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ISIS指導者を追い詰めたのは軍用犬 人間のために仕事をしてくれる犬の役割は

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

AIの時代になり、機械が人間に代わって仕事をする雰囲気があります。これから、映画『ターミネーター』のように、人工知能が仕事や災害のときに、働いてくれるのでしょうか。そんな時代でも、犬の素晴らしい能力は、人間社会に貢献しています。以下のニュースが飛び込んできました。

ワシントン(CNN) 米国のトランプ大統領は28日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者を殺害した作戦に関連して、同容疑者を追い詰めて負傷した軍用犬の写真を公開した。

軍用犬は米軍が26日に実行した急襲作戦に加わり、バグダディ容疑者をトンネルの奥に追い詰めた。

トランプ大統領は28日午後、この犬の写真の機密指定を解除したと発表、「ISISの最高指導者アブバクル・バグダディの捕獲と殺害に大活躍した」とツイートした。ただし、犬の名前の機密指定はまだ解除されていない。

出典:10/29(火) 9:39配信 CNN.co.jp

トランプ氏のツイッターより
トランプ氏のツイッターより

私の米国の戦争のイメージは、ハイテクを駆使して、ボタンひとつで終わってしまうというものでした。今回のバグダディ容疑者を殺害は、軍用犬としてジャーマン・シェパードなどが、活躍したようです(軍事機密なので、詳細は明らかにされていない)。そこで、今回は、いまの時代に活躍している使役犬について、考えてみます。

使役犬とは

使役犬とは、ワーキングドック(working dog)ともいわれ、人間のために仕事をしてくれる犬です。「働く犬」「職業犬」とも呼ばれます。 具体的には、以下のような犬のことです。

猟犬 猟をするときに働く犬です。猟犬の中でも役割によって、探索犬、ポイント犬、回収犬、格闘犬にわかれます。

探索犬は、嗅覚や視覚が優れているので、獲物を見つけてくれます(ハウンド犬)。

ポイント犬は、獲物を発見してハンターに獲物の位置を知らせる(ビーグル)。

回収犬は、撃ち落とした獲物を回収する(レトリバー)。

格闘犬は、獲物を狩り出し、格闘して仕留める(テリア、柴犬、甲斐犬)。

牧羊犬  羊の見張りをしたり、オオカミなどに狙われないようにしている(シェットランド・シープドッグ)。

軍用犬  戦争のとき、人と一緒に戦う(ジャーマン・シェパード、ドーベルマン)。

水難救助犬  漁師の仕事を手伝ったり、水難に遭った人を助ける(ニューファンドランド)。

探知犬  地雷、麻薬、がん、人などを探す犬(地雷探知犬、麻薬探知犬、がん探知犬、災害救助犬)。

人間の生活を支える犬

盲導犬 目の不自由な人の生活を支える(ラブラドール・レトリバー)。

介助犬 手や足に障がいのある人の手助けをする。冷蔵庫のものを出したり、新聞を取ってきたりする。

聴導犬 耳の不自由な人を助ける。玄関のベルが鳴ったこと、電話が鳴ったなどの生活に必要な音をタッチして教える。

セラピードック 触れ合いや交流を通じて病気、ケガ、精神的な痛手を受けた人の不安を減らしたり、体を癒す働きをする(スタンダードプードル、ゴールデン・レトリバー)。

私が診察しているVitaちゃんが授賞

撮影は筆者の知人 Vitaちゃんの感謝状
撮影は筆者の知人 Vitaちゃんの感謝状
撮影は筆者の知人 表彰されたVitaちゃん
撮影は筆者の知人 表彰されたVitaちゃん

Vitaちゃん(ラブラドール・レトリバー)の飼い主は、保護司です。犯罪や非行をした人たちの育成や厚生保護をボランティアでしています。Vitaちゃんは、保護司のもとにやってくる人たちを平等に接して、彼らの淋しさを癒して、更生させたことで、Vitaちゃんは受賞されました。犬で日本初のことだそうです。

どんな犬が向いているか?

それぞれの仕事に適性な犬が、その役割をしています。たとえば、嗅覚が必要な仕事なのに、ニオイを嗅ぐ能力があまりないものは、そのような業務には、つきません。ジャーマン・シェパードは、人間の100万倍の嗅覚があるといわれています。知性が高く能力に優れている犬なら、どの子も大丈夫なわけではないのです。外見などもあるので、見ためが優しいラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーなどの優しい雰囲気の子は、人が多いところで働きます。

もうひとつ大切なことは、人間と一緒にする仕事が好きなということです。使役犬になるまでに、厳しい訓練を受けます。実際に働くと、想定外のことも起こります。そのとき、与えられた仕事が好きな犬は、教えられた以上の仕事をこなして、偉業を成し遂げることもあります。

児童書『がんばれ!盲導犬サーブ』になった盲導犬サーブは、雪でスリップして突っ込んできた車から主人を庇って重傷を負い、左前脚を切断しました。そうやって主人を守ったのです。このようなことができる犬は、主人と道を歩くことが好きなのでしょう。

まとめ

テクノロジーが発達して、だんだんと機械が仕事をするように思われがちです。実際、人の社会では、犬の聴覚、視覚、嗅覚やそして温かみで、私たちの社会の課題を解決したり、豊かにしてくれています。筆者は、17歳のミニチュア・ダックスフンドと暮らしていますが、使役犬とは程遠い生活で、寝ているか食べているかですが、私の生活に温もりや優しさをどんなときでも与えてくれます。

以前、警備会社のCMで、いいシステムができたので、番犬はいらなくなったというものがありました。時代が進んでも人間が持っていない能力を犬は、持っています。ますます犬は人間の大切なパートナーになってくれるでしょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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