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照ノ富士が復活V、1年ぶり8回目 4関脇の躍進にも期待が高まる

飯塚さきスポーツライター
照ノ富士は霧馬山(左)を破り幕内優勝を決めた(写真:日刊スポーツ/アフロ)

大相撲5月場所14日目。千秋楽を待たずに横綱・照ノ富士が自身8度目の優勝を決めた。3場所の全休を経て、実に1年ぶりの優勝。来場所で大関に昇進することが濃厚な関脇・霧馬山を相手に1分超の相撲を取って制した。

「大関と戦っている気持ちで」霧馬山を称えた横綱

立ち合いから頭でぶつかっていった霧馬山。横綱に下手を与えまいと右からおっつけて頭をつける。しかし、一枚まわしながら横綱が右の下手を引き、じわじわと霧馬山の体勢を崩しにいく。霧馬山はなんとか右を巻き返そうとするが、横綱が右の上手を取ってもろ差しになると、引きつけながら前に出た。最後は土俵際でこらえようとする霧馬山を力強く土俵外に運んで寄り切り!照ノ富士の復活優勝が決まった瞬間、館内が沸いた。

大きく息を弾ませながら応じた取組後のインタビュー。滴る汗に大きく上下する肩からも、横綱が力を出し切った一番だったことが伺える。

「(対戦相手の霧馬山について)力をつけてきていることは事実なので、精一杯出し切ることしか考えていなかったですね。もう大関と取っているという感覚でやっていました」

自身の優勝の喜びよりも、対戦相手でありこれから一緒に角界を支えていくライバルを敬って称える姿に胸打たれる。こんな立派な人が、強い横綱として相撲界にいてくれて本当によかったと、インタビューを聞きながらあらためて感銘を受けた。

まさに「関脇が強い場所は面白い」

照ノ富士の復活優勝、強い横綱が戻ってきたことは角界にとって喜びもひとしおであるが、加えて、今場所を盛り上げてくれている4人の関脇陣にも注目したい。来場所から大関となるであろう霧馬山はもちろん、豊昇龍、若元春は共に二桁勝利。大栄翔も今日勝てば10勝と素晴らしい成績である。今日の千秋楽で霧馬山が豊昇龍と、若元春が大栄翔と対戦するが、この4人の活躍なくして今場所は語れない。「関脇が強い場所は面白い」といういわれを、まさに体現してくれた。霧馬山以外の3人も次期大関を虎視眈々と狙っていることは間違いなく、今日の“直接対決”も見ものである。

最後まで星を伸ばして優勝の可能性を秘めていた返り入幕の朝乃山、横綱を破って勝ち続けていた明生など、今場所を盛り上げてくれたほかの力士たちにも注目しつつ、千秋楽も最後まで見守りたい。どうか、三賞の大盤振る舞いを!

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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