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世界的に「陰茎」が長くなっているのは本当か

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
(写真:アフロ)

 我々ヒトの生活は近代化によって大きく変化し、性的な機能についても影響が出ている。今回、米国やイタリアの研究グループが男性の陰茎の長さに関する複数の研究を評価分析したところ、過去30年間で陰茎は世界的に長くなっていることがわかったという。

約24%も長くなっている?

 この研究をシステマティック・レビューとメタ分析で調べたのは、米国のスタンフォード大学やイタリアのサンラファエル病院などの研究グループだ(※1)。男性の陰茎の長さが、過去にどれくらい変化したのかを調べてみたという。

 同研究グループは、1942年から2021年の間に出版された男性(17歳以上)の陰茎に関する75の研究論文(総参加者は5万5761人)を比較検討した。その結果、男性の陰茎の平均の長さは、弛緩状態で8.70cm、伸ばした状態で12.93cm、勃起状態で13.93cmだったという。

 弛緩状態や伸ばした状態の長さには、研究論文によって測定誤差の可能性がある。同研究グループは、勃起状態の長さの測定には、自己申告によるバイアスや体格を除けば、各研究論文に一定の一貫性があるとみなしつつ、勃起状態にする手法は陰茎注射など様々で、この点に疑義が生じるかもしれないとしている。

 そして、これらの結果をメタ分析してみたところ、アフリカ、ヨーロッパ、アジアなど、地域や人種によって長さに違いはあるものの、過去29年以上の期間、北米を除く世界各地の各世代の男性に共通した変化として、勃起状態の陰茎は約24%(12.27cmから15.23cmへ)長くなっていたことがわかったという。

長くなっている理由とは

 では、なぜ陰茎が長くなっているのだろうか。その理由として同研究グループは、男性で思春期の始まる年齢が早くなっていること、座っている時間が長くなっていること、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の影響などをあげている。

 筆者があえて付け加えるなら、30年間でこうした研究へ参加を許容する男性が変わったという選択バイアスがあるのかもしれない。あるいは、インフォームドコンセントや研究倫理観など、研究者側の手法に変化があったということも考えられる。

 いずれにせよ、衣食住など、あらゆる面で世界的にライフスタイルが急速に変化し、それらが男性の陰茎の長さの変化に影響している可能性はある。また、ライフスタイルの変化でいえば、新型コロナのパンデミックがヒトの身体的・生理的な変化にも何らかの影響を及ぼしているかもしれない。

※1-1:Federico Belladelli, et al., "Worldwide Temporal Trends in Penile Length: A Systematic Review and Meta-Analysis" The World Journal of MEN's HEALTH, Vol.41, e31, 15, February, 2023

※1-2システマティック・レビュー(Systematic Review)は一定の基準などを元に複数の研究論文を分析・統合することで、メタ分析(Meta Analysis)はこれら複数の研究論文を統合して統計的に解析する手法のこと。

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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