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復帰の照ノ富士、勝てば千秋楽待たずに自身8度目優勝 霧馬山との直接対決を制するか

飯塚さきスポーツライター
今日勝てば優勝の横綱・照ノ富士(写真:筆者撮影)

13日目を終えた大相撲5月場所。優勝争いもいよいよ佳境に入った。連日その存在感を放っているのは、なんといっても4場所ぶりに復帰した横綱・照ノ富士だ。やはり、これまでの数場所とは土俵の締まり方が違う。神聖な横綱土俵入りが連日披露され、結びの一番に横綱が登場するだけで、見る者の心を打つのである。

横綱が見せつけた力の差

1敗で首位を走る照ノ富士は、13日目に2敗で追う朝乃山と対戦。2年ぶりに幕内の土俵に立つ朝乃山には、連日横綱に負けないくらいの大きな声援が送られる。今場所は平幕下位にいるが、元大関の実力者が、横綱に思い切り向かっていった。

立ち合いで頭からぶつかっていった朝乃山。おっつけながら攻めて中に入り、いい形を作ったのもつかの間。横綱が右から思い切り振り回して小手投げ。大きな朝乃山が土俵に転がった。

場所が始まる頃には、朝乃山の復活優勝の可能性も大いにあると感じられたが、やはり横綱がそれを許さない。自力優勝の望みを絶った。これまで照ノ富士は朝乃山に6戦全勝中。しかし、今後朝乃山が照ノ富士の高い壁を破り、角界をさらに盛り上げてくれることに、筆者もファンも期待している。

大関を引き寄せた霧馬山と踏みとどまった貴景勝

大関取りの霧馬山は、入幕2場所目で初顔合わせの北青鵬と対戦。2メートル超の北青鵬を相手に、頭をつけていい形を保つも苦戦する。しかし、最後は下から相手を持ち上げて足をかけ、華麗な外掛けが決まった。実に1分25秒の死闘を制し、堂々の11勝目。10番勝てば大関昇進と言われたところ、さらに星を伸ばし、自らの手でその可能性を一気に引き寄せる形となった。

一方、カド番の大関・貴景勝は、今場所好調の明生と対戦。立ち合い当たった後左に動き、突っ込んできた相手をいなしてあっという間に送り出した。これでようやく8勝。ついにカド番を抜け出した。

これで来場所は霧馬山・貴景勝の2大関となるきれいな番付を見ることができそうだ。貴景勝は、今場所は無理せず途中休場する選択をとってもいいだろうと個人的には思う。とにもかくにもケガを治して、またさらに上の番付を狙っていく強い大関としてカムバックしてほしい。

また、関脇の若元春はこの日剣翔を破って9勝目を挙げた。11日目に見せた華麗なうっちゃりをはじめ、持ち前の器用さと足腰のよさで今場所も盛り上げてくれている。しかし、これまで何度二桁勝利を挙げても三賞に届かなかった残念な過去があるので、今場所こそは若元春に三賞を!という個人的な思いもここに記しておく。

照ノ富士、復活Vに着々と歩みを進める

「出場するからには優勝を」の言葉通り、自身8度目の優勝へ向かって着々と歩みを進める照ノ富士。今日勝つと、千秋楽を待たずに優勝が決まるのは、2021年11月場所で照ノ富士が自身初の全勝優勝をしたとき以来、約1年半ぶりとなる。

一方、霧馬山はこれまで照ノ富士に勝ったことがない。10回目となる今日の対戦で、横綱からの初白星をもぎ取ることができるか。どんな作戦で横綱に向かっていくのか、結びの一番の行方を楽しみに見守りたい。

<参考>優勝争いの行方

▽12勝1敗 照ノ富士

▽11勝2敗 霧馬山

▽10勝3敗 朝乃山

・照ノ富士が霧馬山に〇 → 照ノ富士の優勝決定

・照ノ富士が霧馬山に● → 照ノ富士、霧馬山が2敗で並んで千秋楽へ、朝乃山が〇なら望み残る

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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