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「豆乳」は第3ブームが到来。一般化させるまでの取り組み

池田恵里フードジャーナリスト
無調整、調整、豆乳飲料とカテゴリーがある(写真:アフロ)

豆乳 第3のブーム到来

展示会に行くと、最近、よく見かけるのが「豆乳」のブース。

そこでメーカーの方に聞くと「日本では、第3ブームが既に到来しております」と力説。

「今月は、まめプラス月間で、昨年、公式認定されたんですよ」

都内を中心に35店舗以上メニューで頂けるらしい。10月12日は豆乳日だとか・・・。

日本豆乳協会

しらなかった。申し訳ございません。

統計を見ると、たしかに平成26年は生産量、出荷量、使用量は過去最高になっている。

個人的に「ブーム」というより、もはや豆乳は飲みものとして、ごくあたり前のように飲んでいた。勿論、第1、2ブームさえも印象に残っていなかった。しかし図を見て、これまで2度の山があり、今、第3の山、つまりブームが到来し、見てもわかるようにそのままカーブは上がっている。

農林水産省 マルサンアイから抜粋、引用
農林水産省 マルサンアイから抜粋、引用

豆乳が一般にまで浸透するために

豆乳がここまで浸透するには、それなりによくよく考え抜かれた戦略がなされたと言う。

1978年、練り製品でお馴染みの「紀文」が豆乳を発売したことがはじまりである。紀文は、おでんの魚のたんぱく質を練り商品を主軸に販売している一方で、気温の上昇する夏場の売り上げは芳しくない。そこで良質なたんぱく質である豆腐を手掛けることを当初、考えた。しかし中小企業分野調整法の規制もあり、大企業は豆腐業界に参入できなかったため、搾り汁、つまり豆乳に注目したと言われる。豆乳を販売した1978年の日本人は、まだまだ豆乳から作られた豆腐、油揚げを親しんでいた。それを豆乳でそのまま飲むというのは、いきなり「原料を飲んでいただく?」という唐突な提案であり、ホップ・ステップ・ジャンプというより、いきなりジャンプでの挑戦となる。紀文がとった戦略として、まず裾野を広げる、つまり飲みやすいドリンクとして広い基盤を作ることから手がけたと言われる。しっかりとした土台を作りあげることで、今後、その上を積み上げられるからだ。

第1ブーム  飲みやすさでまずホップ

そこで豆乳は78年に発売される際、まず豆乳飲料、そして調整豆乳から参入した。これら2つのカテゴリーには、豆乳のなかでもコーヒー味などのフレーバー、糖分が入っており飲みやすい。その上、下記でもわかるように豆乳を少なく添加されている商品で販売することで、違和感をまずなくして、飲んでいただくことに専念した。

因みに、JAS 規格の豆乳カテゴリーについて述べると3つ。

JAS規格の定義

無調整豆乳・・・大豆固形分8%以上、大豆たんぱく質3.8%以上

調整豆乳・・・大豆固形分6%以上、大豆たんぱく質3.0%以上

豆乳飲料(果汁系飲料)・・・大豆固形分2%以上、大豆たんぱく質0.9%以上

豆乳飲料(その他)・・・大豆固形分4%以上、大豆たんぱく質1.8%以上

容器も一見で違いがわかる形、所謂、テトラパック(欧米ではよく知られているテトラ・ジェミーナ・アセプティック容器)での販売に踏み切ったのである。

見た目、飲みやすさ、そして健康、この3つで豆乳基盤を作り、1983年に第1ブームの到来となった。

高度成長に伴い、消費者(企業戦士)の健康意識も高まり、血圧の上昇を抑制する、がんや骨粗しょう症を防ぐ、体脂肪を燃焼させるなど、あらゆる健康要素が含んでいることで一気に消費者の心をつかんだ。

しかし、当時、まだまだ技術的に豆乳嫌いの筆頭に挙げられる「青臭さ」が解消できず、その後、すぐに下火となった。

大豆の中にひそんでいる酵素リポキシゲナーぜが働き、その臭いを除去する技術がなかなかできなかったのである。

豆腐などに食べ親しんでいる日本人にとって、この臭いが「まずい」と敏感に反応したのである。

第2ブーム 匂いを解消しメデイアでステップ

第2ブームは、各マスメデイアの影響によることが大きい。こぞって「健康」番組が制作され、大豆飲料の健康性、美容などを紹介したことで、2000年以降、好調となる。その当時(2000年頃から)は、以前のものより青臭くなく、豆乳製造技術が格段に改善されたとで「美味しくなった」という声も聞かれるようになる。

しかし、2005年に発表された 大豆イソブラフォンの過剰摂取問題、所謂、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の基本的な考え方」を提示したことにより、見る見るうちに生産量は2006年、2007年と低下の一途をたどり、元の製造量に戻るのに5年の歳月がかかった。

大豆イソフラボンを含む特定保健用食品

今、豆乳ストレート
今、豆乳ストレート

上に上がればあがるほど、次第にフレーバー、糖分をなくし、豆乳本来の味になる。

第3ブーム、より美味しく、飲料から料理へジャンプ

第3のブームは、豆乳を無調整にすることで料理へとジャンプした。既に豆乳は「健康食品」であるという基盤ができていたこと、豆乳技術も進んだことで、一気に「無調整豆乳」にシフトすることが可能となったのだ。フレーバーをなくし、糖分をなくし、豆乳一球勝負の図でいうピラミッドのてっぺんに突入している。つまり、豆乳ストレートにすることで、余分な味がないため、汎用性がきく。和食に足りないコク、味の深みを豆乳を使用することで新たなる日本料理が既に誕生している。海外へ羽ばたくためにも、味に深みを増すことは海外の方に馴染みやすい味となり、より和食ブームの後押しとなる。不二製油では10年の月日を要して開発された分離製法USS製法で、豆乳のホイップクリーム、チーズまで発売している。そして豆乳の新たなるフィールドに上った。

食糧難の救世主

動物性たんぱく質の摂取に頼らず、大豆という植物性たんぱく質、豆乳は健康は元より、今後の飢餓を考えると重要なカギとなる。

ここで柴田明夫氏の言葉を引用すると、既に飢餓は起こっていると言われている。

現在、国連の推定によると世界の人口は年に1.18%の割合で増え続けていて、2050年には90億人に達する。それにともないFAO(国際連合食糧農業機関)では、2050年までに60%の食料生産を増やす必要があると2012年に発表している。いっぽうで、食料を増産するにも土地や水には限りがあり、また毎年のように世界各地で異常気象による農作物の不作が伝えられている。現在の世界の人口は約72億人だが、8人に1人が慢性的な栄養不足、つまり飢餓状態にある。人口の増加にともない食料の需要と供給のバランスが崩れると、食料の価格は高騰し、手に入らない作物が増えていく。やがて慢性的な不足に陥れば争いに発展することもあるだろう。実際、チュニジアに端を発した北アフリカや中東の民主化運動「アラブの春」は、干ばつの被害を受けたロシアが穀物の輸出を停止、それによる穀物価格の高騰が原因のひとつだと言われている。もはや食料が当たり前に頂ける時代ではないのだ。

出典:日本の食の未来 柴田明夫

限りある資源をいかに有効に使うか。豆乳では、よりストレートに頂くことで多様化でき効率的である。例えば、大豆を飼料として使用されると、牛を一頭 育てるのに10倍の飼料を要する。むしろ人間がそのまま頂くことにより、身体にも良いタンパク質の摂取となる。今、豆乳を飲料から料理にシフトされつつあるなか、ブームではなく、今後は時代の趨勢になると思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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