きは敏速「ちょこまか」して、ゾウは「ゆったり」見えるのは、そのためなのです。

体の大きさが違うと、この心拍数が異なるので、ゾウにはゾウの時間、ネコにはネコの時間、ネズミにはネズミの時間があります。この時間を「生理的時間」と呼びます。時間というものを1秒、1分、1時間、1日、1週間、1か月、1年は「物理的な時間」です。自然界における時間、生物学的な時間というのもが存在するのです。

『ゾウの時間、ネズミの時間』(本川達雄著)によりますと

「時間は体重の1/4乗に比例する」という考えがあります。

簡単に説明すると、体重が2倍になると時間が1.2倍長くゆっくりになるという関係です。体重が10倍になると時間は1.8倍になるんです。例えば、50gのネズミと5tのゾウでは体重が10万倍違います。時間に関しては18倍違い、ゾウはネズミに比べ時間が18倍遅く流れることを意味します。

例えば『トムとジェリー』のアニメで、トム(ネコ)とジェリー(ネズミ)が、追いかけてあって屋根から同時に落ちるとします。同じ高さからものを落とせばどれも同時に地面に着きます(物理的時間)。でも、ジェリーは落ちている間に「落ちる落ちる落ちる落ちる・・・」とゆっくり落ちることを感じることができます。一方、トムはジェリーより体重が重いので「落ちる」と思っている間に落ちてしまいっているのです。ジェリーからみたらトムはゆっくり動いているに見えて、逆にトムからジェリーを見れば早く動いているのですね。生物学的な時間というのは、考えは面白いですね。これだけ時間の速さが違えば、時間の持つ意味や、その時間を使っての生き方が動物によって大きく違っても不思議はないですね。

寿命も体重と関係がある

哺乳類ではどの動物でも心臓は一生の間に20億回打つという計算になるといわれています。

ネズミの寿命は2−3年、ネコは7-10年(飼い主は治療しようとすると、この計算は当てはまらない)、インドゾウは70年近くは生きますから、ゾウはネコやネズミよりずっと長生きなのですが、心拍数を時間の単位として考えるなら、ゾウもネコもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになるわけですね。

哺乳類の心臓が20億回を打つという説で、ヒトの寿命を考えると、26.3年なになりますが、これは医療などが進んでいるので、他の哺乳類と同じには、ならないことになります。

まとめ

撮影筆者
撮影筆者

動物によってネズミからゾウまで体重などのサイズが違うので、心拍数が違います。でも、哺乳類はサイズに関わらず、どれも心臓は20億回打ちます。ネズミであるハムスターを飼っている人は、寿命が短かく、2、3年です。ネズミは「ちょこまか」動けるので、それだけ1分間にいろいろなことを考えることができるので、ネズミはネズミなりに充実しているのです。「ちょこまか」は早く動けて、多くのことを感じられるのです。ネズミは日本神話では大黒天の使者とされているので縁起が良いとされています。ネズミのように活発に駆け回り、ネズミ算のように知識が増えて、みなさま、この1年、楽しく暮らせますように。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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